鬼才・石井岳龍監督が語る「蜜のあわれ」二階堂ふみ&真木よう子のエロス
2016年2月16日 12:00
[映画.com ニュース]大正期に活躍した詩人・小説家の室生犀星が晩年に発表した小説を映画化した「蜜のあわれ」の石井岳龍監督(「五条霊戦記 GOJOE」「生きてるものはいないのか」)が、映画の2大ヒロインを演じた二階堂ふみと真木よう子の女優としての魅力を語った。
映画は、変幻自在の金魚の姿をもつ少女・赤子(二階堂)と老作家(大杉漣)の奇妙な関係を幻想的なタッチで描く。二階堂が自由奔放な赤子を開放的に表現した一方、真木は老作家の過去の女・ゆり子の幽霊をなまめかしく演じている。老作家をめぐり赤子とゆり子は時に火花を散らし、次第に共感を強めていく。このほど公開された場面写真は、赤子がゆり子のひざに顔をうずめ、ゆり子が赤子の肩と頭に手を添えており、両者のただならぬ関係を想起させるものとなっている。
このシーンについて、石井監督は「二階堂さんのあくまで金魚としての無邪気な好奇心と言動、人間的エロスに対する幼稚さゆえの戸惑いと、真木さんの幽霊でありながらも生前のエロスが徐々に蘇り灯(ひ)がついていく(という)複雑な戸惑いの、感情表現のぶつかり合いが見事で、鑑賞していると体の奥の方がゾクゾクぞわぞわしますね」と演技派女優たちの芳醇な色気に魅了されたと語る。
石井監督は、綾野剛と黒木華が共演した「シャニダールの花」(2012)でもエロティックな世界観を展開させているが、二階堂と真木の存在なくしては映画は成り立たなかったという。「二階堂さんは、恐るべき女優さんですね。会った瞬間から、この人は赤子だと思いました。今日本の女優さんの中でこの役をやるなら、二階堂さん以外にはありえないと思います。真木さんは、今回、幽霊だけど人間的な感情もあって1番難しい役柄だったと思うのですが、編集してみると感情が繋がっていてさすがでしたね。幽霊なのに、『心臓が止まるかと思った』とかおかしいセリフも、絶妙なお芝居になっておりました」。
中でも、原作ファンでもある二階堂は「役が憑依(ひょうい)するタイプで、リハの時からリミッターを越えた完成度で入り込んでいた」という。なお、二階堂とはテレビドラマ「問題のあるレストラン」でも共演している真木は「ゆり子がなぐさめるシーンは、少し男性的な感性が働いたと思います。それは純粋に、赤子に魅力を感じたからこその自然な流れでした」と共演シーンを振り返っている。