大林宣彦監督、生まれ変わっても「映画を撮りたい」
2016年2月13日 20:25
「野のなななのか」は、東日本大震災を受けて製作した2012年「この空の花 長岡花火物語」の姉妹編に当たり、人が生きることの意味を見つめ直す群像劇だ。タイトルの“なななのか”は、四十九日の意。古物商を営む男の死去で散り散りになっていた家族が葬式に集まり、それぞれの人生を見つめ直していく姿を描いた。昨年の第29回高崎映画祭では、最優秀作品賞・特別大賞に輝いている。
客席に手を振りながら登場した大林監督は、10周年を迎えた同映画祭でディレクターを務める本広監督に「おなかも出たけど、10周年おめでとう」とねぎらいの言葉をかけた。恐縮しきりの本広監督は、「最初のプレ映画祭でいらした時、監督が僕に『おまえがやれ』とおっしゃったんですよね」と懐かしんだ。
「青春デンデケデケデケ」(1992)を香川ロケで撮って以来の縁だという大林監督は、「去年アメリカへ行ったら、『青春デンデケデケデケ』を『ロッキング・ホース』というタイトルでリメイクしたいというお話があってねえ。まだお金が集まらないらしいけど」と明かし、ファンを驚かせた。今作は「去年からハワイ、ロサンゼルス、ニューヨークで上映させてもらいましてね。来月には、チェルノブイリの里であるベラルーシで上映されるんですよ」。
本広監督が「エンディングで『ドーン』という変な音が聞こえましたが?」と聞くと、大林監督は「今年の参院選ではどんな音がするかなあ。やがて平和になるといいですねえ」と意味深な返答。そして、「映画というのは1番の外交になります。芸術は対等に意見を交わせますし、平和になるための外交には映画が1番」と目を細めた。
近年は山田洋次監督、高畑勲監督らと交流を深めているという大林監督。「年寄り監督で仲良くしているんです。山田監督の『母と暮せば』も良かったねえ。山田監督には100歳まで撮ってもらわなければいけない」。戦争を題材にした塚本晋也監督作「野火」にも触れ、「これから起きるかもしれない戦争をイマジネーションで作り、反戦を訴えた作品ですね。塚本君は見るのがつらい映画をつくりました」と称えていた。
今作に関しては「こんなものは映画じゃないと言われることもあるけど、映画というものは100年経ってから評価されればいい」ときっぱり。そして、「黒澤さんや小津さんも思っていたはずだけど、僕は生まれ変わっても映画を撮りたいねえ」と話すと、客席から拍手喝さいを浴びていた。
さぬき映画祭2016は、21日まで開催。