「GAMBA」作曲家が明かす、“グローバルな作品”を支える映画音楽の重要性
2015年10月10日 08:00
[映画.com ニュース] 「STAND BY ME ドラえもん」の映像制作会社・白組が、製作期間10年、総製作費20億円をかけて生み出した3DCGアニメ映画「GAMBA ガンバと仲間たち」の劇中音楽を手がけた英作曲家ベンジャミン・ウォルフィッシュが初来日し、映画.comのインタビューに応じた。「それでも夜は明ける」に追加楽曲を提供した気鋭の作曲家が、“グローバルな作品”としての今作を、音楽の面から支えるため注力したことを明かした。
1972年に出版された斎藤惇夫氏の「冒険者たち ガンバと15ひきの仲間」が原作。街ネズミのガンバは、島ネズミ・忠太の故郷「夢見が島」を救うべく、白イタチのノロイに立ち向かうことを決意する。ほかのネズミたちがノロイの恐ろしさに尻込みするなか、ガンバの勇気に感化された仲間たちは船に乗り、夢見が島へ出発する。
ウォルフィッシュは楽曲制作にあたり、エグゼクティブプロデューサーであるアビ・アラドらとともに、約4カ月にわたってクリエイティブの議論を重ねた。強き者に挑むガンバの勇気にこそ物語の核があり、作曲のターニングポイントになったと語る。「ガンバがほかの仲間たちに影響することが、作品自体のテーマである『友情や希望で強くなる』ことにつながっていく。それ自体が、子ども、大人、どこの世界でも通用すると考えました。それが作曲にものすごく影響を与えています」
「友情」「希望」という作品テーマを表現する。方向性が定まり、メッセージを体現するキャラクターたちの特徴を、楽曲に落とし込んでいった。「ガンバは大胆さと弱さをあわせ持ち、友だちに助けられながら頑張るキャラです。一方で、ノロイのようなすごくダークなキャラもいます。そのなかでオーケストラを活用して、作品のいろいろなトーンを表現できないかと考えました」。結果、バイオリンなどのストリングを主役に据えた壮大な楽曲が出来上がり、「ノロイのダークさは低音の金管や木管を使ったり、一方でストリングを使って希望を表現していました」と詳述した。
また今作は日本で製作されたアニメ映画だが、日本伝統の楽器が使用されるシーンは一部に限られている。そこにはどんな狙いがあったのだろうか。ウォルフィッシュは、アラドとの議論を振り返り「今回は日本的な手段にはのっとらないと判断しました」といい、「日本的な楽器を使うアプローチもしてみましたが、映像が日本で作られたということもあり、日本と日本が重複してしまう部分もありました。音楽を通じて、より世界に通用するものにしようという考えで、オーケストラで演奏したのです」と明かした。和のテイストをあえて抑え、普遍的に親しまれるオーケストラを用いることで、世界に誇るアニメーションと作品テーマを音楽の面から支えようと試みたのだ。
アニメの作曲は初めてだったそうだが、「実写とは全く違い、フレームごとに細かく曲をつけていきました。それはディズニーなどでも古くから見られる、曲と映像(の動き)がぴったり合っている手法と同様のことができたと思っています」と胸を張る。今作が観客にどのように受け止められるか、その動向に注目したい。
最後に、「最も影響を受けた映画音楽」を聞くと、スティーブン・スピルバーグ監督と作曲家ジョン・ウィリアムズがタッグを組んだ「E.T.」と答えた。ウィリアムズは「ロング・グッドバイ」「スター・ウォーズ」「ジョーズ」などの傑作楽曲を生み出したことで高名なだけに、「映画音楽の巨匠であるとともに、1970年代から1980年代にかけて、まさに映画におけるオーケストラの重要性に光を当てた」と最敬礼だ。「映画そのもののスケールを、オーケストラによって、より大きなものにしました。ウィリアムズとスピルバーグが組んだ作品には、映画史においても最も素晴らしいと言えるようなものが非常に多いと思います」と熱弁した。
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