ロング・グッドバイ

ALLTIME BEST

劇場公開日:

解説

私立探偵フィリップ・マーロウはメキシコに行くという友人ハリーを車で送った翌日、警察に連行される。ハリーの妻が殺害されたのだ。しかしメキシコでハリーが自殺したことが伝えられ、マーロウは釈放される。その後、マーロウはアイリーンという女性から作家である夫を捜してほしいと依頼されるが……。レイモンド・チャンドラーの推理小説を、鬼才ロバート・アルトマンが映画化。監督アルトマンとエリオット・グールドのコンビが独特のマーロウ像を生み出している。

1973年製作/111分/アメリカ
原題:The Long Goodbye
配給:United Artists

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オソレゾーン

映画レビュー

0.5チャンドラー原作でなければ良かったのに。

2022年9月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

寝られる

今年出た原作の新訳、創元推理文庫の「長い別れ」(田口俊樹訳)を読んだ流れで、早川書房の村上春樹訳「ロング・グッドバイ」を久しぶりに再読し、エリオット・グールドのマーロウなんてあり得ないと思って今まで避けていたアルトマンの「ロング・グッドバイ」を観た。
マーロウ物ではなく、普通の私立探偵主人公のハードボイルド物としては、途中若干ダレるがまあ変わった映画で、主人公の住んでいる不思議なマンション(アパート)とか、意味のないヌーディスト集団の住人とか、70年代ヒッピー文化の表現が今となっては古臭いけど時代の色を映し出すユニークな映画として星2.5から星3つはあげてもいいだろう。
しかし、レイモンド・チャンドラー原作の映画化としては最低だとおもう。
これはフィリップ・マーロウのイメージや世界観を完全に損なっているし、テリー・レノックスの扱いなど、原作をぶち壊しているし、ラストなんか、あり得ない。
質が高いのは、名カメラマン、ヴィルモス・ジグモンドの映像くらいか。
リイ・ブラケットって、スターウォーズ・シリーズの最高傑作、「帝国の逆襲」の脚本家として評価していたのだが、実はローレンス・カスダンがほとんど書き直したという説もあるし、このあと、ハワード・ホークス監督のチャンドラー原作「三つ数えろ」(The Big Sleep)を再見しても、後半の甘ったるい脚色が今一つだったので、本作のひどい脚本(脚色)を見ると、大して評価できないとがっかりした。
まあ、オリジナル映画だったら面白さもあるので、前述の評価を与えてもいいかもだが、チャンドラーの“The Long Goodbye”の唯一の映画化作品がこれかと思うと、墓場のチャンドラーも激怒して「大いなる眠り」につけないと思うので、あくまで原作の映画化という評価で星0.5。レイモンド・チャンドラー、フィリップ・マーロウの熱烈なファンは見るべからず。チャンドラーにまったく思い入れのない人には見るなとは言わない。ただ、原作未読であれば、絶対に原作から先に読むべし、くれぐれも原作読まずに見てはいけない。
エリオット・グールドはやはり全くマーロウには向いていない。「三つ数えろ」のボギーは原作者が言うようにやはり身長が厳しい。カメラが終始マーロウの目線で展開するという斬新な手法で映画界を沸かせたロバート・モンゴメリーは意外とぴったり(笑い声がいまいちだがw)。でも、やっぱりマーロウ役者と言えば、年齢は行き過ぎてはいるものの身長185cmの堂々たる押し出しで、「大いなる眠り」(イギリスを舞台に変えてしまったのが惜しいが)もさることながら、チャンドラー原作の最高傑作「さらば愛しい女よ」で、シャーロット・ランプリングと共に絶妙なチャンドラー・ワールドを醸し出したロバート・ミッチャムだろう。あるいは、オリジナル作品だが、「チャイナタウン」のほうが、アルトマン作品よりよっぽどチャンドラー作品と言えよう。
ほんと、チャンドラー原作の映画化としては酷い映画だった😡

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naochan926

3.5遊び心と実験精神でハードボイルドならぬスクランブルド・エッグ映画に

2022年1月16日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1)ハードボイルド映画とは
ロス・マクドナルド原作の「動く標的」には、ポール・ニューマン演ずる、情けない生活を送っているのにやたら格好いい探偵リュー・アーチャーが登場する。
彼は女にもてまくり、犯罪者たちの襲撃も見事にかいくぐり、最後に捕まえた犯人については、「奴がニーチェの深淵に魅入られただって? バカを言うな。金に魅入られただけだ」と断罪するのが痛快だった。
ハードボイルド映画はかようなものかと思って、チャンドラー原作の本作を見ると、違和感だらけでびっくりさせられる。ハードボイルド・ファンならきっと怒りだすだろう。

2)ソフト・ボイルドどころかスクランブルド・エッグ
冒頭、猫に眠りから起こされ、キャットフードを買いに行く主人公の姿が、とにかく薄汚い。おそらくは酔った挙句にYシャツ、ズボン、靴を履いたままベッドに倒れこんでいたのだろう。よれよれの恰好で、煙草をふかしながら譫言のように隣人と会話する姿には、格好良さのカケラもない。
バーに行ってもチェーンスモーカーのまま、さらに依頼人の美形人妻と会っても見苦しく煙を吐き散らし続ける。完全にニコチン中毒だ。

主人公以外の登場人物も変わり者だらけ。美形人妻の夫の作家は、いさかいのあった背の低い医師が訪ねてくると、「ミニーマウスだな」と公然と侮辱する。マーロウにカネを出せと脅すチンピラのリーダーは、愛人に熱愛の言葉を囁いた直後、顔面をビンで殴りつけてしまうわ、隠し事のないようにしようと言って手下の連中といっせいに服を脱ぎだすわ…とにかくまともな人間が出てこないのである。

主人公マーロウがメキシコの寂れた街を訪ねるところは、本作を象徴するシーンだろう。バスを降りると埃りっぽい街路は犬だらけで、吠えまくる犬の間をカメラがパンしていくと、奥には交尾しているオス犬、メス犬がいるではないか。カメラは迷わずズームして交尾を捉え、それに気づいた2頭は離れてしまう。
これは金銭欲と性欲に塗れたセレブを象徴したシーンなのか? 何の意味もないシーンではないのか?
…いや、やはり意味はあるのだ。格好いいハードボイルド映画を、くだらない遊び心のシーンでぶち壊すという意味が。
それに加えてこの映画のほとんどの部分が、既成の探偵映画をぶち壊しにしており、もはやハードボイルドどころかソフトボイルド、いやスクランブルド・エッグといったほうがいい。

3)アルトマンの方法
アルトマンは68年の監督作「宇宙大征服」で、「俳優に同時に会話をさせた」という理由から解雇されたという。しかし、70年の「マッシュ」でも断固として同じ手法を使って、ベトナム戦争をオチャラケに風刺するのだから、何をかいわんやw さすがに継続中の戦争を茶化すのはまずいと、設定が朝鮮戦争に変更されたが、それが記録的大ヒットとなり、映画史に残る傑作となるのだから、単なる冒険主義だけではないことがわかる。
おそらくアルトマンには、単に人と違うこと、既存の映画にないことをやるという実験精神と同時に、その効果を計算できる批評精神がある。だから、あれだけ滅茶苦茶なことをしつつ、多くの傑作を残すことができたのだろう。
本作でも、何人もの登場人物が同時に話をして字幕がギブアップするシーンが再三ある。さらに繰り返される長回し、窓ガラスに映る屋外のマーロウと、ガラス越しの屋内の依頼人夫婦の姿を同時に映すなど、技巧的にいろいろ試みがある。最後に主人公が並木の奥で理由もなく通行人とダンスを始めたり、遊び心もたっぷり。そして何より恰好悪い、ズレた「ハードボイルド探偵」のイメージが既成映画のパターンをぶち壊してしまう。

4)評価
本作は薄汚い探偵のつまらない生活をたどるところまでは退屈だが、スクリーンで徐々に変なことが起き始めると、「これは、最後にどうやって回収するんだろう」という興味から画面に惹きつけられてしまう。そして、やがて従来の探偵映画の型を破って、このジャンルに新たな探偵像を作り上げたことに気づかされるのである。
しかし、本作では型を破るのが精一杯というところで、さすがに「マッシュ」のような突き抜けた面白さまでは感じられなかった。

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徒然草枕

4.5今は撮れないこの空気

2021年7月28日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

自由な空気感とキャラクター。その時代だから作れた作品ってのはあるな。
今、同じような事をやっても決して撮れないだろうな。

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ドラゴンミズホ

4.0やっとDVDだけど観れた。

2020年8月6日
iPhoneアプリから投稿

期待値高めで観たが大変満足。
現代の探偵モノの演技スタイルを作ったのこの作品じゃないか?と思える、世間的にもっと評価されても良いと思う名作。

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KoN
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