カンヌ映画祭パルムドールはジャック・オーディアール監督作!日本勢は黒沢清がある視点部門で監督賞
2015年5月25日 12:20

[映画.com ニュース]第68回カンヌ映画祭の授賞式が5月24日(現地時間)に開催され、スリランカからフランスに渡った不法滞在者を主人公にしたジャック・オーディアールの「Dheepan」が、パルムドールに輝いた。是枝裕和の「海街 Diary」は、惜しくも受賞に至らなかった。日本勢のなかでは、黒沢清の「岸辺の旅」が、ある視点部門の監督賞を受賞。黒沢は驚きをあらわにするとともに、審査員のイザベラ・ロッセリーニから、「これまでいつも亡くなった母(イングリッド・バーグマン)がそばにいるように感じていたが、この映画でも同じようなことが描かれていたので感銘を受けた」と私的な感想をもらったことを明かした。
コンペティションで主演男優賞に輝いたのは、失業問題を取り上げた「The Measure of a Man」に主演したフランスの重鎮バンサン・ランドン、主演女優賞には自作「Standing Tall」が開幕を飾った一方で、マイウェン監督作「Mon roi」に主演したエマニュエル・ベルコと、ルーニー・マーラ(「キャロル」)が分け合い、フランス組が目立つ結果に。一方、イタリア勢は批評家から称賛されたパオロ・ソレンティーノ(「Youth」)やナンニ・モレッティ(「My Mother」)があったものの、無冠に終わった。
今年は例年に比べ、若手がコンペティションに名を連ねたが、なかでも初長編となる「Son of Saul」を出品したハンガリーのネメシュ・ラズロがグランプリに輝いた。本作は1944年、アウシュビッツでナチに使えるユダヤ人を主人公にした物語。主人公に密着した大胆かつ簡潔なカメラワーク、力強い話法が評価された。
脚本賞に輝いた「Chronic」のミシェル・フランコと、審査員賞を受賞した「The Lobster」のヨルゴス・ランティモスも気鋭の若手だ。フランコは前作が3年前にある視点部門で最高賞を受賞。そのときの出会いがもとでティム・ロスと企画を発展させ、本作への出演につながったという。病人を介護する孤独な主人公を描き、強い印象を残した。近未来を舞台にした「The Lobster」も、そのユニークなストーリーテリングが評価された形だ。
一方ベテランでは、ホウ・シャオシェンの「黒衣の刺客」が、その芸術性を評価されて監督賞を授与された。13年前に誘拐された後、刺客として育てられたヒロイン(スー・チー)が、かつての許婚者でもある暴君(チャン・チェン)に立ち向かう。ヒロインの窮地を救う役どころで、妻夫木聡も出演。カンフー映画かと思いきや、実際のアクション・シーンは少なめで、この監督らしいアートフィルムになっている。「フラワーズ・オブ・シャンハイ」を彷佛させる、目の覚めるような映像美が秀逸だ。
今年の映画祭でスキャンダルな話題を振りまいたのは、ミッドナイト枠で上映されたギャスパー・ノエの3Dエロティックムービー「Love」。ポルノのような内容を3Dで見せるという前評判に、上映にはプレスやチケットを入手したインダストリーの人々が殺到し、会場に入りきらない事態となった。もっとも、内容的には中途半端に「愛」のテーマを取り入れたストーリーや、期待したほど3D効果のなかったことなどから、評価はいまひとつだった。
もう一本カンヌにショックをもたらしたのは、同じくミッドナイト枠に上映されたエイミー・ワインハウスのドキュメンタリー「Amy」だ。有名になる以前の時代や、かなりプライベートな映像が盛りだくさんなため、その出どころや作り手のモラルをめぐり議論になった。ドキュメンタリーとしては見どころ満載であり、彼女の生き方を表した、ゴシップ的なだけの作品ではない仕上がりになっている。
今年の受賞結果を見る限り、「Son of Saul」以外は下馬評とあまりそぐわい結果となった。叙情的な作品より、ドライな作風のものが評価されたのは、審査委員長を務めたコーエン兄弟の好みだろうか。いずれにしろ、世代交代を感じさせものだった。(佐藤久理子)
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