「海炭市叙景」に続け！綾野剛、函館市民発信映画第2弾「そこのみにて光輝く」に主演

「そこのみにて光輝く」は、何度も芥川賞候補に名を連ねながら賞に恵まれず、41歳で自ら命を絶った佐藤さんが1989年に発表した唯一の長編小説。夏の函館を舞台に、愛を見失った男と愛をあきらめた女との出会い、底辺で生きる家族を慈しむような眼差（まなざ）しで描く、第2回三島由紀夫賞候補になった佐藤さんの最高傑作だ。刊行当時から多くの監督が映画化を熱望したが実現にいたらなかった“幻の企画”が、24年の歳月を経て映画化されることになった。

佐藤さんの原作では、映画化を望む多くの函館市民による大規模な募金活動が奏功し、「海炭市叙景」が2010年に全国公開された。熊切和嘉監督の代表作となった同作は、第23回東京国際映画祭コンペティション部門に選出されたほか、フィリピンで行われた第12回シネマニラ国際映画祭コンペティション部門でグランプリと最優秀俳優賞の2冠に輝いた。

今作でメガホンをとる呉監督は、「オカンの嫁入り」で新藤兼人賞を受賞するなど、将来を嘱望されている若手実力派。くしくも、熊切監督が通った大阪芸術大学の後輩にあたる。撮影を6月26日に控え、「骨太のキャスト、凄腕のスタッフとともに、愛すべき原作を映画にするため、函館にやってきました。いよいよだと思うと緊張しちゃいますが、がむしゃらに、やりたいことをやりきろうと思います」と気合をみなぎらせている。

「海炭市叙景」で製作実行委員長を務め、今作では企画・製作を兼ねる菅原和博氏は「素晴らしい監督、脚本、キャストがそろい、函館の短くも美しい夏を描きたいと思っています。『海炭市叙景』の対極にある小説の映画化です。多くの皆様に共感してもらえる作品を目指したい」とコメントを寄せている。

ストーリーは、仕事を辞めブラブラと過ごしていた佐藤達夫は、粗暴だが人懐こい青年・大城拓児とパチンコ屋で知り合う。ついて来るよう案内された先は、取り残されたように存在する一軒のバラックで、寝たきりの父、その世話に追われる母、姉の千夏がいた。世間からさげすまれたその場所で、一点のみ「光輝く」千夏に達夫はひかれるようになる。

脚本は、「婚前特急」「さよなら渓谷」の高田亮。撮影は、「海炭市叙景」「桐島、部活やめるってよ」など話題作に確かな息吹を注ぎ込んできた、若き天才・近藤龍人が担当する。東京テアトルと函館シネマアイリスが共同配給する「そこのみにて光輝く」は、6月26日にクランクイン。14年春にテアトル新宿ほか全国で公開。