海炭市叙景

劇場公開日:

海炭市叙景

解説

90年に自ら命を絶った不遇の作家・佐藤泰志の連作小説を、「鬼畜大宴会」の熊切和嘉監督が映画化。谷村美月、加瀬亮、小林薫ら演技派俳優陣が結集する。佐藤の故郷である函館をモデルにした“海炭市”が舞台。造船所からリストラされた貧しい兄妹、立ち退きを拒否する老婆、妻の裏切りに傷つくプラネタリウムで働く中年男、事業と家庭に問題を抱える若社長、息子に避けられ続ける路面電車の運転士など、地方都市の憂うつと再生を繊細なタッチで描きだす。

2010年製作/152分/日本
配給:スローラーナー
劇場公開日:2010年12月18日

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映画評論

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(C)2010佐藤泰志/「海炭市叙景」製作委員会

映画レビュー

4.0ご当地映画ではない、2010年を代表する意欲作

2020年8月10日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

夭折の作家・佐藤泰志の原作を映画化した、記念すべき第1作。
この後、「そこのみにて光輝く」「オーバー・フェンス」「きみの鳥はうたえる」とコンスタントに映画化され、それぞれ高い評価を得ているわけだが、その原点といって間違いない。
製作された2009年当時、ここまで地方、市井の人々の疲弊をリアルに描き切った作品はなかった。それゆえ、ご当地映画なるジャンルで括ってはいけない2010年を代表する傑作である。
今作で新境地を開拓した熊切和嘉監督はその4年後、「私の男」で更に大きく羽ばたく事になる。
全ての作品に関わる、シネマアイリスの菅原和博氏が次にどんな一手を放ってくるのか楽しみでならない。

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大塚史貴

4.0【日々、屈託を抱えつつ函館で懸命に生きる人たちの姿を、リアリズム溢れる映像で描き出した作品。故、佐藤泰志の想いが伝わって来るが如き作品である。微かなる希望、人の善性が伺える作品でもある。】

2023年2月27日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

■海炭市にある造船所の一部が閉鎖され、大規模なリストラが行われた。
 颯太(竹原ピストル)は職を失い、妹の帆波(谷村美月)と二人で年越し蕎麦を食べ、大晦日の夜を迎えた。
 年が明けて、颯太と帆波は初日の出を見るために函館山に登ろうと思い立ち、なけなしの小銭を集めて出掛ける。そして、二人は水平線から上がる初日の出を見る。

◆感想

・ご存じの通り、今作の原作となった短編集を書いた函館市、出身の佐藤泰志は芥川賞に5度もノミネートされながら受賞に至らず、僅か41歳で自死した方である。
だが、41歳で芥川賞に五度もノミネートされたという事は、佐藤氏の確かなる文芸の力量を示している。

・今作は、そんな佐藤氏の想いを汲んだ函館市民が発起人として製作された作品であり、今作後、「そこのみにて光輝く」「オーバー・フェンス」で、佐藤氏の世界観は世に認められたのである。
ー 私は、恥ずかしながら佐藤泰志の存在すら知らず、劇場で「オーバー・フェンス」を鑑賞し、ガツンとヤラレタ者である。-

・今作は、佐藤氏の短編を今や邦画を代表する熊切監督が絶妙に繋いで、函館に住む社会的弱者の方々の視点でその生き様を描いている。

・どのパートも切ないが、幾つかのパートでは、微かなる未来が描かれる。

<今作を観ていると、志半ばで命を絶った佐藤泰志の無念が伝わって来る。だが、この方の作品は読めば分かるのであるが、常に絶望の先に僅かなる未来への想いや光が描かれているのである。
 故に今作は、観ていてキツイシーンが多いが、魅力的な作品なのである。
 唯一、違和感を抱いた点は、ガス屋の若社長(加瀬亮)が、自らの屈託を妻に対して暴力を振るうシーンである。
 男であれば、女性に手を挙げるのは如何なる理由があれども言語同断だと思っているので、あのシーンは必要なのかもしれないが・・。
 ラスト、立ち退きを市から催促されながらも、抗う老婦人が愛猫の毛を優しく撫でるシーンは秀逸であった。>

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NOBU

4.5【「わたしたちは、あの場所に戻るのだ」/温もりを求める冷たい肌感】

2021年10月14日
iPhoneアプリから投稿

函館三部作と呼ばれる作品の一つ「海炭市叙景」で感じたのは、どこか冷たい肌感だった。

原作の「海炭市叙景」は、未完の佐藤泰志の遺作でもある。

海炭市という北の港湾都市を舞台にしているからというだけではない。人々が寄り添う気持ちを持ちながらも、どこかに不安やいたたまれなさを抱え、傷つけ、ぶつかり合い、それでも生きていこうとする姿が心を締め付ける。

日本がバブル景気で、都市部を中心に再開発が進んでいたころ、実は産業構造も転換期を迎え、多くの地方都市が衰退する予感を抱えていた。函館も同様だったのだ。

砂州に広がった海炭市は函館のことだ。

この1980年代に、この物語を構想し執筆していた佐藤泰志さんの市井を観察する目に改めて驚かされると同時に、今僕達に足りないものは何かを考えさせられる。

傷付け、ぶつかり合いながらも、他方では、寄り添う気持ちを持ち、そして生きていく。

コロナ禍の下の、ソーシャル・ディスタンスや、リモート・ワークのなかでも、人は人であるために必要なことはあるのではないのかと考えさせられる。

レビュータイトルの「わたしたちは、あの場所に戻るのだ」は、映画のキャッチコピーだ。

あの場所とは、元旦の初日の出を望む山頂のことだ。

赤い初日が照らす山頂で祈り、そして、どこかで温もりや希望を求めながらも、そこには、まだ、冷たい肌やいたたまれない心があるのだ。

だが、人は祈り続けるのだ。

ケーブルカーで下山する妹を見つめていた井川が、自ら命を絶ったのではないことを願うばかりだ。

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ワンコ

3.0もっと太陽が見たい…

2020年7月26日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

う~ん、暗かった…。
だって、太陽の光のシーン、あんまりないんだもん。
やっぱり、地域性なのかなぁ…。
函館って、こんなに暗いの?って、違うか―、この街の一部だよね。
街というより人かな。
オムニバス的だというのを知らずに見たので、あれ?
さっきのはどうなったの?って思っていたら、既に違う人たちの生活だった。
最終的に、路面電車で繋がった感だったけど、ちょっと強引かなぁ…。
函館の明るい部分を感じに行きたくなりました。

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hkr21
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