役所広司、映画「わが母」で樹木希林&宮崎あおいと“家族”に
2011年2月12日 06:00
[映画.com ニュース] 日本を代表する演技派俳優の役所広司、樹木希林、宮崎あおいが、原田眞人監督の最新作「わが母」で“家族”として共演を果たすことがわかった。国民的作家・井上靖が45年前に執筆した「わが母の記~花の下・月の光・雪の面~」3部作(講談社文芸文庫所蔵)をもとに、愛し続けることの素晴らしさ、生きることの喜びを描く、10年にわたる家族の物語だ。
2011年は、原作者・井上の没後20年となる節目の年。「闘牛」「氷壁」「風林火山」など代表作があるなかで、井上は「しろばんば」「北の海」などで自らの分身ともいえる伊上洪作を主人公に据えた自伝的作品を発表してきた。今作でも、幼少期に母・八重に育てられなかったことに葛藤(かっとう)を抱き、距離をとって暮らしてきた小説家の伊上が物語の軸を担う。
役所扮する伊上は、妻や3人の娘、妹たちに支えられながら母と向き合ううちに、記憶を徐々に失わせながらも息子への思いを必死に確かめようとする母の胸中を知るようになる。「突入せよ!あさま山荘事件」(02)以来、約9年ぶりに原田監督とタッグを組む役所は「『老い』はどのように母を変え、それを見つめる家族がどのように変わっていくのか。心温まる家族のきずなを、心を込めて演じたいと思います」とコメントを寄せた。
母・八重役の樹木と、娘の琴子役の宮崎は、ともに原田組初参加。これまでに数多くの母であり祖母を演じてきた樹木は、「まさか私のような、どこにでもある顔が映像の場にいるなど、50年前は思いもしませんでした。ですから常にチョイと出て引っ込むチョイ演女優を目指してきました。さてさて原田監督の作品のなかにどう住めるのか。夜逃げする用意はしているんですが」と独特の言い回しで意気込む。一方の宮崎も、「なんだかとても楽しいことになりそうな気がしています」と話し、撮入した。
静岡・沼津出身の原田監督にとっては、「クライマーズ・ハイ」以来約3年ぶりのメガホン。井上作品を敬愛し、10年間にわたり今企画を温めてきた。50代に入ってから原作を読んだそうで、「母校の先輩である文豪、井上靖先生の作品世界に心のふるさと“まほろば”を感じるようになった」という。だからこそ、「小津やベルイマンが描く家族愛の映画のように、何10年を経ても愛される“まほろば”映画を、伊豆から世界に発信できるようスタッフ・キャストが一丸となって頑張りたい」と意欲を新たにしている。
映画では、孫娘が父の育ての母と実母との複雑な関係を、次第に知ることになるオリジナルの要素も盛り込んだ。社会派監督として広く認知されている原田監督にとって、初めて手がける親子愛の感動作。時代に先駆けて、「老い」と「介護」の問題に焦点を当てた今作を、原田監督がどのように仕上げるのかに大きな注目が集まる。撮影は、静岡・伊豆や湯ヶ島、沼津のほか、東京・世田谷の井上靖邸などで行われており、3月中旬にクランクアップ予定。
「わが母」は、2012年に全国で公開。
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