大いなる不在

劇場公開日:

大いなる不在

解説

長編デビュー作「コンプリシティ 優しい共犯」がトロント、ベルリン、釜山などの国際映画祭に招待され高い評価を得た近浦啓監督の第2作。森山未來が主演を務め、藤竜也と親子役で初共演を果たしたヒューマンサスペンス。

幼い頃に自分と母を捨てた父が事件を起こして警察に捕まった。知らせを受けて久しぶりに父である陽二のもとを訪ねることになった卓(たかし)は、認知症で別人のように変わり果てた父と再会する。さらに、卓にとっては義母になる、父の再婚相手である直美が行方をくらましていた。一体、彼らに何があったのか。卓は、父と義母の生活を調べ始める。父の家に残されていた大量の手紙やメモ、そして父を知る人たちから聞く話を通して、卓は次第に父の人生をたどっていくことになるが……。

主人公・卓を森山未來が演じ、父・陽二役は「コンプリシティ 優しい共犯」でも近浦監督とタッグを組んだ藤竜也が務めた。卓の理解者となる妻の夕希役は真木よう子、行方知れずの義母・直美役は原日出子。第71回サン・セバスチャン国際映画祭のコンペティション部門で藤竜也がシルバー・シェル賞(最優秀俳優賞)を受賞。第67回サンフランシスコ国際映画祭では最高賞のグローバル・ビジョンアワードを受賞。

2023年製作/133分/G/日本
配給:ギャガ
劇場公開日:2024年7月12日

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

監督
脚本
近浦啓
熊野桂太
プロデューサー
近浦啓
堀池みほ
ラインプロデューサー
越智喜明
監督補
熊野桂太
撮影監督
山崎裕
録音
森英司
弥栄裕樹
美術
中村三五
衣装
田口慧
ヘアメイク
南辻光宏
リレコーディングミキサー
野村みき
サウンドエディター
大保達哉
編集
近浦啓
音楽
糸山晃司
エンディングテーマ
佐野元春&THE COYOTE BAND
助監督
石井将
制作主任
齋藤鋼児
スクリプター
保坂栞
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映画レビュー

4.0病に揺さぶられ変容する父と息子がそれぞれに見出したもの

2024年7月13日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
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ニコ

4.0体の医療の進歩に対して、脳の退化に対する医療技術が追いついていない

2024年11月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
ネタバレ! クリックして本文を読む
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はりー・ばーんず

4.0在ってほしい

2024年10月4日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

30年近く離れていた父親が認知症を患い、一人息子の卓が戸惑いながらも対峙していくストーリー。

病に優劣はなく、どんな病気も大変なのだが、認知症は改めて厳しくつらい病だと思ってしまった。
大学教授だろうが主婦だろうが関係ない。
思いもよらない言動や行動で、周りの人の心も壊れてしまうから。自分の好きだった人がいなくなってしまうから。

その人によって症状も家庭の事情も異なるわけだが、今作の人間関係はやや複雑で、どの立場にいてもつらい。父の再婚相手の息子との対話シーンで、特にそれを感じた。

大人になった卓を「たっくん」と呼ぶ父。寄り添ってくれた再婚妻の心情。色々考えると涙が出てしまった。
藤竜也の演技が流石でリアルだった。

*****
森山未来が右に位置する画が多かったような。部屋で電話してるところ、桜をバックにしたところ、車窓から景色を眺めてる場面など。印象に残った。
今作の真木よう子が一瞬、宮澤エマに似てると思ってしまった。

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共感した! 13件)
ふわり

4.5「不在とはなにか」

2024年9月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 俳優の卓は30年近く離れていた父のことで警察から連絡を受ける。卓と妻夕希は帰郷し父が保護された介護施設を訪れ、父と会うが完全にボケていた。スーツを着てネクタイもして身なりはきちんとしているが、話の内容は突飛である。
 その前に帰郷し父と再婚した直美と三人で話をしたとき、父は元大学教授らしくごたくをならべて主張を言い放つ。卓は変わらない父を見てある面安心する。その父が完全にボケてしまった。卓は施設を訪れたさい、鞄から一冊のノートを見つけ実家に足を運び父の本質を模索する過程で現在と過去が映像化される。
 卓を見ていると言葉が少ない。話す間が十分保たれており、時間がゆっくり流れ、風の自然な音が響いている。なにか卓がノートをめくりゆっくりと父の過去を追い求めて、ノートから父の実在を理解していくことが、卓が抱く父への「大いなる不在」だ。
近浦啓監督が見る者対して「大いなる不在」とは何かこの親子をとおして思考を促している。卓が父に会わなかった時間的不在か、かくしゃくとしていた父がボケた精神的不在か、父が愛していた直美と結婚しないで別な女性と結婚した精神と時間的不在か、直美が家を出た時、愛しい人の不在と自分自身の知性の不在か、卓が演技をしていて他の人になりきり自分が不在になっているのか、様々な思考を促す。
筆者の「不在」とは何か。真っ先にうかぶ言葉は「後悔」だ。筆者がやらなかったこと、決めなかったことに対する後悔。しかし、もしやっていて、決めていたら今の筆者は「不在」だ。
「不在」の反義語は「いる、ある」だ。卓には愛する妻夕希がいるし、演技への情熱はある。すべて現在進行形だ。反して父は、「いた、あった」のすべて過去形であるから今「不在」だ。「不在」と「いる、ある」はある意味表裏一体なのだ。現在の「いる、ある」が、いつ「いた、あった」の不在になるのか予測不能だ。それゆえ卓は施設の人にできる限り父に会いに来ると言う。ボケた父の「いる、ある」を目に焼き付けるために、父の「いる、ある」を想いだすために。

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かな