プリシラ

劇場公開日:

解説

「ロスト・イン・トランスレーション」「マリー・アントワネット」のソフィア・コッポラ監督が、エルビス・プレスリーの元妻プリシラが1985年に発表した回想録「私のエルヴィス」をもとに、世界的スターと恋に落ちた少女の波乱の日々を描いたドラマ。

14歳の少女プリシラはスーパースターのエルビス・プレスリーと出会い、恋に落ちる。やがて彼女は両親の反対を押し切って、大邸宅でエルビスと一緒に暮らし始める。これまで経験したことのない華やかで魅惑的な世界に足を踏み入れたプリシラにとって、彼のそばでともに過ごし彼の色に染まることが全てだったが……。

「パシフィック・リム アップライジング」のケイリー・スピーニーが主人公プリシラの心の変遷と外見の変化を繊細に演じ、2023年・第80回ベネチア国際映画祭で最優秀女優賞を受賞。「Saltburn」「キスから始まるものがたり」のジェイコブ・エロルディがエルビスを演じた。フランス出身のロックバンド「フェニックス」が音楽を手がけ、美しく精巧な美術とともに1960~70年代の空気を再現。

2023年製作/113分/PG12/アメリカ・イタリア合作
原題または英題:Priscilla
配給:ギャガ
劇場公開日:2024年4月12日

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第81回 ゴールデングローブ賞(2024年)

ノミネート

最優秀主演女優賞(ドラマ) ケイリー・スピーニー

第80回 ベネチア国際映画祭(2023年)

受賞

ボルピ杯(最優秀女優賞) ケイリー・スピーニー

出品

コンペティション部門 ソフィア・コッポラ
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映画レビュー

3.5エルヴィス伝記映画を補完する物語、ケイリーのかわいさで加点あり

2024年4月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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ニコ

3.5ソフィア・コッポラにしか描き得なかった世界

2024年4月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

これまで歴史の影に隠れがちだったプリシラの目から世界を見つめた本作は、ストーリー展開を楽しむよりも、彼女が身を浸す静謐に作り込まれた世界(エルヴィスの大邸宅)やそこで移ろいゆく心象模様を味わうことに醍醐味がある。序盤、おとぎばなしの扉を開くようにエルヴィス・プレスリーと出会い、恋に落ちる二人。当時のプリシラは14歳の少女でその後どんどん歳を重ねていくわけだが、一方のエルヴィスはもっと年上でありながら、実生活では傷ついて怯える少年のような繊細さや脆さをあらわにすることも少なくない。彼らの精神状態のベクトルが、変わらぬ愛を持ちつつ、やがてどうしようもなく解離していく様は、哀しくも興味深い限りだ。かくも淡い光に満ちた特殊な世界、おぼろげな日々に終わりが来ることは、歴史を紐解くまでもなく、過去のソフィア・コッポラ作品の主人公らを見れば明らか。そこに連なるプリシラの瞳、胸に抱いた決意を噛みしめたい。

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牛津厚信

4.0少女目線で描くスーパースターの謎めいた肖像

2024年4月13日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

萌える

第二次大戦当時の旧・西ドイツのアメリカ軍基地で徴兵制度により勤務していたエルヴィス・プレスリーが、母親の再婚相手が米軍将校だったために同じ米軍基地で暮らしていた当時まだ14歳だった少女、プリシラを見染める。基地でのエルヴィスはやはり特別扱いで、見たこともない世界に足を踏み入れたプリシラにとってめまいがするような日々が始まる。

監督のソフィア・コッポラはやがて2人がメンフィスにあるエルヴィスの豪邸で暮らし始め、結婚とその後までのプロセスを徹底してプリシラ目線で描いていく。ヘアメイクまで指示する割りに、不思議と禁欲的なエルヴィスの謎めいた肖像をプリシラ目線で切り取ることで、実体が掴みづらいスーパースターの空気感、みたいなものを上手に掬い取っていく。エルヴィスの顔のアップがなかなか出てこないのも演出の狙いだろう。

同時にコッポラは、プリシラを主役に据えることで凡庸な実録偉人伝に傾くことなく、ヒロイン映画としての魅力と、60'sカルチャー満載のファッションムービーとしての楽しさを入れている。時間を大胆に裁断してシンプルな物語に仕立て上げる勇気と才能は彼女ならではのものだ。

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清藤秀人

3.5ナスターシャ・キンスキーが振り向くシーンと重なる

2024年4月2日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

知的

幸せ

萌える

世界を虜にしたエルビスのパフォーマンスシーンは驚くほど少ない。あくまでもその人物像はプリシラから見たものなので、2人でいる時にしか見せない姿や心情であり、我々がこれまで見てきた映画やテレビ、ドキュメンタリーでは目にしたことのない、傷つきやすく弱いエルビスがそこにいます。

「Saltburn」「キスから始まるものがたり」のジェイコブ・エロルディが演じ、「エルヴィスで」(2022)でオースティン・バトラーが演じたエルビスとは違った魅力を放っています。現在のプリシラ(78歳)と個人的に対話を重ね、彼女の視点に寄り添うと決めたソフィア・コッポラ監督にしか描けない、プリシラとエルビス2人だけの世界をまるで覗き見ているような感覚に陥ります。

そして、その14歳から20代後半の大人の女性へと変化を遂げるプリシラの感情と姿を、「パシフィック・リム アップライジング」のケイリー・スピーニーが繊細に演じ分けて体現。第80回ベネチア国際映画祭で最優秀女優賞受賞も納得の演技で観る者を魅了します。

冒頭、西ドイツの米軍基地内のダイナーのカウンターで勉強している、ポニーテールのプリシラに後ろからカメラがゆっくりと近づいていきます。声をかけられて振り向いた時の表情にはまだあどけなさが残っていますが、そのシーンは「パリ、テキサス」(1984)のナスターシャ・キンスキーが振り向くシーンと重なって見えるほど美しい。

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和田隆