正欲のレビュー・感想・評価
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新垣結衣の本質を感じた
この映画は凄い。とても感動した。
稲垣吾郎も良いのだけれど、やはりこの映画は新垣結衣と磯村勇斗でしょう。
特に新垣結衣は、ガッキーと呼ばれ逃げ恥以来アイドル的立ち位置になっていた気がしますが、彼女の本質は女優なのだと思い知る、凄い演技でした。
宇野祥平も、罪の声で知った俳優でしたが、セリフさえ少ないものの相変わらず良い味を出していました。あんなに目で語れる俳優は稀だと思います。
そして東野絢香さん、失礼ながら彼女のことは初めて知りました。この先どんな作品に出られるのか、とても楽しみな女優さんです。
なかなかこのような素晴らしい作品には出会えません。映画館に来て良かった。多くの観客とこの感動を一緒に味わえて、本当に幸せでした。
水フェチってことですよね
共感する人も近くにいて明日生きていたくないといった気持ちになる葛藤が描ききってないと思う。この映画だけを観ると水と戯れること、動画を観ることで欲求が満たされるなら、人の迷惑にもならないし、犯罪にも関わらなくて済むので生き辛い感が伝わらない。
ゴローちゃんの家庭は酷かったな。レトルトのカレーのみとたぶん冷凍物のオムライスのみを当たり前の様にサーブするあの奥さんの冷たさがとても印象的だった。
〝普通のこと〟です。
インパクトあるタイトルでひき寄せられ、放つメッセージは何だろう?と予告からわくわくした。
数えきれないほどの個性が集まるこの世だ。
生きていれば他者の思考・嗜好・志向との相違を感じる。
それは普通のことで正解や不正解もない。
誰にとってもそれは「正欲」であり、生きようとする欲=「生欲」ということなのだろう。
登場人物のエピソードを巡りながら考えさせるメッセージ達はなんだか幾度も打ち寄せる海水に似ているなと思った。
決して生ぬるくなく傷を探してはしみ込んでくる。
波打ち際で立つ足元に目をやるたび、都合よく保身してくれる砂たちを繰り返し連れ去る。
〝普通のこと〟があなたに〝どうあるか〟。
根っこの部分に、他を害したり傷つけないことを絶対のルールとして、
〝では、どうあれば〟と聞いてくる。
その問いは、彼らの縦とか横とかななめが繋ぐ接点を巧妙に繋ぎながら最後まで力強く続く。
その最後である夏月の姿はとりわけ印象的だ。
佳道についての聞き取りをする寺井の正面で一切たじろぐことのない彼女。
自分を理解されることのない異端だとあきらめ他者との距離をとり生きることに疲れていた彼女が、似た感覚を持つ佳道と過ごすうちに自他の自然な感情や感覚を肯定できるようになったのを確信できる姿がそこにあった。
それは身についた寛容性だ。
自分らしさに向き合い心地よく生きる術がなし得たことだと思った。
同時に安堵がよぎり、この肩に入っていた緊張が解け血が回り出したようにふわりと体が温まった。
さらにそんな夏月のその背中をまたひとつ、すっと寺井の前で押してみせた言葉。
それは偶然と夏月の勇気が手繰り寄せたぬくもりの重みのちからだった気がしてならないのだ。
あたたかい背中にまわした夏月の指先が触れたのは他ならぬ自分の素直な感情。
人の温もりという安らぎに似た愛おしさがこちらにも漂ってきたのを感じながら夏月の前に開かれゆく長い道も見えた。
私たちのまわりにはいつもあのメガネがそこらじゅうに転がっている。
ふとしたきっかけで手にとるのは他者かもしれないし自分かも知れない。
その使い方次第では、過去から現在、海の向こうも身近に見聞きするものも起きる過ちはこの足元から簡単にまるくつながっているのだろう。
このしょっぱい波がざわめく間は剥き出しになった自分の素足をみつめることになるだろう。
日が暮れて遠くの灯台の薄明かりしかなくなっても、ただそこで、ひとりで。
「いなくならないから」
多様性って簡単に定義づけできないどこまでも果てしないものだと思う。理解しようとしても、結局個人の中にある知識や経験からしか生まれないのだから各々勝手に枠を作って、簡単に分かった気になったり、ありえないと思ったり、勝手に引いたり、批判したり、自分より下にみたりする。ありえないものを内側に抱えたり隠したりしながらどれだけの人が生きてるのか、目には見えないものがどれほど大きなものか、みんな見落としている。そもそも理解しようとすることが正しいのか?理解できないことは悪なのか?考えさせられる。
中盤、夏月の同僚の言葉にぞっとさせられる。きっと本人にとっては何気ない言葉。むしろ自分は正しいことをしているという態度。仮にも悪気なく世の中こういうことが至る所で起こっているのかななんて思うと本当にぞっとする。
夏月と佳道の2人。手を組むって、なんだか契約のようで嘘をつくようだなと予告編を見て思っていた自分の浅はかさを思い知る。手を組もうがその姿が他人にどう映ろうが、ただ必死でみんな生きて、生きようとしているだけで、生きていくための手段ってそれこそ正解も不正解もきっとないのだと思う。所謂普通ではないものを抱えていても、他人には計り知れないほどの孤独を抱えていても、もしたった1人でもそれを大事にありのままに共有できる人がただ側にいるのなら、生きる理由として十分だ。「いなくならないから」というセリフ。ここだけ切り取ると何気ない言葉。別の視点から捉えるとある意味皮肉な言葉。これほど力強い言葉があるだろうか。一生忘れられないラストシーンとして胸に刻まれた。
よくぞ映画化してくれました‼️とスタンディングオベーションを贈りたい
この映画は観る人を選ぶと思われますが…私はすごく好きな作品になりました!
新垣結衣さんの演技がとにかく素晴らしかった!
他人には理解して貰えない趣味嗜好を抱え、自分を閉ざして生きている桐生夏月(新垣結衣)。
職場でも親切心でいろいろと話しかけてくる同僚に、常にイライラしています。
この同僚、親切心は分かるんだけど…明らかに迷惑顔してるんだから、自分の思いや価値観を押し付けちゃ、ダメだよね(^◇^;)
夏月と、同じ思いを共有していた同級生・佐々木佳道(磯村勇斗)は、高校卒業以来、久々の再会でお互いの生きづらさを楽にする手段として同居を始めます。
男女ではなく同志として生きる2人の生活は、傍目には異様に思われるかも知れないけど、私にはなんだか微笑ましくて素敵に思えました。
ある日佳道は同じ趣味嗜好(フェチ)を持つ人物をSNSで見つけ、接触を試みます。
他人には理解しがたいフェチについて語り合える友がいる喜び、そして嬉しさ。
ですが、同じと思っていたその仲間の1人はグラデーションの色ように、微妙な違いが混ざっていたのです。
その人物のおかげで、物語は想像もしていない展開になります!
(あの男さえ居なければ、こんな事にならなかったのになぁ😞)
逮捕される事になった、佳道を問い詰める検察官・寺井啓喜(稲垣吾郎)。
啓喜は自分の考えに絶対的な自信を持ち、怒りに激昂して声を荒げるなど、ちょっと古いタイプの人間。
中の人吾郎さんとは全く違う人物(^◇^;)
これはどうやって終わらせるのかなぁ?と不安になりましたが💦
終盤、夏月は佳道について何も語らず『佳道が語っている事がすべて』だと言います。
自分の思いを話しても嫌悪感を持たれるだけ、理解など誰にもしてもらえないと分かっているから。
でも佳道に伝えたい言葉は『居なくならないから』
この言葉に救いがあって、私はとてもいい終わり方だと思いました。
この作品は、いろいろと語りたい事がたくさんあって、うまく纏めらませんが、、、
とかく大声で主張した人が正しいと思われがちな世の中に、生きづらさを感じている人が多いから、登場人物に共感してヒットしているんだろうなと、感じました。
個人的には、事務官役の宇野祥平さんが、印象に残りました。
理解出来ないような案件や人物にも、決めつけないで理解しようと努力する事が、とても大事と思えたので。。。
彼には、事務官ではなく是非検事になって欲しい!?(笑)
新垣結衣の演技が素晴らしい
これだけの難しい役柄を、力みなく淡々と演じきる新垣結衣が素晴らしい。周りの演者とのやりとりも自然で、表情や醸しだす雰囲気も心地よく、最後まで飽きさせない。一段と魅力を増した女優の演技をこれからももっと観たい。
うわ〜、❨また❩ やっちゃったぁ〜 変な作品に出費!(T_T)
大失敗!
時間と映画代の浪費!!!
観終わって…内容を振り返って…インプレッション!が、
何も残らない映画…
ガッキーの変貌ぶりに興味のある方なら是非、劇場へ足を運んでみては?
それくらいかな?
引き込まれた!
原作読んで観賞。
役者の演技がよかった。
特に夏月役の新垣結衣、八重子役がよかった。
最後の場面の「いなくならないから」は名場面だ。
自分をさらけ出した信頼関係こそがリアルな繋がりではあるのだと。
それを紡げていなかったのは画一化された環境で普通の家庭を築こうとしていた啓喜のほうなのだと。
あらゆる常識に対して色々な角度で見識を持てるようにしたい。
芳道、夏月、大也、八重子のような人たちがこれから生きやすくなるような社会の発展を願いたい。
2時間半では難しい?
原作を読み、最近の小説で最も夢中で読めた作品だったので、
映画を観たくなり映画館へ
原作既読済みの映画鑑賞時に、いつも思う感想が、
自身の思い描いた原作通りに行かないと嫌!って感想が必ず付き纏います😵
原作を好きな時程特に。。
今回もそのような感想でした
桐生さんの謎の奇行や、原作で好きな田辺の好き放題コメントシーンが無かったり、寺井啓喜が、自身のマイノリティを自覚させられるシーンが見たかったな、などなど、
小説を読み終わった後のような、いい気持ちにはなりませんでしたが、良いシーンもあり、
八重子と大也の言い合いのシーンは原作と違っていましたが、言葉や演技に迫力もあり、桐生さん佳道との絡みのシーンも、お互いの繋がりが感じられて良かったです
原作とはまた違った良い映像化を期待して、また映画館に向かいます
時代の映画
群像劇、特殊な性癖をもつ主人公たちの葛藤、理解できない検事。
物語のテーマは非常にわかりやすい。ガッキーと磯村さんの純粋さと稲垣さんの堅物さ、とてもよかったです。
群像劇が、交わるまでが遅い印象。見ている僕も、そう言う趣味を理解できない為、前半は見ていて退屈です。
個人的には猛烈な衝撃作 もう観る前の自分には戻れない
『生欲』
「自分がどういう人間か、人に説明できなくて
息ができなくなったことってありますか?」
私はあります。
「明日が来なければいいと思って生きてきた」
そんな人の気持ち、理解できますか?
「誰にもバレないように、無事に死ぬ為に生きてるって感じ」私もそんな感じ。
家庭環境 性的指向 容姿
異なる5人の人生が、少しづつ繋がってゆく。
正しい欲とは?欲に正しいも不正解もないのでは?"普通"って何?普通じゃない癖(フェチ)を持ってたら捕まるの?可笑しな世界だ。
異なる5人なのに、5人全ての気持ちが理解できた。共感した。苦しくも、嬉しくも、羨ましいとも思った。
「どうせ私の気持ちなんて誰もわからない」
そう思って生きている人達に、
そう思ってない人にも
是非観て頂きたい。痛烈な衝撃作。
理解できないかもしれない。嫌悪感を抱くかもしれない。
私のように逆に苦しくて泣いてしまうかもしれない。でも、世の中にはこういう人間が山ほどいる。この世界の中に誰か一人でも理解してくれる相手が居たら、抱きしめ合える人が、居たら、居て欲しいと願う。私にも居たら良かったのになと、昨夜も3時頃も、今も、毎日、毎晩、絶望する日々。
「いなくならないよ」その言葉のあとの、とてもシンプルな愛の歌 Vaundy「呼吸のように」が、この作品を観終えたエンディングだからこそ深く胸に刺さり、涙が止まらなかった。
入院前からずっと観たかった作品
この近辺では昨日で上映終了でした。間に合った、、、良かった、、、この作品に出逢えて良かった。原作ではより深く登場人物の過去が知れるということもわかったので、時間があれば読んでみたいと思った。
⚠️以下ネタバレ含んだ私の感想です。
「これで擬態できないかな?世間なみに。この世界で生きていく為に 手を組みませんか?」
この言葉を発した磯村勇斗くんにきゅん。
そりゃ嬉しいさ。そこで初めて心からガッキーの笑顔が。ほっとした表情。私も指輪💍貰った事あるしさ、ヴィヴィアンのよ。今でも持ってるよ。付けらんないけど。
「逃げ癖がついた人間は生きづらいまま」
仰る通りでございます。
カレーオムライス 私の好きな得意な料理
同級生や友達の結婚式には出た事がない。この歳で一度もない。他人の幸せが辛い。コース料理が食べれない。不登校だった。男性恐怖障にもなった。人間不信にもなった。
拘束前に押さえつけられたトラウマで。触れられるとパニックやら過呼吸やらフラッシュバックやら手の震えやら。でも好きな人の画像は保存します。スクショします。見てるだけで幸せなのです。
人生の通知表 大晦日 お正月子供のアイコン
「うっさい話し掛けんな」「何その目 こっわ」
私もあの目ひん剥いた目👁で発した事があります。
はじめてのおつかい嫌いは大嫌いです。
明日生きていたくない人死にたい人
社会の一員流れに乗るのが「普通の人間」なんですか?
そう、バグ。この作品を観た夜中にバクった。
では、私の癖を晒しましょう。
私は眼鏡とスーツと白衣が好きです。
子供の頃嫌いだった注射も採血も点滴も今では当たり前のこと。好きか嫌いかと問われれば好きだ。思い出して下さい。佐藤健の恋はつづくよどこまでも を
全国の女性がきゅんとしたはずです。それと一緒です。イケメンの医者に惚れた。それだけの事。
拳銃や手錠も好きです。『Switch』という漫画がありハルというキャラクターがどストライクです。オタク?そうなんでしょうね。
それの何がいけないんでしょうか?
大人の男性が小さい男の子が好きな事は犯罪ですか?確かに売買は駄目。
でも、好きな事は仕方がない。
その線引きは非常に難しい。
薬だってそう。捕まる薬とそうでない薬の違いって何ですか?もうわかりません。
どうかまだ、終わらないで欲しい。
上映を続けて欲しい。一人でも多くの方に、この苦しみを知って欲しい。
この苦しみを、誰かと分かち合えたなら、、、
普通って何なんでしょう
原作未読。
予告で気になっていたので観ました。
予想していたよりもとても深く心の奥底をじっと覗き静かに起こす。
そんな気持ちになった作品でした。
なんだかすごいものを観ちゃったなと暫くぐるぐると考えてしましました。
とてもいい映画でした。
新垣結衣でないと成り立たない作品
偏った性的マイノリティの人たちの話。
なんとも映像にしづらい内容を静かだけどわかりやすい作りの作品だった。
綺麗だけど、理解しづらい志向で生きづらそうな女性をなに考えているかわからない新垣結衣でないと成り立たない作品ではあったなー
劇場公開終わるけど見れてよかった
圧倒的マイノリティの「推し」
昨今話題の「推し活」は「推しが尊い」のはもちろんだが、「推し活仲間」こそ真に尊いのではないのだろうか。自分の考え方感情を共有共感し、共に楽しみ、語り、笑い合える。
そんな心の底から分かち合える仲間が1人でも見つかれば、なんでもない毎日が輝いて感じる。明日も生きたいと思える。
マジョリティにしたい、なりたいわけでは無い。
けどやはり1人ぼっちは寂しい。
クライマックスの言葉が刺さります!
マイノリティの方たちの生きにくさは、大衆の私には分かりません。
だけど、多様な嗜好や考えの人がいることは、受け入れたい。
この映画は、そういうマイノリティを中心に置いたもので、まさに今の時代の私たちはどう考えるのかを問題提起したものだと思います。
昭和の人は、昔は上からの強制に耐え、今はZ世代の人たちの理解をしなければならない的な風潮で‥昭和の人たちはいつまでも間に挟まれて大変なのよね😅とかも思いつつ
それは置いておくとしても
水に官能的な刺激を受流という設定は、ある意味とても美しい情景にも見えました。
ちょっと思うこともありますが、このクライマックスのために(無理くりでも)必要だったのでしょうね。
法の正しさと生きづらさ
とても現代的で難しい、複雑なテーマを扱った作品。
原作ファンや俳優のファンでもなければ、何か目的を持って映画を観るというのはかなり減ってきているかもしれない。そういう意味でこの作品はサブスクで観ようとすればスマホや他の日常の作業や雑音にさえ飲み込まれてしまう可能性が高く、集中して作品と向き合わなければ何を伝えたいのかも分からないと評価されてしまうかもしれない。
分かりやすさで言えば本作は分かりにくいし、複雑で、同時期に検察を皮肉る作品としては公開された『法廷遊戯』の方が一般的に評価されやすいと思う。
しかし自分が思いもしない、全く別な角度から鈍器で殴られるような衝撃でいえば本作の方が空恐ろしさを描いていると個人的には思う。
タイトルの「正欲」は性欲でもあると同時に多くの人が口にする「普通」や「一般」「平均」としての「正しく」あろうとする姿やそれに擬態して自身の欲望を隠す様を表しているのだろうか。
昨今、LGBTQに代表される性的マイノリティが世界的に注目を集め、諸外国の中には同性婚などに踏み切る国もある。
日本でもLGBT法案が通過し、心の性は女性と自認する身体の性は男性の人が女性の公衆浴場に入ろうとする問題や性犯罪者、小児性愛の問題が議論されているが、そうした中で既存の法律や社会規範が前提としているモノが崩れつつある現代だからこその作品だと思う。
作中には様々な他の人とは違う、自分にとって当たり前の欲を持つ人が登場する。作中に登場する日付から2019年を舞台である時代背景を念頭に考える必要があると思う。
非常に挑戦的な作品で、法の全体としている社会的規範や常識で計れない人々に対して適度な距離感とグレーをはっきりさせようとする現代の在り方に対する皮肉が込められていると評価している。
特に中盤移行のそれぞれの人物がどう繋がっていくのかは、本作の肝で、一般的に良い人とされる人が一番怖いという教訓でもあると思う。
また大学生の表面的なだけの言葉のキャッチボール、YouTuberの社会を知っている風に見せる演出などへの皮肉の込められ方も含めて演出が巧み。
★1.5は公開時期が時流を捉えるにはLGBT法案が通る半年〜1年前が適切だと思われた点。
また後の時代にどう評価されるかはわからないが、ホテルでのバストアップで夏月と佳道が語るシーンは解像度が高すぎ、ノイジーさや暗さが足らない気がした。
まるでそこだけ後から撮り直しでもしてツギハギをしたようなトーンの違いを感じた異物感から。
また夏月と八重子をどちらも黒髪ロングで揃えるのは意図してなのかキャラクターのイメージがダブり気味に思えたから。
以下、主な登場人物について。
★稲垣吾郎演じる「寺井啓喜(ひろき)」は横浜地方検察庁で働く検事。作中でもっとも模範的常識人だけれど、一番辛い立ち回りかもしれない。物静かに見える役柄から反転する怒号、苛立ちの演技は作中ダントツ。
不登校YouTuberに感化されて我が子がYouTuberになる。学校に行く時より我が子が生き生きとしていると喜ぶ母親。耳障りの良い事を言って広告などで収益化をしている人は詐欺師同然と…次第に夫婦と親子の関係は別居から協議離婚調停へ。いわゆるモラハラやペアハラ(ペアレンツ・ハラスメント)の役所。
★東野綾香演じる「神戸八重子」(かんべ)、金沢八景大学の学祭実行委員で「ダイバーシティフェス」を企画。兄弟もいるが、男性から性的に向けられる視線に吐き気や過呼吸になる程の男性恐怖症で、自分の言いたい事も面と向かって言えない。空気が重くなるような絵に描いたような陰気なタイプ。長い黒髪が重々しさマシマシに伝わり、そこから覗く表情は焦点がここではない何処か遠くを見ているようで光はなく、息が詰まりそうな演技が怖い。
★佐藤寛太演じる「諸橋大也」(だいや)、金沢八景大学のダンスサークルの花形。昨年のミスターコンテストの準ミスター。水に対して性的興奮をするが、人に暴露できず、誰にも理解されない事をダンスにぶつける。口数が少なく眼光の鋭さとキレのある動きの奥に何を考えているか分からない不気味さが同世代の学生には大人びて格好良く見えるかも。
★磯村優斗演じる「佐々木佳道」(よしみち)、偏愛を中学時代の桐生夏月と分かち合う。広島育ちだが中学3年の途中で横浜に転校。両親が事故で他界し、広島に戻り、同級生の結婚式で夏月と再会する。
★新垣結衣演じる「桐生夏月」、イオンモールの寝具売り場で働く販売員。結婚適齢期を迎えても恋人を作らず、親や周りから不思議がられ生きづらさを抱えている。メイクの影響もあるだろうけど、年齢相応に影のある演技も出来る女優さんなんだな改めて感じた。
許可証
彼女にとっては彼が。彼にとっては彼女が生きててもいいっていう許可証なんだろうと思う。
⭐︎5.0は決して面白かったわけではなく、減点に値する要素が見当たらなかったからだ。
マイノリティの人々の目線というか生き辛さの話なのかなぁと思いながら観ていたのだけれど、そんな局所的な話を入口にして、人が根源的にもつ仕組みの話になっていった。
承認欲求って言葉は、他人から認めてもらいたい欲の事だと思っていたのだけれど、この物語にもソレは当てはまり…たった1人にでもいいから必要だとされる事も、承認欲求が成就された形なんだと思う。
人ってのは、そんなに弱いのかなぁと思う反面、確信をもって同意してしまう自分もいる。
別に1人で好き勝手に生きていきゃいいじゃんよ、なんて思っていたのだけれど、きっと俺は本当に1人になった事がないのだと思われる。
俳優陣は皆様、素晴らしかった。
新垣さんと磯村氏は特にだし、男性恐怖症の女性も抜群だったなぁ。
新垣さんの台詞がいちいち刺さり…どこにも居場所がなく「地球に留学してきたようだ」とか「命の形が違うんだよ」なんて言ってた彼女が、彼と抱き合い?「世界の中心になったみたい」なんて台詞は、それまでどれほどの疎外感を受けていたのだろうと思うし、そこまでだった疎外感はたった1人の理解者によって砂の城の如く崩れるのだと思えた。
彼女が稲垣氏に向ける台詞も味わい深い。「惚気をきいてくれてありがとう」って。
おそらく理解できない感情だったと思うし、唾棄する程の嫌悪感もあったんだと思う。でも彼女は惚気る。他の人が標準装備している欲求がちゃんと彼女にもあったわけだ。
依然、内側は変わらない。
特殊な性癖もそのままだし、自分が普通になったとも思ってないだろう。なのだが他人に自慢したい事が増えたのか、それとも自慢できる程、自身に自信がもてたのか分からないけども、一度切られた彼女の堰は塞がる事はないようだった。
生きていく上で「理解者」の存在って絶大だなぁと思える。
俳優陣は、そんな感情の機微を巧みに表現してくれてた。
演出も上手いなぁと思うのは、稲垣氏のパートで…彼は精一杯歩み寄ろうとしてるのであろうなぁと思う。動画撮影の際に同席してたりするのは、きっとそういう事なのだろう。
あんな風に奥さんに泣き喚めかれて、子供に反論されたら、自身の正当性は落ち葉のように吹き飛ぶ。お願いだから泣かないで、と。彼に同情してしまった。多様性の現状を如実に表してるパートだと思えた。
長らく家長制度を継承してきた日本社会において、奥様と子供は弱者にあたりもして、それはそのまま日本の社会にも変換できる。
凄い剣幕で自身の権利を主張する。今まで是だった事が否定されていく。弱者救済と言えば聞こえは言いが、弱者という立場の人達から脅迫されてるような状況にもなりうる。
どこまでを許諾してよいのか困惑する。
その先の未来の予測が立たないから。
その予測出来ない未来を度外視してでも対応するのが現代の風潮ではあり、変革の渦中でもあるから致し方ないとは思う。
稲垣氏の立場は絶妙で…言ってる事は分かる。理解しようともしてるけど素直には受け止められない。でも、お前ら俺を悪者にするなよ…みたいな感じだった。
実際、タイトルである「正欲」だけど、性欲にかけられたりもしてたけど「正しい欲望」とか「正当な欲望」なのだと思う。
人としてある正しい欲求や欲望。
マイノリティである人達にもそれは装備されてて、だからこそ生きにくいって話なのだけど…「水」程度な事ならば受け入れもする。
でも作中にあったように小児性愛者とかカンニバルとかなら多様性の項目からは除外する他ない。
百歩譲って需要と供給が一致しているのならば、どうぞその狭いコミュニティで謳歌してくれとは思う。
人肉を食べたい人と、自分の肉を食べて欲しい人がいて、互いの欲望が満たされるなら補完しあえているのであろう。ただ、それ以外の人を巻き込むなとは言いたい。
殺人とかになってくるとまた話は違う。
そう言った意味でも稲垣氏の職業が検察官なのかな?人を管理する基準である「法」に関連させているのは技ありだった。
磯村氏らの処遇が気になるところではある。
前例からは判断できない動機があって、それを認めなきゃいけないのが現在の多様性社会でもある。法が追いついてないと言うのがた乱暴だと思うのは、元々そういう性質ではないからだ。
法の枠組みを逸脱してるというか網羅できてる訳がない。彼らに適用しきれない法によって彼らの人生は変わってしまう。
普通じゃない彼らを普通の価値観で推し量る。そんな理不尽さを抱えているとも言える。
ラストカットも絶妙で…稲垣氏のリアクションも良かったけれど、立ってる場所による価値観の分断って日常的に起こるのだなぁと思える。
閉ざされた空間に1人残る稲垣氏と、その空間から出ていく新垣さん。それは旧世代の常識に囚われた人々の暗喩のようで、彼はその中で悶々と自問自答を繰り返すのだろうか?
それとも、安全な檻から出ていく無謀な冒険者を意味するのだろうか?いずれにせよ、その扉は閉まり、両者を隔てる壁によって分断される。
どちらかがその扉を開けない限り分かり合える事はないのだろう。
厳選と言うと語弊があるのだけれど、新垣さん達は唯一無二なんだと思われる。個体数が少ないからと言えばいいのかな?その関係性が「愛情」ってものに変化していくのならば、稲垣氏が交わした結婚っていう愛情が根底にあるはずの契約は安心とか建前とかなのかもしれず…唯一無二と言う根拠は新垣さん達と比べて薄いようにも感じる。
まぁ、子供っていう未知なるものを抱えた時点で比較するべきものでもないようにも思うけど。
ラストに至り、かなり重たい天秤を突きつけられたようでもあった。
「人は1人じゃ孤独も感じられない」なんて歌詞があったけれど、誰かが居ないと自分すら分からない不自由な生き物なんだなぁと思う。
一昔前までは「普通じゃない=異常」って価値観だったように思うけど、昨今は「普通じゃない≠異常」になっていて、細分化もされていってるって事なのだろう。
分かりきってる事だけど、普通じゃないって事だけで罪に問われる事などない。
ただ一つ。
ズルいなぁと言うか浅ましいなぁと思うのは、ビジュアルによる印象の違いだ。
美くしい人が主張するものは正論と受け止めがちな自分に気づく。きっとそうでない人が主張すると暴論に聞こえてしまうのだろう。
とても愚かな思考だと自覚はする。するが…条件反射にも近いような気がしてる。
展開が遅い
4~5人の登場人物の視点でグルグル進行していくため、どうして展開の遅さを感じずにはいられなかった。
動き出したのも1時間経過したぐらいからだったと思う。
そこから一気に面白くなった。
映画館じゃなきゃ見れない作品とも言える
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