劇場公開日:2022年10月21日
解説
水墨画の世界を題材にした砥上裕將の青春小説「線は、僕を描く」を、横浜流星の主演、「ちはやふる」の小泉徳宏監督のメガホンで映画化。
大学生の青山霜介はアルバイト先の絵画展設営現場で水墨画と運命的な出会いを果たす。白と黒のみで表現された水墨画は霜介の前に色鮮やかに広がり、家族を不慮の事故で失ったことで深い喪失感を抱えていた彼の世界は一変する。巨匠・篠田湖山に声を掛けられて水墨画を学ぶことになった霜介は、初めての世界に戸惑いながらも魅了されていく。
篠田湖山の孫で霜介にライバル心を抱く篠田千瑛を「護られなかった者たちへ」の清原果耶、霜介の親友・古前を「町田くんの世界」の細田佳央太、霜介に触発されて古前と共に水墨画サークルを立ち上げる川岸を「サマーフィルムにのって」の河合優実が演じ、三浦友和、江口洋介、富田靖子らが脇を固める。
2022年製作/106分/日本
配給:東宝
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2022年10月23日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
「ちはやふる」シリーズで競技かるたという題材を信じられない映像世界で実現させてみせた、小泉徳宏監督と北島直明プロデューサーの再タッグ作。
今作では横浜流星を主演に起用しているが、その期待に見事に応えてみせた。
コロナ禍の影響などもあり、公開の順番は変動してしまったが、当初の予定通りでいけば横浜にとって初めての主演映画となっていたはずのもので、思い入れの強さも鑑賞した方であればご理解いただけるはず。
前述の通り、様々な事情で順番が変わってしまったが、作り手ひとりひとりが等しくコロナ禍を体験したからこそにじみ出すことの出来る表情もあったのではないだろうか…と感じるシーンが幾つもあった。再生の物語であるのに疾走感も損なわれておらず、小泉×北島コンビが醸し出す世界観の妙に唸らざるを得なかった。
小泉監督が「ちはやふる 結び」の開発に入っている2017年2月、ある地方都市で北島プロデューサーと3人で飲む機会があったが、その時に思い描いていた題材とは良い意味で異なるものとなった。競技かるた、水墨画の続いた作品世界が、今後どのようなものに転換していくのかにも興味が尽きない。
本作は名作「ちはやふる」の製作チームが再結集し、「かるた」を「水墨画」に置き換えるイメージで製作が決まったと思われます。
「ちはやふる」の小泉徳宏監督、横山克が音楽を担当し、「またあの世界観を味わうことができるのか」と期待値は高くなっていました。
実際に、光と音楽の使い方に秀でている小泉徳宏監督の良さは存分に出ていました。
そして、横浜流星×清原果耶×江口洋介×三浦友和のキャスト陣の演技も良く、作品のクオリティーを上げていました。
ただ、見ていて「何かが足りない」という気持ちに。
やはり、題材の違いが大きすぎたのかもしれません。
「ちはやふる」では、「静けさ」のイメージの「かるた」に、実は「競技かるた」があり、「激しさ」がありました。
本作の「水墨画」も同様に、そのギャップのようなものを描き出しています。
ただ、2作品を比較すると、「水墨画」の方は、やや大人しいイメージで、「競技かるた」に比べると「映像の迫力」と「高揚感」が薄くなってしまう面があるようです。
また、題材の違いなのか、物語の振れ幅にも違いがあります。「ちはやふる」のようなエンターテインメント作品として、どんどん面白くなっていくわけでもないため、「万人受けする作品」とまでは言えないのかもしれません。
とは言え、本作を単体映画として見れば、「良質な作品」であるのは間違いなく、期待値を上げ過ぎない方がいいのかもしれません。
2023年3月25日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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コミカライズで知って、原作小説も既読。
映画化と知って、(楽しみではあるけど、映画化かぁ。うーん、題材としては地味だし、文芸映画的に作るのかなぁ)と思った。
コミカライズの印象が強いので、(えっ、先生を三浦友和?格好良すぎでしょ。それに、もっと歳上じゃね?存命なら、好々爺バージョンでの津川雅彦さんかなぁ)(江口?先生と違って逆にオッサン過ぎるでしょ)。しかも、本当は男性のキャラが富田靖子に・・・・。他のキャラもイメージ違うなぁと。
原作だと、両親が事故で死んでいるのに、映画途中までだとオリジナルで出した妹が死んだ?って思う描写、最後の方で家族全員かって分かるけど、妹必要?
先生が青山を弟子にしようと理由自体はまぁ、演出は過剰だけど基本同じもの。ただ、先生が青山に興味を持った部分がザックリと切られているので、原作未読だとなんで水墨画の大家が初対面の学生を弟子にしようとするのかが分からないだろうなぁと言う始まり方。
まぁ、その辺が原作からの違和感。
100分強にまとめるため、映画は青山の描く水墨画の成長には殆ど触れず、青山や先生、千瑛、西濱との関係のみに絞った感じ。なので、原作ではもっと才能があり成長している水墨画家としての青山ではない。
と言うと、映画として良く無いみたいだけど、原作を知らずにこれだけ見れば悪くない。最初の先生が青山に興味を持つ部分の違和感さえ気にしなければ、スムーズに見られる。むしろ、オリジナル部分の終盤、流された家の跡地で椿が映された時はハッとなる。
映画でオッサン化された西濱も、水墨画を描くパフォーマンスの迫力は若い役者では出ない、江口だからだろうな(だから、オッサン化した西濱が「茜さ~ん」と若い女に寄って行く所は再現しないで欲しかったw)
ラストもオリジナルだけど、この展開だったらアレで正解かな。
ただ、エンディング曲がいきなり作風と違うイントロで始まったのが・・・・・・曲は良いと思う。結構、好き。だけど、あの終わり方なのにエンディング曲としては・・・
2023年3月24日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
私事ですが、幼い時から書道をやっています(下手の横好き程度ですが)。
書道と水墨画ってジャンルは全く違いますが、筆遣いや墨一色だけで表現する事など物凄く親和性が有って、昔から観るのは大好きでした。
そんなテーマのお話で、個人的に大ファンの清原果耶さんが出演と聞き、イソイソと観てきました。
白い紙を前に筆を持った時の緊張感…、観ていてゾクゾクしました。一度筆を下ろしたら、もう後戻り出来ない感覚はやってみないと分からないものです…。「線を書きなさい」も同じだなぁw。
なんて話はさておき、主人公が全くの初心者設定のお陰で、自分も一緒に入門したような感覚で、とても楽しく鑑賞しました。ドタバタした展開は無く、ただ真っ直ぐに水墨画と向かい合う、坦々として静かなんだけれども心的葛藤はスゴく激しい、素晴らしい青春映画だと思いました。
技術レベルは違えども、どんな名人でも悩み、壁にぶち当たる様子は、本当に観ている此方も苦しくなる程で、清原さんと主人公、それぞれの葛藤が本当にツラくて、でも悩んでいる姿が何とも眩しくて、つい涙が出そうに成りました。
後半、ただの助手かと思っていた江口さんが、あんな豪快な画を描く画家なのだとは思わなくて、あのシーンはちょっと笑ってしまいました。師匠とも全~然違う画風でしたしねw。
それでも最後、主人公の彼が「何かを」乗り越えた時、その眼に見える風景は一変したんだろうなぁと感じて、我事の様に嬉しかったなぁ。
清原さんの吹っ切れた際に見せた笑顔も、本当に素敵でした。
三浦友和さんは、いよいよこういう役柄もこなせるお歳に成ったんですねぇ…(あんなに大人しい「師匠」は羨ましいですよw)。
昔、黒革ジャンの刑事だった頃が懐かしいww。
水墨画を主題とした小説(原作)は解りますが、それを映画化するのは相当に大変だったと思います。
表面的な芝居ではなく、心の内を覗かせる様な抑えた演技に惹き込まれました。
賞レース等とは無縁な、のどかで穏やかな作品ですが、個人的には2022年一番だと思えた佳品でした。