LOVE LIFEのレビュー・感想・評価
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観ていて、気分のよくなる映画ではない。
終始モヤモヤした感じの作品。
極めてキレが悪い、それが最初から最後まで続く。
それは登場人物が皆、胸に一物を抱えたままで、特に主人公夫婦は、わだかまりの塊である。
そういう心根でこの夫婦は折り合いをつけて生きて行けるのだろうか?
深田作品は観るといつも思うことだが、出てくる人たちは皆、何かを引き摺って生きていて、それが現在あるものを壊してしまって、壊れたあとどう再生していこうかとしてるところで終わるようです。
この作品もその流れの通りに進んでいるようで、いつもの深田さんだなと感じました。
孤独の辛さ、人の内面の複雑さを描いた傑作
「よこがお」や「本気のしるし」を手掛けた深田晃司監督の最新作で、矢野顕子の同名タイトル曲をモチーフに製作。
初めて深田作品を観賞しましたが、非常に良かったです!
木村文乃演じる妙子の家族が、とある"不幸"が起きることで自分の元夫と向き合う事になるのですが...
ぶっちゃけて言うと、妙子も夫も元夫もかなり身勝手で人を振り回す人達で最低です。なのに、何故だか嫌いになれないし妙に納得してしまいました。
序盤の"不幸"の場面も良い意味でしんどく、その後のどこか壊れそうな木村文乃の演技が素晴らしいです。
また、撮影のカメラワークや演出術が本当に素晴らしい!
フランス資本が入ってるからなのか、深田さん自身の手腕でやってるかは解りませんが、見事なショットや技術に終始圧倒されました!
ただ、元夫が持つ聴覚障害者の描写は正直議論の的になりそうな気がします。
ネタバレになりそうなので上手く説明出来ませんが、恐らく劇中の描写に怒る人はいるかもしれません。(聾者の役を実際の聾者の俳優を使う事自体はポジティブに捉えてます。)
主要キャラクターはほぼ全員自分勝手で「共感出来ない!」という人もいるかもしれないので、そこで本作の好き嫌いが分かれる気がします。
しかし個人的には、人間の孤独に対する辛さや繊細さ、人(主に男女)の内面の複雑さを描ききった傑作でした!
【"どんなに離れていても、愛する事は出来る・・。"哀しき物語だが、ラストシーンには人間の絆の大切さを感じた作品。今作は、人と人の繋がり、様々な愛の形を、”痛みを含めて”描いた作品でもある。】
- 妙子(木村文乃)は、6歳のオセロが強い息子と、再婚した二郎(永山絢斗)の3人で幸せに暮らしていた。
義父(田口トモロヲ)とは、ギクシャクした関係だが・・。(序に言えば義母(神野美鈴)も”私達の孫が欲しいわ・・、とか言っている。)だが、ある日2人は不慮の事故で息子、敬太を失ってしまう。-
◆感想
・今作品は不慮の事故で息子、敬太を突然失った、妙子と二郎の関係性と、夫々の揺れる感情を絶妙に描いている。
- 事故を知った妙子の元夫のパク(砂田アトム)が葬儀場に突然現れ、妙子を平手打ちした後、自分の顔を何度も何度も殴るシーン。
そして、妙子は自らの心の痛みを、身体 の痛みとして感じさせてくれた、韓国籍で聾唖者の元夫パクの面倒を見始める・・。-
・一方、二郎も元カノ、山崎(山崎紘菜)との距離を縮めて行く。
- "何をやっているんだ!"という想いと共に、彼らは夫、妻意外の"誰か"にすがっているのであろうと思った。
妙子が、自分のせいで息子を溺死させてしまったと思い込み、ずっと自宅の風呂に入れない姿。だが、パクに手を握って貰いながら漸く、風呂に入る姿。
一方、二郎は途中から自宅の風呂に入るようになる・・。-
・二郎が言った言葉"俺たち、いつから目を見ないで話す様になったんだろう。"
- 彼は元カノの山崎からも、同じ事を言われている。
目を見ないで話すという事の意味を考えさせられるシーンである。
妙子と二郎は、冒頭から心から、笑わない・・。-
・パクが韓国に"父が危篤だから"と帰るシーン。パクが手話で妙子に伝えた言葉"乗り越えなくて良いんだ。君は敬太君の傍に居れば良いんだよ"
その言葉を聞いて、妙子もパクについて行く。
- この言葉は沁みた。そして、妙子は二郎と、一度距離を置こうと思ったのではないか、と私は思った。離婚も視野に入れていたのかもしれない・・。-
・けれども、パクが韓国に帰った理由は別れた妻との間に出来た息子の結婚式に出席する事が分かったシーン。
ー 妙子は、パクの息子に会った時に、”自分は息子の傍にいなければいけない”と悟ったのであろう。雨が降る中、一人佇む妙子の姿と表情が印象的である。
<今作品は、妙子と二郎の愛、2人と息子の愛を代表として、様々な愛の姿を"痛み"を含めて描いた作品である。
ラスト、妙子と二郎が昼食前に散歩する姿をロングショットで捉えたシーンは、2人の将来の、僅かな光を感じた作品でもある。>
不思議な後味
衝撃的なスタートからのそれ以降のなんとも言えない味わい。結局どんなメッセージだったのか、LOVE LIFE。これまたあまり共感しやすい登場人物はおらず、リアルといえばリアル。人間の行動、思考回路って複雑だよなぁ。
木村文乃は昔から好きですが、バツイチになったのもあるのか、さらに不思議な魅力が増してきている感じがします。もうちょい笑顔のシーンがあればよかったなぁー
LOVEってなによ?
息子を連れて再婚した嫁と結婚直前まで他の女性と交際していた旦那という過去を引き摺る夫婦の話。
結婚して旦那の実家を引き継いで仲良く暮らす夫婦と嫁の連れ子だったが、息子のオセロ大会優勝&旦那父の誕生祝いの日に事件が起きて…。
なぜその状況で日本に住んでるの?な元旦那の登場が絡み、何だか怪しげな嫁の心境の変化や旦那の際どさもみえてくる。
いるよねこういうダメ人間好きの人。私がいなきゃ!っていっているから自分が好きなのかも知れないけど。
誰もがもっている人の自己愛や自己肯定感とか弱さみたいなものをみせつつ、最後はしれっと…わからなくはないけれど、出オチの様な序盤の重々しさや悲しさがピークで何だか結局摑み所がない人たちだった。
物語が動き出すきっかけとなる事件が重たすぎるのではないか?
ある事件をきっかけにして、主人公を取り巻く人間関係が変化していく話なのだが、なかなか物語の焦点が定まらない。
最初は、主人公の再婚相手の両親(義父母)との関係が軸になるのかと思ったが、そのうち再婚相手とその元カノの話になって、やがては主人公と前の夫の話になっていく。そこで、ようやく、主人公と2人の夫の関係性が、この物語の核心であることが明かになる。
その一方で、主人公がどういう経緯で前の夫と結婚したのかという大きな疑問は残り続けるし、主人公の肉親(実の両親等)のことは、最後まで明かにならない。
何よりも、主人公が、なぜ、そこまで前の夫に執着するのかが、実感として理解できない。確かに、前の夫は「弱いから守ってあげたい」と思わせる風貌をしているが、そこに男性としての魅力があるのかと言えば、甚だ疑問であるとしか言いようがない。
「CODA」のように、ろう者の役を実際のろう者が演じることに大きな意義があるということには疑いの余地はないが、だからといって、適材適所の原則をねじ曲げて良いということにはならないだろう。そういう意味で、今回の砂田アトムは、残念ながらミスキャストであると考えざるを得ない。
そして、結局、この映画が「雨降って地固まる」ということを描きたかったのだとしたら、その「雨」は、親にとって過酷すぎたのではないかと思えるのである。
ラストシーンで、未来に向かって歩いていくように見える2人の姿からは、確かに希望が感じられるものの、その一方で、そんなことでこの苦難を乗り越えられるわけがないという疑念も沸き起こってくるのてある。
切れ味上がってる
深田は追いかけているが切れ味と、緊張感が半端じゃない。冒頭の流れなんて、引き込まれる。ろう者の彼のように、この人俺が居てあげないとと思って心配してあげるが、実をいうと戦略としての態度を疑ってしまう。男がろう者に対して聞こえない声で語りかけるシーンが素晴らしい。
タイトルと矢野顕子の印象から柔らかいかなと思いきや、鋭い。深田はたまに柔らかい印象のものも撮ろうとしているが、鋭い方があっているような気がする。
この映画はTOHOシネマズで鑑賞した。以前、深田はTOHOが独禁法に抵触するのではという問題提起をしていて、それを読んで、そんな大きな会社を批判したら一生上映してもらえないのでは?と勝手に心配していたが、こうやってちゃんとかけてもらっている。山崎の爽やかな雰囲気をこんな演出で撮るのかと驚いた。山崎はTOHOで何年も観てきたので。
パクが港で説教かますシーンはお前が失踪して大変な目にあってるのにお前がいうのかと呆れてしまった。
障がい者を不思議なマジカルな人と描くのが古典的差別としてあり、それを進歩させてセックスにはまったりするんだよ、普通の人なんだよというのがコーダだったりするが、深田は更に回って不思議でマジカルな魅力を描く。
猫を彼の無責任ぶりの小道具として使うのはかなり素晴らしい。映画のなかで猫が出てきた時のほっこり的な甘さが苦手なので警戒していたら、こんな暴力的に譲渡されるのは新鮮。
2回目は永山を中心に見てしまった。彼の自分で軽薄さを認めた上で優しく振る舞うが自らを省みてしまうがゆえの冷たさが悲しい。最後の散歩を彼が切り出すのはせめてもの救いか。声は義母役の神野さんがでてくる度に不安になる。
割り切れないもの
割り切れないものをあえて描いています。
大げさな演技も、絶叫も、ダッシュも、刃傷沙汰も、「頭のおかしい人という設定でそれっぽく見せているだけ」の演技も、ついでに言えば肉体関係を伴う不倫も、どれもありませんが、全編が強い緊張感に包まれています。
登場人物が優しい人ばかりだとか寛容だとか、そういうことでもありません。
それどころか、何気ない一言が他者を鋭く傷つける様が何度か描かれるし、本当はそばにいるべき人が逃げ出すし、主人公がはっきり間違ったことをしてしまう様も描かれ、しかしそれ自体が、たしかに人生にはそういうこともあるかもしれないというリアルさを醸し出します。
人間関係がそもそも持っているスリリングさを描き出しているといえばいいでしょうか。
しかしそれがほのかな希望につながるように描いています。
それと、手話をつかう聾者役を、きちんと当事者キャスティングしたところも高く評価できるところです(なぜ聾者は聾者の俳優がやらないとダメかはパンフレットを見てください。手話は言語であって、ジェスチャーではありません)。
今年ベスト級の一本となりました。
寛容こそ"ラブライフ"ということかな
ぷいっと出ていった朴に対する妙子。朴を追いかけてクルマから降りた妙子に対する二郎。自分の家にいる朴に対する二郎。朴を自分の家に入れた妙子に対する二郎。自分を捨てた二郎に対する山崎さん。暴言吐く義父に対する妙子。義父の暴言を見過ごす二郎に対する妙子。騙して金を借りた朴に対する韓国での妙子。朴に対する韓国の息子。…挙げていけばきりがないくらいにみんな寛容でした(寛容?我慢いや痩せ我慢?我慢と寛容は違うよね)。朴さんはさすがに人の寛容に甘えすぎだろ。まあ、こんなに皆が寛容でいられたら楽だろうな。楽に生きていくためには寛容が正解です。でももやもやは残るだろうな。この先何かが切っ掛けで引き金になって壊れないか心配にもなります。
寛容こそ"ラブライフ"てことかな(皮肉ではありません。そうありたい、心からそうあって欲しいと思うから)。
追記)もちろん、妙子も二郎もまた皆が苦しんでいるのはわかる。これで苦しまないわけないもの。でもね、自分の生きてきた過去を思い返すとこれで修羅場に発展しないのはすごいなと思うわけです。裏を返すと、この映画のなかで見られる暴言やら行動やらは極力控えます。やりません。しかしそれが実際に行われてしまったときにはこの映画のようにはならなかった、あるいはならないだろうなあと思うわけです。また、仮に一時的に元の鞘に収まったとしても、どうなんだろうと思うわけです。
初っ端から
辛い描写がぶち込まれて、きつかったけれど後半は、不実でもみっともなくても生きようとする所が何かユーモラスに感じられた。役者たちには、ターニングポイントになりそうと思いました。木村文乃さんはどことなくエロい。
悲劇であり喜劇でもある。
深田作品は、自主制作作品も含め、ほとんど観ている。
その中で、本作は1番観やすく、好きな作品! 『淵に立つ』や『よこがお』は素晴らしかったが、もう一度観るには、重かった…。しかし、『LOVE LIFE』はまたすぐ観たい映画。
我らが住む日常の中で、
どんなに悲しいことがあっても、
お腹は空くし、
「フッ」って笑ってしまうことは起こる。
ただ、それだけの事をきちんと
映画として、映画文学として、みせくれている深田監督はすごい。
観終わった後、めずらしく気軽な深田作品だった。
最初、予告編でLOVE LIFEを聴いた時、「さびしい曲だな」と感じたが、いまでは口ずさんでいる。
音楽のチカラはすごい。
市役所で、元夫・パクさんと妙子さんが、手話と目(表情)で会話して、現夫・二郎さんがポツンとしている描写好きだったな、しかも、二郎さんは目を見て会話しないから、そういう設定の伏線だったとは!
鳥肌たったぜ。
また、この作品の俳優陣は表情でも演技しているから、耳が聴こえない方、日本語がわからない方にも、伝わりやすい映画なんだなぁ、と。
そして、現夫の二郎さんはクズ男ですよ。
『本気のしるし《劇場版》』の辻くんを超えるね(笑)、個人的には。
主題歌が矢野顕子さん、タイトルが『LOVE LIFE』、ポスターのエモい感じ、どれも優しい感じがするけど、とてもエッジがあり、化ける映画だ。
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