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大正時代を舞台にした綾瀬はるかのアクション活劇、相棒に長谷川博己と聞けば、それだけでわくわくしてしまう。
期待通り、シックでかっこいい映像と美しく躍動する綾瀬はるか、スリーピースにカラーピンで襟元を決め煙草をくゆらせる渋い長谷川博己を拝むことができた。
他に石橋蓮司、豊川悦司など、キャスティングは私好み。清水尋也の怪しげな雰囲気がよかった。彼はコディ・スミット=マクフィーに似ている。
物語自体は、荒唐無稽なものだ。原作がもっと深いテーマを感じさせるものだったなら申し訳ないが、今回は原作を読んでいないので、純粋に映画だけの評価である。
でも、例えば「ミッション・インポッシブル」シリーズなど、荒唐無稽展開でも娯楽映画として優れている作品はたくさんある。荒唐無稽イコール低評価とは全く思わない。要はそのことが気にならないほど楽しめたり、非現実的だからこその躍動感があったり、惹きつけられる部分があればそれでいいのだ。
本作に荒唐無稽さを凌駕する引力があったかというと……あれれ? キャスティングと舞台設定は大好物だが、引き込まれる感触があまりない。眠くはならなかったが……
振り返れば、全体的に話のテンポがあまりよくなかった気がする。メインキャストの細見が最初から死んでいるので、彼を描写するために回想シーンが長めになったことなどが原因だろうか。
また、綾瀬はるかのアクションを見たいのに、肝心なアクションの場面が暗かったり(マンホールから出てきた後とか)、霧で見づらかったりして、視界良好な状態で没頭できなかったのが気になった。アクション自体も、綾瀬はるかの身体能力のすごさは垣間見られるが、何だか迫力に欠ける。撮り方の問題かもしれない。
それと、細見が陸軍の資金を投資に流用していたことについて、要は平和的な方法で日本が発展していくためだとか(だっけ?)いう説明があり、反戦的な主張が強調されていたが、その遺志を守ろうとする百合がもうバンバン人を殺して……いや、百合自身は急所を外した攻撃しかしないという体裁で(それでも後半はマンホールで手榴弾を使ったり津山を殺したりしていたが)、取り巻きがバンバン人を殺している。そして最後はこれからも闘うぜエンドだったので、反戦の主張がなんだか薄っぺらなものになってしまった。細見の遺志に説得力を持たせたいなら、闘いを終えた百合は平和な日常に戻ったほうがよい。
消える鳥の絵をボディペイントしていたお婆さんは何だったのだろう?原作には説明があるのかもしれないが、映画本編では謎解きがなかった。パンフレットにも書いていない。
(パンフレットといえば、正誤表が付いてきたのだが、誤字が多くてびっくりした。それも、製作を海外に頼んだのかな? というような間違いばかりだ。さっと読んだだけで正誤表にない間違いを新たに見つけてしまった。せっかくスタイリッシュな装丁で、お値段も1,100円と通常よりお高いのに興醒めで残念)
公開日朝のネット記事で、サプライズゲストで鈴木亮平が出ると知って楽しみにしていたのだが、最後の最後に暗殺者Xとして文字通り一瞬だけ出てきた。台詞もなく大きめの黒い眼帯をしていて、前情報なしに見たら鈴木亮平とは分からなかっただろう。ファンとしては、もうちょっとしっかり見たかった。贅沢なキャスティングとも鈴木亮平の無駄遣いとも言える。
製作側の、ビジュアルと言葉(というか単語)へのこだわりはビシビシ伝わってきた。蜂蜜氷糖梨とかガリバルディービスケットって言ってみたいよね? 海軍庁舎に向かう前に真っ白なドレスに着替えた上で、それが血染めになると映えるよね? 佐藤二朗の狂気の顔に返り血をかけてみたいよね?
これらが生きるかどうかは物語の引力次第で、引力がないとそのベタなセンスが浮いて見えてしまう。
何だかきつめの感想になってしまったが、大正時代の街並みや人々の服装、豪華なキャスティングにフォーカスして見るととても楽しめるのではないだろうか。