モリコーネ 映画が恋した音楽家
劇場公開日:2023年1月13日
解説
「ニュー・シネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレ監督が、師であり友でもある映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネに迫ったドキュメンタリー。
1961年のデビュー以来、500作品以上もの映画やテレビの音楽を手がけ、2020年7月に惜しまれながらこの世を去ったモリコーネ。「ニュー・シネマ・パラダイス」「荒野の用心棒」「アンタッチャブル」など45作品にも及ぶ傑作から選ばれた名場面や、最高の音響技術で再現されたワールドコンサートツアーの演奏、クエンティン・タランティーノ、クリント・イーストウッド、ウォン・カーウァイ、オリバー・ストーンら錚々たる顔ぶれの監督・プロデューサー・音楽家へのインタビューを通して、モリコーネがいかにして偉業を成し遂げたのかを解き明かしていく。
さらに、モリコーネのプライベートライフやコメント、初公開のアーカイブ映像などにより、モリコーネのチャーミングな人間性にも迫る。
2021年製作/157分/G/イタリア
原題:Ennio
配給:ギャガ
オフィシャルサイト スタッフ・キャスト
全てのスタッフ・キャストを見る
カメラの前でモリコーネが語る。著名人の言葉が挿入される。映画の名場面とその音楽が流れるーーーこれ以上の何が要るというのか。モリコーネがいざ音楽遍歴や、映画界に進出したきっかけ、はたまた各作品にまつわる逸話を丁寧に語り出すと、もはや誰もが時の経過を忘れてのめり込んでしまうはず。長きにわたるキャリアにおいて巨匠は、いかなる創造的感性を働かせながら作品にふさわしい音を探求し続けたのか。一つ一つの言葉に驚きと発見が詰まっているし、これを観るとすぐさま各映画を音楽的な側面から再鑑賞・再検証したくなるに違いない。個人的には、モリコーネが『海の上のピアニスト』に添えた言葉は実に興味深かったし、歌声を取り入れた『ミッション』の壮大な音作りの裏話に触れられたのも貴重だった。彼が亡くなっても芸術は不滅だ。このドキュメンタリーは、私達がこの先、彼の遺した名曲と歩み続ける上で欠かせない教科書的な一作となるだろう。
映像に添えた音楽は実に500曲。映画音楽の父と呼んで差し支えないエンニオ・モリコーネの生い立ちから創作活動までを紐解く人物ドキュメンタリーは、世代を超えて、映画マニアたちの個人史を辿る時間でもある。
数々のマカロニウエスタン、『ニューシネマ・パラダイス』、『アンタッチャブル』あたりがすぐ思い浮かぶが、やっとオスカーを手にした『ヘイトフル・エイト』は代表作と呼ぶのに少し抵抗がある。アカデミー賞の気まぐれをもろに被った巨匠の1人が、モリコーネだったと思う。
個人的な好みを言わせていただければ、独特のギターのリフと口笛とコヨーテの鳴き声をフィーチャーした『続・夕陽のガンマン』と、イタリアン・ツイストを炸裂させた『太陽の下の18歳』がベストワークかと。その攻めっぷりにこそ、モリコーネ音楽の真髄を感じるから。このドキュメンタリーを機会に、モリコーネとイタリア映画の1960年代にトリップしてみてはいかがだろうか。
「ニュー・シネマ・パラダイス」の、あの名曲は、たとえ作品を知らなくても、誰でも聞いたことのある曲でしょう。
「この曲を作ったのは誰か?」と問われると、「エンニオ・モリコーネ」という名前が出てくる人は非常に少ない現実があります。
ただ、「モリコーネ」の凄さは、そんな次元ではない、ということを、この映画で体感できるのです!
「ニュー・シネマ・パラダイス」の曲などは単なる1例にしか過ぎず、映画音楽の骨格を生み出したのが「モリコーネ」なのです。文字通り「映画音楽の生みの親」と言っても大げさではないことが本作を見ればわかるでしょう。
なぜ「バッハ」や「ベートーヴェン」は誰でも知っているのに「モリコーネ」は知られていないのか、という疑問を抱くまでに凄いのです!
別の言い方をすると、本作でないと「モリコーネ」の偉大さや偉業を体感しにくいと思います。
本作を作ったのは、まさに「ニュー・シネマ・パラダイス」でタッグを組んだジュゼッペ・トルナトーレ監督です。この作品用に撮った「モリコーネ」本人へのインタビューを中心に構成し、クリント・イーストウッド、クエンティン・タランティーノなどの映画業界のトップランナーがタイミングよくコメントや解説をしてくれます。
ただ、冒頭のインタビューシーンは、回顧録すぎて、正直に言うと不安もありました。しかし、すぐに「映画」関連へと移っていき、見たことがない昔の映画でも、「モリコーネ」の音楽への取り組み方などが垣間見え、いかに才能の塊であったのかがわかるようになっています。
500作品を超える映画やテレビの音楽を手がけ、2020年7月に91才の長寿を全うし、本作が結果的に遺作となりました。
あまりに壮大で興味深い物語で、157分が短く意義深く感じられる凄い作品でした。
こんなに愉しい話はいつ以来かなぁ。
本当に素敵な時間でした。
この方がいなかったら、映画はここまで発展してかったのでしょう。