君は行く先を知らない

劇場公開日:

君は行く先を知らない

解説

「白い風船」「人生タクシー」などで知られるイランの巨匠ジャファル・パナヒの長男パナー・パナヒの長編監督デビュー作。監督自身や家族、友人たちに起きた実際の出来事に着想を得た物語で、イランの荒野を車で旅する家族の姿を描いたロードムービー。

荒涼としたイランの大地を車で旅している4人家族。ケガをした脚にギプスをして後部座席に座る父は、悪態をつきながら、はしゃぐ幼い次男の相手をしている。助手席に座る母はカーステレオから流れる古い歌謡曲に体を揺らし、成人したばかりの長男は運転席で無言でハンドルを握っている。次男が隠し持ってきた携帯電話を道端に捨て去ったり、転倒した自転車レースの選手を乗せたり、余命わずかなペットの犬の世話をしたり、さまざまなことが起こりながらも、一家はやがてトルコ国境近くの高原に到着する。そこで父と母は羊飼いや仮面をつけた男と交渉し、長男は旅人として村に迎えられる。旅の目的を知らない次男は変わらず無邪気にはしゃいでいるが……。

監督のパナー・パナヒはテヘラン芸術大学で映画制作を学び、父の現場で助監督や編集なども経験。本作で長編監督デビューを果たし、2021年・第74回カンヌ国際映画祭監督週間に出品。日本でも同年の第22回東京フィルメックスでコンペティション部門に出品された(映画祭上映時タイトル「砂利道」)。

2021年製作/93分/G/イラン
原題または英題:Hit the Road
配給:フラッグ
劇場公開日:2023年8月25日

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(C)JP Film Production, 2021

映画レビュー

4.0大使館による本作の後援が、イラン自由化への旅の一歩になれば

2023年8月21日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

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高森 郁哉

3.0深い深い、もっと深い家族愛の物語

2024年12月10日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

<映画のことば>
「お兄ちゃんは、どこ?」
「妙だな。さては、あいつを食う計画に気づいたな。」
「お兄ちゃんを食べるの?」
「ゆうべ決めた。」
「だけど、苦いと思うよ。」
「首の肉は旨いぞ。バーベキューなら最高だ。」
「きっと、甘くて美味しいわ。」

まだ20歳そこそこの長男・ファリードは、外国で、束縛の及ばない自由な(人間らしい?)生き方をさせてやりたい、との思いから、夫婦は、長男を「旅人」として送り出すため、家屋敷を売り払い、その「旅行」を取り仕切っているエージェントに大金を支払う-。
政治的な情勢の不安定さの故でしょうか。宗教的な戒律の厳しさの故でしょうか(母は次男坊・ホスロが大地に口づけしようとするのを、何度も制止します)。
はたまた、その両方の故でしょうか。

借り物だという三菱自動車製のパジェロ(?)を運転していた長男が、旅の途上では終始一貫して寡黙だったことは、その間の事情を物語るものと、評論子は理解しました。

旅の途中の景観が美しいだけに、長男のその心情が観客の心にも沁み入るように思われます。

そんな、ある意味では「追い詰められた」状況の中でも、上掲の映画のことばのような軽口を交わせるのは、やはり家族の間が家族愛で満ちみちていればこそ、なのだと思うと、本作の本当の意味合いにも、思いが到るようにも思います。

◯家族の一員であるかのように、家族の誰からも慕われていた愛犬・ジェニーの死。
◯ひとつの目的を秘め、家族を乗せてひた走る一台のクルマ-。

まるで、イラン版の『リトル・ミス・サンシャイン』のようだというのは、本作のトレーラーにあった本作の評ですけれども。
そのゴールがミスコンか、あるいは自由な生活かの違いはあったとしても、そういう評に少しの違和感のない佳作だったと思います。

(追記)
別作品『リトル・ミス・サンシャイン』では、例の黄色いワーゲンを運転していたのは、お父さん。
(推測ですが、同作では帰路もお父さんが一人で運転していたはず。)

これに対して、本作では、往路は(国外脱出を図る長男の)ファリードが運転し、帰路は(家族のファリードと別れた)母親が運転する。

家族としての一体性を取り戻した上掲の別作品とは対照的に、家族の分断を象徴するのに、これ以上の描写はなかったと思います。

(追記)
<映画のことば>
今後はゴキブリを殺しても、トイレには流すな。
両親が希望を託して、外の世界に送り出したはずだから。

その場で木からもいだ野生のリンゴを食べながら(長男がエージェントと落ち合うまでの)束の間の父子の惜別-。
その時間は、父にとっても、息子にとっても、とてもとても、とても重たい時間だったことは、疑いようもありません。

そして、そんな重苦しさの中でも、父親が息子に託せる思いやりの言葉として、これ以上のわが子に対する励ましは、他にはちょっと思いつかないのではないかと思います。

(追記)
両親は、長男の出奔を次男坊・ホスロには、ちゃんとは話していないようです。
(そして、それが本作の邦題になっているとも思います。)

長男は遠くで結婚するので、家からはいなくなるとか、別れてからは旅行の途中でオフロードバイクのレースに行ったとか…そんな程度の説明しかしていない様子です。

なぜ、話していないのでしょうか。

まだ幼いホスロから、人を介して隠しごとが当局に露見することをおそれてのことでしょうか。

それとも、出奔(密航)しなければ自由がないこの国の現実を、まだ幼い次男坊にあえて知らせることが憚(はばか)られたからでしょうか。

本作はその事情を詳(つま)びらかには描いていませんが、この家族の家族愛の深さに思いを致すと、両親の本意は後者にあったのではないかと、評論子は思います。

往路を運転していた長男・ファリドの胸中には、自由のためには家族を捨てなければならないこの国の矛盾が去来していたことでしょう。

そう考えると、彼の無表情が(余計なセリフが能弁に語られるより、もっともっと以上に)かえって胸に迫る思いがします。

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talkie

3.5国を出るということ

2024年11月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

海に囲まれた国出身だとなかなか思いつかない。

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mikyo

3.0良いタイトルだと思います

2024年10月27日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

単純

知的

平和な日本に暮らしている私にはなかなか想像のできない、イランで起こっていることや、家族の在り方が少し分かったような気がします。

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YOTSUBA

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