死刑にいたる病のレビュー・感想・評価
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岡田健史、イイ
空恐ろしい作品
榛村大和は「共感」してほしい……のだろうか?
ラストのシーンがあまりにも衝撃的かつ筧井雅也の推理のはるか上にあるであろう真実の奥深さを感じざるを得ない。
これが見終わった直後の印象だ。
榛村の得意芸である「決めさせる」ことは、もうそれ以上選択肢をなくさせることと同じだ。
まるで拷問のときに「右手が先がいいかそれとも左足か?」と聞くようなものだ。
実際にそうしていたのかもしれない。
加えて榛村は裁判時においても聞かれていないことなど答えない。
「爪」は彼にとって何だったのだろうか?
冒頭の映像で彼がばらまいていたのは花びらだと思っていたのが「まさか、まさか」だった。
雅也はそれを母の爪ではないかと、つまり母との思い出、母への愛やゆがんだ執着が爪だったのではないかと推理したが、「僕が小さい時は母の爪は綺麗だったね」とだけ言って去った。
理由はそこにはないのだろうか、それとも…。
拘置所で出会った髪の長い男。彼もまた長い期間にわたって榛村に支配され続けた人物だ。
「私をわかって欲しい」
これが榛村の一番の願いなのか?
彼自身がしたこと。それには理由が存在する。その真実をわかって欲しいがために雅也を使って事件を再調査させ、榛村自身の「思い」をわかって欲しかったのだろうか?
雅也はよくやった。ほぼ榛村の思いまでたどり着いた。しかし結局すべてを理解したわけではなかったのか?
理解したと思っていた雅也は、恋人になった狩野明美のバッグの中から榛村からの手紙を発見し愕然となる。
そもそも明美も榛村の「元獲物」だったのだ。雅也は「中学校時代と雰囲気変わったよね」と言ったのは、明美は榛村と接触しながら変わったことを意味する。
元獲物に手当たり次第に手紙を書き続ける榛村を想像するだけで気持ちが悪くなる。
他にも多数いそうだ。
明美は榛村の指示に従い雅也にしつこく接触したのだろう。
雅也の性格も熟知しているし、明美からの報告も受けていた。
何よりも賞賛すべき点は、
雅也が調査に動き出す動機、そして彼の父は誰なのかに関する部分で、そのシーンは固唾を飲んでしまうほど圧巻だった。物語に引き込まれてしまう。そこに仕組んである金田と明美のふたつの平行線。見事でしかない。
さて、
殺された23人の高校生と1人の成人女性 いったい誰が逃げ出せたのだろう?
24人目は誰だったのか? ここは追及されていないが、榛村の証言では「慢心」が原因とされている。
つまり逃げ出してしまったことに気づいた榛村は、燻製小屋を放火し、爪を川に流したことになる。そうして警察が来るのを待ったのだろう。睡眠薬が切れたことが原因としている。
さらに、
殺された被害者と殺されなかった元獲物の差はどこにあるのだろう?
榛村はそれを年齢によって区分していたというが、雅也は自分もその年齢になったら殺害するつもりだったと反論した。
しかし、おそらくそれは「頭がよかったか否か」だったのではないだろうか? そこに加える要素はいくつかあるにせよ、基本的に雅也も、金山兄妹も、そして明美にもその部分の共通性がある。
従順で賢く容姿も悪くない被害者。賢い部分が欠如した「元獲物」
逆に元獲物には、生きながら長期間にわたって苦しめ続けることが、榛村の第2の快楽だったのではないだろうか?
それが逮捕されたことで唯一の楽しみになった。今となっては限定されてしまった第2の快楽、これこそが手紙を使って元獲物たちを使って遊ぶ理由だと思う。
最も大きな被害者は金山一樹。今でも弟を彫刻刀で傷つけたことに苦しんでいる。そうであれば、彼は根津カオルを殺してなどいない。
彼が証言台に立った理由は、榛村によってそれしか選択肢を与えられなかったからだろう。根津カオルが24人の犠牲者のうちの何番目なのかはわからないが、その間に榛村は呪いのように金山に選択肢のない選択をさせ続けたのだろう。そうすることで第2の快楽を拘置所に居ながら楽しむことができるのだ。
しかし、
明美への苦しみという榛村の快楽はどこにあったのだろう?
いずれ雅也は明美が榛村と接見していることに気づく。「話してはいけない」とは言われていない。彼女とのことも榛村によって仕組まれたことに気づく。そしては雅也は彼女に褪めてしまう。これが狙いだったのかもしれない。
こうして人を操って陥れることこそが、榛村の快楽だ。
雅也は根津を殺したのは榛村だと最終的に推理した。榛村の態度を見てそう確信した。
頭がよくないはずの雅也の推理は、本当は的中していたのかもしれない。榛村は雅也との接見を切り上げようとする。「爪」についてもつぶやくだけだが、それも当たっていたのではないだろうか?
そして彼とはもう会わないのかもしれない。「馬鹿に俺の心理がわかるはずはない」と高を括っていたからだ。
これが榛村がしてしまった2度目の読み間違いだ。
もしそこまで雅也が気づいたとき、雅也はきっと榛村に操られていた明美を救いたいと思うはずだ。それが彼が発見することになる新しい選択肢となる。榛村に対し一矢報いることになるはずだ。
かなり奥深く読み応えのある作品だった。
空恐ろしく、面白かった。
色々な伏線が回収される
“みんな彼を好きになる”
マインドコントロール
水上恒司さんが好きでこの映画を見てみましたが、拷問のシーンに気分が悪くなり見なければ良かったかとも思いました。
誰かとこの映画を見ようとしている人は相手を選ぶかもしれません。気分が悪く吐き気も出ました。
物語が進むにつれて、それぞれの心理描写に引き込まれました。悪い環境にいるものほど優しくされるとその人を信奉し対象者の洗脳が可能になる。
看守の態度の変化や村人の言動からも人の心に入って行く榛村のマインドコントロールの恐ろしさを感じました。
自分の父かもしれない、凶悪犯罪者のDNAが受け継がれているかもしれないと思い込み殺人を犯そうと気が狂ってしまった様子も、よく心の葛藤が描かれていました。
最後の最後はビックリしました。原作ではどんな風に描かれているのか、細かなストーリーが気になる映画でした。
衝撃のラスト
犯人はサイコな人物で完全に頭がイカれている。ラストまでサイコなシーンのダメ押しがあって、 これで監督や脚本家の趣味の悪さからやっと解放されて ほっとした。
動画配信で映画「死刑にいたる病」を見た。
2022年製作/128分/PG12/日本
配給:クロックワークス
劇場公開日:2022年5月6日
阿部サダヲ
水上恒司
岩田剛典
中山美穂
予備知識無しで見はじめる。
知っているのは阿部サダヲ主演ということだけ。
映画が始まってからわずか9分後にとてもキツい描写がある。
「うわあ、こんな映画だったのか」
見たことを少し後悔するが、我慢してそのまま見る。
これは猟奇快楽殺人、しかも被害者は24人という
とんでもない殺人鬼の話だった。
あとで白石和彌監督の作品だと知った。
白石和彌監督と言えば
「孤狼の血」「彼女がその名を知らない鳥たち」
「日本で一番悪い奴ら」「凶悪」など
犯罪に関する作品ばかりだが、これもそうだった。
劇中で何度も残酷で眼を背けたくなるようなシーンがある。
登場人物はエキセントリックな人ばかりで、
榛村(阿部サダヲ)、雅也(岡田健史)、雅也の母親(中山美穂)、
皆どこかで繋がりがある。
そんなことあるか?
と突っ込みたくなるが、
これはお芝居なのでしょうがない。
犯人(阿部サダヲ)はサイコな人物で完全に頭がイカれている。
ラストのラストまでサイコなシーンのダメ押しがあって、
これで監督や脚本家の趣味の悪さからやっと解放されて
ほっとした。
見応えはあったが、2度と見たくない映画だと思った。
満足度は5点満点で3点☆☆☆です。
後半の続きは原作では明かされてるが、映画では明かされず。 原作の映...
阿部サダヲのサイキックな眼差しに吸い寄せられる
「孤狼の血」の白石和彌監督お得意のスリラー作品。阿部サダヲ演じる史上最悪の連続殺人鬼の鳥肌が立つほど異様な生きざまがスリリングに描かれていて、割と現実でもありそうな印象の強い映画でした。特に、阿部サダヲのサイコパスな演技がすごくて、あれほどの怪演を見せられる彼の表現力に脱帽です。
それにしても、あの瞳は何なのでしょう。目の色彩は完全に失われ、見れば見るほど引き込まれてしまいます。本当のサイコパスもああいった目をしているのでしょうか...。拘置所に身を置く連続殺人鬼・榛村と、彼から手紙を受け取って事件を調べ始める大学生・雅也との面会のやり取りは静かで淡々としていますが、それすらも異様な光景として目に映ってしまいます。作品の雰囲気として、そういった部分を際立たせているのでしょう。そして、事件の真相を追えば追うほど、一度入ったら抜け出せない沼へと誘われてしまう、スリリングな展開は僕はすごく好きです。目を覆いたくなるけど、作品そのものがそれを許しません。サイコパスを存分に味わわなければならないような感覚を覚えました。
見るのを少々ためらってしまうけど、何だか見たくなるこういった作品が今後もどんどん増えていって欲しいですね。
阿部の拷問シーンは観るに堪えなかった。 PG12どころではなかった...
死刑にいたる病
原作との相違点はかなりある。特に…
本作の最大の魅力は殺人鬼役を務める阿部サダヲでしょう。
彼の演技はとても凄いです。
この映画の7割ぐらいは彼の演技力に持っていかれています。
ですが、この映画の問題点も阿部サダヲにあります。なぜなら原作では殺人鬼は超絶なイケメン設定だったからです。
原作では超絶なイケメンだったからこそ、誰も警戒せず、被害者さえ心を許し、惹かれ、24人も殺害できたという設定です。
なので映画版の阿部サダヲさんでは普通に怪しい人間ですし、速攻で逮捕されそうにしか見えません。
…この映画を見た方ちょっと想像してください。もしこの映画の犯人役が超絶イケメン俳優だったらどうなるか?
…どうです?
全然違う映画になりませんか?主人公たちがどんどん犯人に心を奪われていく様子がすんなり理解できませんか?
…それが原作なのです。全く映画とは異なります。
阿部サダヲさんの演技自体は素晴らしいので文句が言いずらいのですが、原作とは根本的に作り変えられています。
映画の彼が突然、体を触ってきたらちょっと気持ち悪いです。
映画だけ見た方は「なぜこんな怪しい奴が24人も殺して誰も気付かなかったんだ?」と疑問に持ちませんでした?
あれは原作ではあまりにもイケメン過ぎて周りが彼をかばっていた設定があるからなんですよ。
ちなみに映画のラストと原作のラストも全く違います。
個人的には映画のラストが凄く良かった。だけど映画のラストに納得できない方は原作も読んでください。
彼女はああなりませんので…。むしろ彼女は原作では空気です。
その代わり別の人物が…
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