明け方の若者たち

劇場公開日:

明け方の若者たち

解説

WEBライターのカツセマサヒコによる長編小説デビュー作を、「君の膵臓をたべたい」「東京リベンジャーズ」の北村匠海主演で映画化。大都会・東京に生きる若者に訪れた人生最大の恋と、何者にもなれないまま大人になっていくことへの葛藤を描く。明大前で開かれた退屈な飲み会に参加した“僕”は、そこで出会った“彼女”に一瞬で恋をする。世界が“彼女”で満たされる一方で、社会人になった“僕”は、夢見ていた未来とは異なる人生に打ちのめされていく。“僕”が恋に落ちる“彼女”を「カツベン!」の黒島結菜、“僕”の会社の同期で後に親友となる尚人をテレビシリーズ「ウルトラマンタイガ」の井上祐貴が演じる。監督は、自身も俳優として活動するほか「ホリミヤ」「21世紀の女の子」などでもメガホンをとる若手の松本花奈。

2021年製作/116分/R15+/日本
配給:パルコ
劇場公開日:2021年12月31日

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(C)カツセマサヒコ・幻冬舎/「明け方の若者たち」製作委員会

映画レビュー

3.5「街の上で」と「劇場」の中間に位置する“シモキタ・ムービー”

2021年12月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

下北沢映画祭からの依頼で企画された今泉力哉監督による“ご当地映画”「街の上で」(2021)を筆頭に、又吉直樹原作・行定勲監督「劇場」(2020)、少し前には魚喃キリコ原作・冨永昌敬監督「南瓜とマヨネーズ」(2017)など、下北沢を舞台に若者たちを描く映画が近年増えている。もっとも本作「明け方の若者たち」の冒頭は明大前だし、途中で高円寺も登場するので、下北沢限定というわけではないのだが、特に印象的なロケーションとして使われているという意味で大雑把に“シモキタ・ムービー”とくくれるのではなかろうか。“サブカルの街”下北沢で、音楽や演劇などの夢を追う(そして往々にして挫折する)若者たちの生きざまに恋愛模様をからめて描くことが、定番化しつつあるのかもしれない。また同時多発的に同じロケーションの映画が作られることは、ある作品の登場人物が別の作品の人物と道ですれ違っていたりして……という妄想を促したりもする。 本作で北村匠海が演じる“僕”と、黒島結菜が扮する“彼女”の関係性は、「街の上で」の回遊するような軽やかさと、「劇場」の突き詰めた重さの中間あたりだろうか。“僕”と“彼女”の恋愛にはある秘密があり、その事実は後半になってから回想シーンで明かされるのだが、この構成は巧みでもあり、ずるいとも感じた。その事実ゆえに二人が逡巡し葛藤したであろう内面を、あまりにもあっさりと、ある種“おしゃれな雰囲気”で流している気がするのだ。この二人の恋愛を肯定的に受け止められるか、そうでないかによって評価も大きく変わるだろう。 松本花奈監督は若干23歳ながらそつなく、手堅くまとめすぎている気もする。オリジナル脚本で撮った作品もいつか観てみたい。 個人的な経験で恐縮だが、二十代から三十前後に下北沢と高円寺に住んでいたことがあり、朝まで仲間と飲み明かす感覚も痛いほどわかる。「街の上で」の評で書いたことだが、かつて当たり前にできていたささやかな楽しみが、昨今はコロナ禍のせいでハードルが上がってしまっていて、今の若い世代は少し気の毒だなとも思う。

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高森 郁哉

5.0これは賛否分かれるな(笑)。

2024年9月17日
スマートフォンから投稿
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愛梨

3.5明け方までハイボールを飲みたくなる映画

2024年6月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

路地裏で手を繋ぐシーンが最高。あの引きの画角が良い。 どんでん返しというか、なんと言うか、 斬新な展開に驚き。 こんなはずじゃなかった。この仕事向いてない。 社会人として共感できるところがおおい。 それでも、誰かと朝まで酒を飲んだり、語り合ったりしながら乗り越えていく。 過去と向き合うことは難しい。それでも生きていく。 周りの人が良い人達ばかりで救われる。

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ABCD

4.52つの作品がある意味がある

2024年5月26日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

毎回何の予備知識もなく映画を見ているので、迂闊にもスピンオフ(ある夜、彼女は明け方を想う)の方から見てしまったが、この作品も等身大で嘘のないいい物語だった。 この作品の大どんでん返しが、彼女からの返信がない理由だ。 しかし同時に、クジラ公園で話したときからそれは彼に伝えられていた。 画像では、外すことのなかった結婚指輪をした左手は抜かれていない。 この作品もまた一人称で作られていて、名前のない主人公の彼の見たことしか描かれていない。 そしてこの作品で描かれている些細な偶然は、スピンオフで明らかになる。 彼ら二人は、すれ違いながらもお互いを思い続けている。 明け方のクジラ公園のベンチに置かれていた2缶のハイボール。携帯を店に忘れたしぐさがあの時の彼女を思い出させ思わず笑ってしまう主人公。 嘘のなかった二人の気持ち。 ただ、「彼女は既婚者で、一度作った幸せを壊してほしくなくて、たまに会ってくれるだけでよくて、浮気も不倫もよくわからなくて、そんなことどうでもよくて、意味わかんなくて、でも誰も許してくれない… 周りにどう思われてもいい…」 夢が壊れてしまう演劇は、二人も、仕事も、ほかの誰かの人生も暗示していた。 何もかもが思い通りにならない人生。 「渋谷をジャックしようぜ」も、 「この機会に、めっちゃいい男になろうぜ」 という言葉も、 どこか嘘っぽいけど、それを信じようとする若さがある。 「彼」は、人生で初めて本気になったのが「彼女」だった。 初めからわかっていながら、どうしようもなくなっていた。 にもかかわらず何もできない。体調不良でしばらく会社を休む以外何もできない。無力感。行き場のない怒り。 彼の頭の中に「魔法みたいな時間だったな」と過去形で呟いた彼女の言葉がこだましていたのかもしれない。そして決して外そうとしなかった結婚指輪。 「これ以上立ち入ってはならない」 それが本当に彼女の気持ちなのか、それとも「常識」を持ち出して自分を規制しているだけなのか? きっと彼は自問自答を繰り返したのだろう。 動けば、誰かが傷ついてしまう。 そして、何もしないという選択。同期たちの結婚、転職… 未だ彼女なんか作れそうにない「彼」 彼の引っ越しの手伝いに来た彼女と同期。朝まで飲み明かす幸せ。思いっきり楽しむ若者たち。自分らしいふるまい。自由で自然で、嘘がなく、そこには「明日」などという果てしなく遠い未知な存在などない「明け方の若者たち」の姿があった。 ただ、彼が振り返ってみれば、その時も、旅行の時も、クジラ公園のときも、いつももしかしたら「彼女」は、きっとその日がやってくるという「明け方」が来ないでほしいと思っていたのかもしれない。 来てほしくない現実。 彼は明け方のクジラ公園に佇み、いつも彼女はそんな明け方が来ないことをひたすら願っていたのではないかと気づいたのだろう。 どうにもできないこともある。この作品が伝えている人間模様のひとつだ。それを押し殺しながら生きて、やがてぽつんと彼女の考えていたことに気づく。苦しみの片方は彼女が背負っていたのだ。 そう思えたとき、彼にはクジラ公園での明け方がすがすがしく感じられたのだろう。 本当にいい作品だった。

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