アウトポスト

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解説

2009年アフガニスタンで圧倒的多数の敵兵に囲まれた米軍基地の兵士たちの実話を、スコット・イーストウッド、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、オーランド・ブルームらの共演で映画化したミリタリーアクション。09年10月3日、アフガニスタン北東部の山奥に置かれた米軍のキーティング前哨基地で、300人以上のタリバン戦闘員に対し、約50人の米兵が立ち向かった「カムデシュの戦い」を映画化した。アフガニスタン北東部に位置するキーティング前哨基地は、米軍の補給経路を維持するための重要な拠点とされていたが、四方を険しい山に囲まれた谷底に位置しており、敵に包囲されれば格好の的になってしまうという弱点があった。連日のようにタリバン兵から銃弾が撃ち込まれ、そのたびに誰かが命を落としていくという過酷な環境の中で、同基地に派遣されてきたロメシャ二等軍曹らは、「いつ圧倒的多数の敵に囲まれてしまうか」という不安を抱きながら任務に就いていた。そしてついに、その恐れていた事態が現実のものとなり、タリバン兵の総攻撃が開始される。監督は「ザ・コンテンダー」のロッド・ルーリー。

2019年製作/123分/G/アメリカ
原題または英題:The Outpost
配給:クロックワークス
劇場公開日:2021年3月12日

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(C)2020 OUTPOST PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

映画レビュー

3.0アメリカ人向けの描写が詰まった映画

2021年3月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 最初は、どうしてそんなところに基地作るの?と思ってしまった。後で少し調べてみると、脆く急峻な岩山の尾根は駐留に不向きで、一等地には現地の住民が住んでいるからああいう場所に基地を設営するしかなかったようだ。
 前振りテロップが投げ掛けた「実話に基づく」という言葉が、見ているうちにどんどん重くなる。
 いつ死んでもおかしくない状況は戦場の常とは思うが、舞台のキーティング基地は視覚的にもそれがあからさまなので、どんどん兵士が傷つき死んでゆくのを見ていても悲しさやつらさより虚しい気持ちの方が強かった。そりゃ死ぬよ、という。

 そんな蟻地獄のような基地においても隙あらばちょっとシモなアメリカンジョークが飛び交い、仲間同士の軽い小競り合いがあったり、次々代わってゆく上官の人柄に時に不信感を抱いたりする。微妙に統率の取れていない様にこちらの不安感が少し上積みされる。
 前半は何か大きな物語の展開を追うというより、そんな仲間内のやり取りの様子と唐突なタリバンの攻撃の積み重ね、後半はタリバンの総攻撃を受けての激しく生々しい、長時間の戦闘。囲まれた斜面のあちこちから雨のような銃撃を受ける恐怖は映画館ならではの臨場感だ。

 エンドロールの後に、モデルになった兵士たちのインタビューがしっかり尺を取って流された。本編では描写の少なかった彼らの素直な恐怖心が伝わって来る。クライマックスのひとつと言ってよいインパクトだ。
 インタビューを受けた兵士が、本編に本人役で出たと言っていて本当に驚いた。メンタル大丈夫なのだろうか。アメリカだなあ……。

 戦場の死の大半は虚しいと思ったものの、反戦映画を目指した作品とは思えなかったし、かといって兵士の勇ましさを讃える気分にも何故かなれない。アフガニスタン戦争が今も続いていることを思うと、戦場アクションと割り切るのもためらわれた。
 タリバン側の描かれ方が類型的で人間味がなく、アメリカ=善がタリバン=悪と戦ったという図式の中で展開したことが、宙ぶらりんな気分の原因かも知れない。
 不適当な表現かも知れないが、何だか昔の西部劇に登場するネイティブアメリカンの描写に近いようにも見えた。戦争が終わっていないから、タリバン側の正義を描くわけにはいかないのだろうが。
 アメリカ人は後半の展開で米軍万歳!となるのかな。

 描き方の良し悪しというより、アメリカ人のために国内向けに作られた映画を観る機会にあずかった、そんな感じだった。

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ニコ

3.5絶望的なvsタリバン戦に身を投じるセレブ2世と3世たち

2021年3月15日
PCから投稿

泣ける

怖い

興奮

四方を山に囲まれた谷底にあるアメリカ軍の前哨基地に、300人以上のタリバン軍が総攻撃を仕掛ける。2009年のアフガニスタンであった実話と聞いて、ちょっと耳を疑う。こんな自ら望んで銃弾の標的になるような、誰が見ても勝ち目のない戦いが本当に存在したとは!?しかし、だからこそ映画になったとも言えるわけで、事実を忠実に再現した戦闘シーンは、兵士個人の視点で銃撃戦を描きながら、それを画期的なロングショットで繋ぐなどして、終始気が抜けない戦争の恐怖を観客の鼻先に突きつけてくる。一瞬の判断で次の行動を決断し、それが即生死を分けることになる兵士たち各々に課せられた運命の残酷に、心を奪われる暇もなく。戦闘の過酷さに於いて、第二次大戦のヨーロッパ戦線を戦った米陸軍空挺隊、人呼んで「バンド・オブ・ ブラザース」(TVシリーズにもなった)を上回ると言われる米軍のvsタリバン戦を描いた本作は、描き尽くされたジャンル映画をさらに一歩前進させたのかも知れない。一方で、これはスコット・イーストウッド(クリント・イーストウッドの息子)、ミロ・ギブソン(メル・ギブソンの息子)、ジェームズ・ジャガー(ミック・ジャガーの息子)、そして、ウィル・アッテンボロー(リチャード・アッテンボローの孫)、スコット・アルダ・コフィ(アラン・アルダの孫)と、名優の子孫たちが俳優としての可能性に挑戦した、"セレブ・サバイハル・ムービー"としての愉しみも少しあることを付け加えておこう。

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清藤秀人

4.0米兵礼賛の面はあるが、戦闘のダイナミックな撮影で新味

2021年3月9日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

怖い

興奮

米同時多発テロ後の対テロ戦争の一環であるアフガニスタン紛争は、2001年に始まって以来現在まで収束せず、米史上最長の戦争になっているという。その中で2009年に起きたアフガン北東部山中の前哨基地(outpost)での戦闘を劇映画化したのが本作だ。

派遣された米兵約50名のうち5人ほどの兵士を重点的に描き、敵から散発的に狙撃される不安な日々、恐怖と葛藤、仲間との絆、そして300人超のタリバン戦闘員に囲まれ絶体絶命の危機で奮い起こす勇気を多視点で描く。この手の実話ベースの戦争映画でありがちな、兵士たちの愛国心と英雄的な行動を強調する傾向はどうしても目につく(エンドロールでは誰々が何々勲章を授与されたという紹介も延々と流れる)。

だがそもそも、四方を山に囲まれたすり鉢の底に相当し、敵からの銃撃や砲撃に圧倒的に不利な場所に基地を作った司令部の判断ミスは問われなかったのかとか、さらに言えばアルカイダを討伐するためにアフガンへ出張って紛争地にした米軍に義はあるのかとか、いろいろ批判的な思いも抱いてしまう。

とはいえ、撮影監督のロレンツォ・セナトーレ(アメコミヒーローからSF、軍事ものまで幅広くアクション系を得意とする人のようだ)とロッド・ルーリー監督が生み出した映像は、手持ちカメラとドローンを巧みに使い分け、引き込まれるような長回しから、ローアングルから滑らかに俯瞰へと移動するショットまで、ダイナミックな戦闘場面のシークエンスで新味を出している。「1917 命をかけた伝令」や「ローン・サバイバー」の映像体験と少し近い印象を持ったが、このスタイルはまだまだ発展の余地があるとも感じた。

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高森 郁哉

5.0虚しさだけが残ります

2024年11月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

2009年アフガニスタンのキーティング前哨基地でのアメリカ兵とタリバンの戦いの実話ベースのミリタリー作品
劇場ではなくテレビで鑑賞なのに、撮影の仕方でその場にいて兵士の後を同じように走っているような臨場感がかなりありました
劇場で観たかったと思いましたが、観終わって虚しさだけが残り明るい気持ちになれず、私はテレビでちょうど良かったかもしれません
そもそも何であんな場所に基地を作ったのか、そこが気になりすぎました
そこに作るしかなかったのはわかりますが、敵から狙われた時対処の仕様のない基地で、いつかあんな事が起こるのは容易に想像できます
普段からアメリカ人らしいジョーク連発だったのは、そうやって常に持っている緊張感を和らげるためだったのかもと思いました
家族に電話している様子が本当に切なかったです
ずっと緊張感のあるストーリー展開でしたが、基地が襲撃されてからラストまでの戦闘シーンがすごく迫力もあり、絶体絶命の危機にさらされ、それでも仲間を救おうとする姿には感動し、いろんな思いでいっぱいになってラストを迎えました
そしてエンドロール中の写真とインタビュー、涙です
登場人物の名前がテロップに出て珍しく思いましたが、終わってそれが必要だったのがわかりました
こういう作品が好きなのに今作は救われるものがなく虚しさけが残りました
無事帰れた人も今度はPTSDと戦わないといけないのかと思えたし
アフガニスタンでいろんなものを開発して、今より豊かな国にする手助けをしようとした事は、アメリカの良い行いなのかもしれないけど、それをアフガニスタンの人達が臨んでなかったら、命を懸けてアフガニスタンに行ったアメリカ軍の人達の命をどう思えばいいのか
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズは今作でも素晴らしい演技でした

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小町