ブータン 山の教室

劇場公開日:

ブータン 山の教室

解説・あらすじ

ヒマラヤ山脈の標高4800メートルにある実在の村ルナナを舞台に、都会から来た若い教師と村の子どもたちの交流を描いたブータン映画。ミュージシャンを夢見る若い教師ウゲンは、ブータンで最も僻地にあるルナナ村の学校へ赴任するよう言い渡される。1週間以上かけてたどり着いた村には、「勉強したい」と先生の到着を心待ちにする子どもたちがいた。ウゲンは電気もトイレットペーパーもない土地での生活に戸惑いながらも、村の人々と過ごすうちに自分の居場所を見いだしていく。本作が初メガホンとなるブータン出身のパオ・チョニン・ドルジ監督が、村人たちのシンプルながらも尊い暮らしを美しい映像で描き、本当の幸せとは何かを問いかける。第94回アカデミーでブータン映画史上初となる国際長編映画賞ノミネートを果たした。

2019年製作/110分/G/ブータン
原題または英題:Lunana: A Yak in the Classroom
配給:ドマ
劇場公開日:2021年4月3日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第94回 アカデミー賞(2022年)

ノミネート

国際長編映画賞  
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映画レビュー

4.0その風土と人々の魅力に癒される。「お坊さまと鉄砲」と合わせてぜひ

2024年12月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

楽しい

幸せ

パオ・チョニン・ドルジ監督の長編第2作「お坊さまと鉄砲」の2024年12月日本公開に合わせて、監督デビュー作となった本作をPrime Videoで鑑賞。両作品とも、ヒマラヤ山脈のふもとにある高地の国、ブータンの風土と人々の純朴な魅力が映像から伝わってきて、憧れと親しみを覚えつつ大いに癒された。

標高4800メートルにある実在の村ルナナでロケを敢行し、演技経験のない村人たちも起用した。その一人、学級委員の生徒を演じたペム・ザム(役名も同じ)については、彼女の家庭事情なども脚本に反映してなるべく自然に演じられるよう工夫したという。高地で紫外線が強いなどの環境も関係しているのか、村人たちの目が澄んで瞳が明るくきらきらした感じが印象的で、特にペム・ザムと村長役の俳優の目の美しさに見入ってしまった。

背景に雄大なヒマラヤの山々、前景に人物を配置したショットに、アスペクト比2.35対1のシネマスコープが見事にはまっている。こういう構図のために存在する画角という気にさえなってくる。劇場の大スクリーンで鑑賞できた方々が羨ましい。

「お坊さまと鉄砲」を楽しめた方で、こちらが未見の場合は配信などでぜひ。「お坊さま~」に比べるとストーリーはシンプルだが、単純だからこそブータンの風土と人々の魅力をしみじみと味わえる利点もある。

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高森 郁哉

4.0A Warm Dose of Reality

2021年3月3日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

Bhutan's 2021 entry to the Academy Awards at first glance appears a documentary. It might as well be--it looks as if the performers were recruited doing whatever it was they were already doing. A big town teacher finishes his work in the mountainy countryside, deciding whether or not to bail to Australia. A balance of beauty between the untouched world and an unseen will to raise living standards.

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Dan Knighton

4.5川口慧海著「チベット旅行記」の世界の一端に触れる

2025年1月6日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

知的

幸せ

「もっと詳しく見たい首都ティンプーからルナナ村への道」
主人公の不安や憂鬱な表情に反して、首都ティンプーからルナナ村への険しい行程に目を奪われた。厳しくも壮大な光景とそこにある自然を畏怖し共存・崇拝してきた現地の人たちの信仰の跡。8日間に及ぶ行程の中で、映画で紹介されているのはごく一部に過ぎない。辿った時代や行程、地域は異なるが、インドからチベットに向かった川口慧海の『チベット旅行記』を思い出した。特に共通する高山地帯に生きる人々のヤク(という動物)に対する愛情、文字だけでは伝わってこなかった肌感覚に近づけた気がした。

「突き刺さった村長の言葉」
主人公が夢が叶ったことを村長に伝えた際に返ってきた言葉、「この国は世界一幸福な国だと言われているが、未来ある若者は幸せを求めて外へ行ってしまう」。この言葉には、ブータン王国の誇る有名すぎる「国民総幸福」の意味を再考を促す視点が暗示されているように感じる。本当にその言葉が国民の総意ならば、僻地の村に赴任することを避ける教師などいないはずだ。国王の言葉を国民が盲目的に信じることは当の国王も本当は望んではいまい。決してこの国の国王夫妻は車窓から見える世界だけで庶民の生活を測るリーダーではない。(西水美恵子著『国を作るという仕事』英治出版(2009年)に詳しい。)

「山の上の教室という邦題には疑問」
タイトルからは僻地での教育現場を舞台・テーマとした映画かと思ってしまうが、実際はブータンの都市部から僻地、さらにはオーストラリアの環境・社会・人間の価値観を扱っている。原題『ルナナ:ヤクが教室に』もピンと来ない。主人公が首都ティンプーから任地のウララ村まで向かう行程はまさに、時の流れに逆行するタイムマシンに乗ったような光景に思えて、思わず笑ってしまった。筆者もネパールに行った時に首都カトマンズから端部まで辿った際の記憶が甦った。そしてオーストラリアは未来の姿として映し出されている。温暖化について理解していないが肌身で感じながら、雪山に住む雪豹の生活圏への悪影響に思いを馳せる案内人の言葉に身をつまされた。それでもより適切な邦題は閃かない。

「タイトルを変えてしまうほど眩しい少女の眼差し」
目を輝かせて先生を待つ村の子供達の代表がポスターの少女だ。決して優秀とは言えない先生を受け入れ、引き返そうとする彼を引き止める子どもたちの教育への強い渇望と先生への無条件の尊敬。先生の元に集う子供たちの表情はポスターやタイトルまでも自分たちに引き寄せてしまうほど眩しいのは認めざるを得ない。

「未来(都市)の人は幸福なのか。」
ギターも教師も特別な存在になってしまうルナナ村とギターも歌手もありふれた存在に過ぎないシドニー。どちらに幸せがあるのか?それに伴う経済的繁栄、教育の高度化、個人の余暇や娯楽の充実とそれに伴う競争や過酷な労働、対照的に人との密接な関わりと過酷な生活環境、多くがトレードオフとなってしまう都市部と農村部の間に生じる価値観の距離はブータン特有の問題ではないだろう。ルナナ村を離れて声高らかにヤクの唄を歌う主人公の心はすでに祖国に戻ったと信じたい。

全文はブログ「地政学への知性」でご覧ください。

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ブログ「地政学への知性」

3.5結局どこの国も似たり寄ったりなのかも

2024年12月9日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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Ray