劇場公開日 2021年1月29日

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ヤクザと家族 The Familyのレビュー・感想・評価

全504件中、1~20件目を表示

4.5煙突の孤立、海の閉塞感

2021年2月6日
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 疾走する冒頭から、「あと2時間したらこの映画が終わってしまう!」という名残惜しさが早くも込み上げる。一瞬も見逃すまいと、ひたすらのめり込んだ。人物の視点そのままにぐらりと揺らいだかと思えば、ふっと鳥のように舞い上がり俯瞰する視点。これまでの藤井監督作品と同様に、ダイナミックで魅せられる。しかも、エンドロールまで熱量が衰えない。主題歌が、しっかりと本編を受け止め、包み込んでいた。
 登場人物すべて、顔つき佇まいが只者ではない。そこに居るだけで説得力があり、物語が動き出す。主人公・山本を熱演した綾野剛で言えば、後半の眉間のシワがすさまじい。やり過ぎではと思いながらも、それは必然と頷かされてしまう。地味ながら深い印象を残すのは、中村演じる北村有起哉。弟分への嫉妬と自分の限界の自覚に揺れながら、枯れゆく組の中に身を置き続ける。突っ走る山本は確かに鮮烈だが、世の大半の人間は、中村のように冴えない存在に留まらざるを得ない。ちょっとした表情や仕草からにじみ出る、小ずるさや愚直さが、我が身に返ってくるようだった。細い身体が、前半は慇懃さや自尊心を醸し出すものの、後半は凄まじいまでに満身創痍を体現している。そしてもう一人、成長した翼を演じた磯村勇斗も出色。ふっと姿を現すだけで、義理人情に微塵も流れない不敵さが、スクリーンいっぱいにピリピリとみなぎっていた。
 個性的な人々と引けを取らない存在感を発揮していたのは、煙をもくもくと上げる煙突と、町の片面に広がる海だ。(舞台となる町の名前にも「煙」が含まれている。)煙は勢いよく吹き上がるが、空を切り裂くのはほんの一瞬。いつかは大気に紛れ、跡形もなく消えてしまう。煙を吐かない煙突は、ぽつりと立つ無用の長物。孤立し、不必要に目立つばかりだ。それは、主人公たちの姿にも重なるようだった。そして、くすんだ海。無限に広がり、開放感を呼び覚ますはずが、彼らが翳り始めると、見えない壁に姿を変える。どこにでも行けるようで、どこにも行けない。じわじわと追い詰められ、阻まれた末に、海面を直線で切り取るかのような防波堤に立ち尽くす山本。彼らは、夜の海に身を潜めることはできても、遂には深く沈み込み、泳ぎ出すことはできないのだ。
 軌道修正が効かない、はみ出したら戻る場所は用意されていない世界。近しい人との繋がりさえ、容赦なく断ち切られてしまう。それは遠い別世界ではなく、自分がいるこの世の中そのものだ。「だから、間違ってはいけない」は論外だが、「どこをどうして間違ったのか」を探ることも、この映画は求めていないだろう。本作にのめり込んだ目で、今自分がいる場所の周りを見回すこと。まず、そこから始めようと思う。一見縁遠いものと身近なものを並べ、両者を英題でくくったタイトルの秀逸さを、観終えてから改めて噛みしめている。

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cma

4.0まともに生きようと思っても社会がそれを許さない

2021年2月28日
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東海テレビ制作のドキュメンタリー映画『ヤクザと憲法』を思い出させる作品だった。『ヤクザと憲法』は暴対法や暴力団排除条例の施行によって、銀行口座も作れない、携帯の契約もできなくなったヤクザがしのぎをどんどん失い、生きる権利を奪われていく過程を密着取材で捉えた作品だ。この作品は、その劇映画版と言ってもいいかもしれない。
一人の若いチンピラがヤクザとなり、刑務所に入り、出所してからの生活を3つの年代に渡って描くが、本作はまだヤクザ組織が元気だった頃から始まるので、法律の施行による凋落ぶりがとても強烈な印象を与える。主人公が刑務所から戻ってきたら、世の中が一変している。まともに生きようと思っても、生活がままならない。非合法なことでもしない限り生きていくこともできないような世の中になっている。ヤクザをなくすための法律・条例のせいでヤクザが足を洗うことができなくなっている。そんな強烈な矛盾に翻弄される人々の物語だった。

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杉本穂高

3.5ヤクザ映画からネオノワールへ

2021年2月17日
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和田隆

5.0ヤクザと時代の変化を1999年から2019年までの期間で描いた秀作。藤井道人監督のふり幅の大きさに驚く。

2021年1月28日
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本作は昨年の日本アカデミー賞で最優秀作品賞を受賞した「新聞記者」を手掛けた藤井道人監督と、尖った作品を送り出し続けるスターサンズという映画会社が再びタッグを組んだ作品です。
「新聞記者」についてはフィクションとは言え、賛否両論を巻き起こしたため最優秀作品賞に関しては物議を醸しましたが、本作は完全なオリジナル作品なので純粋に見られると思います。
まず、本作を見て一番驚いたのは、藤井道人監督のふり幅の大きさでした。
「藤井道人監督の大型の商業映画」は、それこそ「新聞記者」が最初でしたが、その次に「宇宙でいちばんあかるい屋根」というファンタジーで良質な作品を手掛けました。続いて、再び毛色が大きく変わった本作の登場です。
ヤクザ映画というのは、暴力シーン等かなり違った技術が要求されますが、それをベテラン監督の如く演出し、的確に描き切っていました。オリジナル脚本の完成度も含めて、この分野を主戦場にしてきた監督からしてみたら驚異的な存在に映ることでしょう。

さて、本作は時代の変化とともにヤクザという存在がどのようになっていったのかがよく分かる興味深い内容となっていました。特に終盤での展開は切ないほどリアルで、こういう俯瞰的な視点のヤクザ映画が作られるようになったのは時代の変化を感じます。
主人公の綾野剛が1999 年の少年期の序盤から、ヤクザとして最前線で生きた2005年を経て、2019年の現代までの約20年間を演じています。当初はさすがに20年間の変化は厳しいのかもしれないと思いました。ただ少年期とは言え成人前くらいだったので違和感なく見事に演じ切っていました。
本作は全体的に出来が良いので、大げさではなく役者陣全員が良かったです。中でも2019年から登場する磯村勇斗は存在感の強い役者に成長していて今後が楽しみな俳優になっていました。
タイトルの意味も含め、間違いなく深い秀作です。

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細野真宏

4.5主題歌のMVまで絶対観て

2025年2月12日
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女子高生

4.0時代とヤクザの変化

2025年2月3日
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現実的な社会の変化に翻弄されるヤクザの姿が印象的だった。実際のヤクザは分からないが…

人を傷つけてきたヤクザが、現代の社会では、SNSの凶器によって社会をうまく生きていけないという対比が残酷だと思った。
自業自得みたいな部分もあり、共感は出来ないが身近な話に感じた。

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すし

5.0ヤクザになるしかない人達とその末路・人権

2025年2月3日
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泣ける

悲しい

難しい

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yu

5.0生きられない

2024年12月27日
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普通に生きることが、どれだけ幸せなことか、失った時に初めて気がつくものかもしれない。ヤクザの世界が法律で変わっていくとともに、人の噂で人生を狂わせる時代になっていった。綾野剛の演技が素晴らしくあっという間に見てしまった。

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まさ

人権を無視するから裏社会なのである。5年位「凌ぐ」べきでしょ

2024年12月27日
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アンドロイド爺さん♥️

3.5見る人によって感情移入の先が変わる

2024年12月1日
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ヤクザの世界の移り変わりを知る事が出来ました。
やっていた事は悪い事なんだろうけど、堅気になっても働く事もままならない状態で、元ヤクザというだけで世間から爪弾きにされて、そういった世の中が正義なんでしょうか?
更生の余地なしという苦しさを感じました。
ヤクザという建前はなくなっても半グレが同じ様な事をして牛耳っているあたり何も変わっていない世間の闇も感じました。
尾野真千子演じる工藤由香の心の葛藤も痛い程分かる切ない映画でした。

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wataridori

4.0前半のイケイケだった山本ケンジから、出所してからの哀愁漂う姿が染みる

2024年10月11日
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悲しい

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かちかち映画速報

2.5令和で描くヤクザ

2024年9月21日
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ヤクザの時代は終わった という映画は少し斬新に感じた。綾野剛の絶妙な演技がとても良かった。ただ、内容がチープに感じるところがあった。もうちょっとうまくやれたところがあるのではないか(主に脚本 構成)と思った。

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(ノω<;)

4.5社会的に“要らない”と我々に教育されて来た人達にも当たり前に”人生...

2024年8月19日
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社会的に“要らない”と我々に教育されて来た人達にも当たり前に”人生“があるんだという事を気付かせてくれる作品。

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ushy

4.0重くて暗いけど良い作品

2024年8月7日
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一度見てやるせなく辛い内容だったのでしばらく避けていたけど
もう一度観てみた。最初観た時は自分の精神的にしんどかったのかもしれないけど
今回は客観的に見る事が出来た。
綾野剛の哀しげな表情もギラついた表情もとても良いし演技派ばかりの良い作品だと思う。
老いて行く組長と一緒に廃れていく組や事務所の様も淋しく虚しく描かれていて哀しくなってくる。
組長が暖かくて優しくて本当の父親のようで素敵です。
それから磯村隼人がカッコいい。
半グレ役がめちゃくちゃカッコ良くて磯村隼人見るだけでも価値があると個人的には思います。
2005年の綾野剛もカッコいい。
昔は憧れる人も多かったヤクザだけどこんな惨めな最後が待っているなら絶対なりたくないし
人権がなく縛りがキツいって事をもっと若い人たちにも教えたほうが良いだろうなと思った。
あと駿河太郎って嫌な役やムカつく役が似合うなー。

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REN

4.0考えさせられる。

2024年6月17日
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時代の流れをうまく描かれていて、見応えがあったし、なんか色々考えさせられた。

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どん

4.0ヤクザという生き方

2024年5月25日
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しかし、綾野剛さんは悪い役が似合いますねー

男から見ても格好いいです

前半と後半で話しの主体が変わっており、飽きずに映画を楽しめます。

個人的には舘ひろしさんが格好いいのですが、人が良すぎる役だったので、そこだけ少し、、うーん、
ヤクザなのでもう少し悪くても良かったのかもと思いますが、全体的にはまとまってて、とても面白かったです。

あと北村さんが僕は好きな俳優さんの1人なのですが、今回も存在感発揮してて良かったです。

他にも磯村さんや市原隼人さんなど、脇を固める俳優さんも見事でした。

ヤクザ映画を楽しみにしてる方にはちょっと違うかもしれませんが、ヤクザ映画が好きでヒューマン映画も好きな方にはハマりそうです。

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Francice

3.5☆☆☆★★★ 「綺麗事じや、やってらんね〜んだよ!」 ちょっとだけ...

2024年3月10日
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☆☆☆★★★

「綺麗事じや、やってらんね〜んだよ!」

ちょっとだけの感想で。

前作の『新聞記者』が好評だった藤井監督の最新作は、時代に取り残されてしまった(昔気質な)ヤクザの苦悩を描く意欲作。

今やヤクザ組織も、以前ほどの羽振りを効かせては街中を歩けない時代。
マル暴の睨みを掻き分けながらのシノギが続く日々。
そんな中で、或るヤクザ組織に拾われるのが綾野剛演じる主人公。
自分の親を反面教師として、(元々は)なる気もなかったヤクザ組織で自分探しをするかの様に生きている。

いつしか時代は変わり【義理に熱く、人情にも厚い】古臭いヤクザには未来が見えず。寧ろアルバイト感覚だったり、遊びの延長で金稼ぎに走るチンピラが幅を利かす社会がやって来る。

脚本も監督自身の手によるが。やがて主人公自身と共に周りの関係者達も成長して行くに従い、生き方が下手な主人公と反比例するが如く。幼かった翼を対象的(お互いの父親との関係性と共に)な存在として描いては、のし上がって行く展開で。単純ではあるものの、「一体この先どうなるのだろう?」との想いを、観客側に想起させ。次第にスクリーンから目が離せなくなって行く。

それだけに、〝 徒花 〟となって生きる悲劇的な人物を、映画は慈しむ様に描いてはいるが。そこはソレ、やはり《ヤクザはヤクザ》でもある訳で…。

そんなヤクザな男を、ほんの少し美しく描き過ぎている感も無くは無い…かなと。
(まあ、そんな事を書いてしまっては。マキノ&高倉健の黄金コンビによる往年の任侠映画はどうなんだ?と言われてしまいかねないんですけどね💧)

出演者では、主人公役の綾野剛はなかなかの熱演。
他では、兄貴役の北村有起哉。下衆な刑事の岩松了。後半は翼役の磯村勇斗が印象に残り、ホステス時代の尾野真千子がメッチャ綺麗。
ありゃもう男だったら絶対に惚れるだろ(´-`)

前作は世評ほどは良作とは思わなかったのですが。
(生意気を承知で言うとm(._.)m)え
演出力を上げて来たなあ〜と。

2021年1月30日 TOHOシネマズ西新井/スクリーン9

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松井の天井直撃ホームラン

4.0現代のヤクザ像

2024年2月29日
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かっこいいヤクザはもう過去の話なのだろう。三つの時代を描く事で、世の中の移り変わり、ヤクザの世界の変わり方を描いた、今のヤクザの話。
義理や人情もあったと言われる昭和のヤクザは消えていったるが、実際にはヤクザよりも冷酷な現代の悪が別のモノで現れている。各俳優を良かった。
令和のヤクザ映画。

最近見る映画によく磯村君を見る。良い俳優だ。

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Keita

3.5真面目に働こう

2024年2月23日
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と思いました。

どの世界でも大変だよな。

楽な仕事はない。

命にかかわることはしないほうがいい。
かかわらないのが一番っていうのを教えてくれた、

良いヤクザドキュメンタリー映画でした。
若い子にはオススメしたい。
こうなりますよと。

若い頃は安定とか普通とか真面目とか、なんかカッコ悪いと思ったけど、

案外、普通に仕事して、
普通に家族を養って、
普通の暮らしをするって、簡単なようだけど、
全員ができることじゃないかも。

今日も健康に平和に暮らせることに感謝。
仕事に感謝。
家族に感謝。

神様に感謝。

映画最高!

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もふもふ

4.0しばらく引きずる作品だ…(褒め言葉)

2023年12月23日
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ゆめ