空白

劇場公開日:

空白

解説

「ヒメアノ~ル」の吉田恵輔監督によるオリジナル脚本作品で、古田新太主演、松坂桃李共演で描くヒューマンサスペンス。女子中学生の添田花音はスーパーで万引しようとしたところを店長の青柳直人に見つかり、追いかけられた末に車に轢かれて死んでしまう。娘に無関心だった花音の父・充は、せめて彼女の無実を証明しようと、事故に関わった人々を厳しく追及するうちに恐ろしいモンスターと化し、事態は思わぬ方向へと展開していく。悪夢のような父親・添田を古田、彼に人生を握りつぶされていく店長・青柳を松坂が演じ、「さんかく」の田畑智子、「佐々木、イン、マイマイン」の藤原季節、「湯を沸かすほどの熱い愛」の伊東蒼が共演。

2021年製作/107分/PG12/日本
配給:スターサンズ、KADOKAWA
劇場公開日:2021年9月23日

スタッフ・キャスト

監督
脚本
吉田恵輔
企画
河村光庸
製作
河村光庸
エグゼクティブプロデューサー
河村光庸
プロデューサー
佐藤順子
アソシエイトプロデューサー
山本礼二
ラインプロデューサー
道上巧矢
撮影
志田貴之
照明
疋田淳
録音
田中博信
装飾
吉村昌悟
衣装
篠塚奈美
ヘアメイク
有路涼子
編集
下田悠
音楽
世武裕子
助監督
松倉大夏
キャスティング
田端利江
制作担当
保中良介
題字
赤松陽構造
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(C)2021「空白」製作委員会

映画レビュー

3.5責任の取り方

2021年10月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

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共感した! 5件)
くまの

4.0複雑な機微を、複雑なままに

2021年9月25日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

 娘を交通事故で亡くした父親がモンスタークレーマーと化すくだりはインパクトがあるが、その恐ろしさを描くための作品ではない。  怖い怖いクレーマーのホラーのような話かと思いびくびくしながら観始めて、実際前半は色々恐ろしかった。娘の交通事故シーンのリアルさにおののいたし、古田新太の何をしでかすか分からない雰囲気にすっかり呑まれた。  しかし、中盤以降はそんな恐怖がはるか遠景に見えてしまうような人間描写が展開される。  娘を亡くした父親の添田、万引きをした娘を追ったスーパーの店長青柳、店員の草加部の3人の、多面的な描かれ方が印象的だ。  添田の偏屈さと、時間の経過とともに変容する心。  青柳の卑屈さと不器用な立ち回り。気持ちが追い詰められるにつれ、言動が不安定になる様がリアルだ。  草加部の絶妙な薄っぺらさ。ボランティアをやったり理不尽なことに怒って見せたりしているが、相手の立場で考えることが出来ない狭量さが節々に表れる。  それぞれの描写の匙加減が善人または悪人一辺倒にならず、こんな人いるよねと思わせる生々しさがある。だから、主要な登場人物が全面的には共感できない人間達で展開も息苦しいのに、引き付けられる。  添田の傍若無人な足掻きが、我が子についての無知に気付き自分の中の空白を埋めるための彷徨だったということが、後半で徐々に分かる。作品全体の印象がちょっと変わる。  エキセントリックな添田の迫力が際立つが、物語の中で一番恐ろしいのは添田や青柳に加害をする野次馬とマスコミだろう。  添田もかなり理不尽で不愉快だが、当事者であるという大義名分が一応ある。マスコミの行き過ぎたゴシップや切り取り報道、姿を見せない野次馬たちの卑怯な犯罪は、何の正当性もない。  本来事故とは無関係な彼らがあそこまでやるのは、視聴率や自分の日常の鬱憤の捌け口のため、それだけが理由だ。彼らは飽きたら自分たちの所業を都合よく忘れ、一生消えない傷を負った当事者だけが残される。  終盤にはちょっといい話っぽい雰囲気が醸し出されるが、添田の行動が引き起こした事の顛末は個人的には許せず、また添田のような人間が実在したら前半の地獄が続くだけだろうとも思いもやもやとした。とはいえ物語としては適切な落とし所だったので複雑な気持ちになった。  この、見た側が思いを引きずるような複雑な後味こそ監督の狙いだろう。不快指数は高いが、メインキャスト3人の演技や人物描写の説得力は一見の価値がある。  いい人間と悪い人間の境目がはっきりしていて、よかれと思ってやったことが必ず報われるなんて、現実はそんなに単純なわけがないのだ。

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ニコ

4.5入れ替わる被害者と加害者

2021年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ある女子中学生の交通事故死の本当の加害者は誰なのかを問う作品だ。 万引きをした女子中学生を、万引きされたスーパーの店長が追いかけた。女子は逃げる時に道路を飛び出し車に轢かれて死んだ。万引きの被害者は店側だが、事故に視点を変えると店側は加害者に見える。女子は学校でいじめられていた。学校側はそれを隠そうとする。では、真の加害者は学校だろうか。女子の父親は、娘につらく当たる駄目な父親だった。しかも、自分の駄目さを自覚できていない。では、彼は加害者なのだろうか。しかし、最愛の娘を失ったという点では、被害者ともいえる。 事故を起こした女性運転手が父親に謝罪に来る。自責の念から彼女は自殺する。この自殺の加害者と被害者は誰だろうか。スーパーの店長はワイドショーで女子中学生の死の責任を問われ、スーパーには人が寄り付かなくなり、スーパーを閉店させることになった。ここの件については、彼は被害者となる。こんな風に、被害者と加害者が入れ替わり続ける。 理不尽な死の責任が本当に誰にあるのか、それはわからない。誰かを悪く言えば、だれかを加害者に仕立て上げれば解決できるほどにこの世界は単純にできていない。その複雑を真正面から見据える勇敢な作品だ。

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杉本穂高

4.5脇役を侮るなかれ!細部に神経が行き届いた1級の作品

2021年9月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

悲しい

幸せ

スーパーで化粧品を万引きしたことを疑われ、発作的にその場から逃走した女子中学生が交通事故死。彼女を追い詰めた店長の責任を追求する父親は、さらに、娘が通っていた学校側の型通りの対応を批判。一方、メディアは店長を殺人者のように追い回し、客足が遠のいたスーパーは閉店に追い込まれる。偽善と悪意が渦巻くうんざりするような世の中で、父親は、1人、猛獣のように吠え続ける。しかし、彼は娘が生前発信していた"かすなSOS"を聞き逃していた。 吉田恵輔監督は日々のニュースで見聞きしてきたような、そう珍しくもない事柄をヒントにオリジナル脚本を完成させた。細部にまで神経が行き届いた本作の魅力は、怒りながらもやがて自分と向き合わざるを得なくなる父親を演じる古田新太を筆頭に、メインキャストは勿論、いかにも無責任そうな学校長や、地味だが人が良さそうなスーパーの男性店員、等々、脇役が絶妙な点が挙げられる。「確かにこういう人いる」と思わせる、実は定型に陥らない素朴でリアルな脇役たちの演技によって初めて、物語はリアリティを持ち得たのだと思う。 脇役を侮るなかれ! そういう意味で、これは限られた予算内でディテールに時間をかけた1級の作品。そんな細かな積み重ねの上に、感動的なラストが訪れる。

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清藤秀人