はちどり(2018)

ALLTIME BEST

劇場公開日:2020年6月20日

はちどり(2018)

解説・あらすじ

1990年代の韓国を舞台に、思春期の少女の揺れ動く思いや家族との関わりを繊細に描いた人間ドラマ。本作が初長編となるキム・ボラ監督が、自身の少女時代の体験をもとに描き、世界各地の映画祭で数々の賞を受賞した。94年、空前の経済成長を迎えた韓国。14歳の少女ウニは、両親や姉兄とソウルの集合団地で暮らしている。学校になじめない彼女は、別の学校に通う親友と悪さをしたり、男子生徒や後輩の女子とデートをしたりして過ごしていた。小さな餅屋を切り盛りする両親は、子どもたちの心の動きと向き合う余裕がなく、兄はそんな両親の目を盗んでウニに暴力を振るう。ウニは自分に無関心な大人たちに囲まれ、孤独な思いを抱えていた。ある日、ウニが通う漢文塾に、不思議な雰囲気の女性教師ヨンジがやって来る。自分の話に耳を傾けてくれる彼女に、ウニは心を開いていくが……。

2018年製作/138分/PG12/韓国・アメリカ合作
原題または英題:House of Hummingbird
配給:アニモプロデュース
劇場公開日:2020年6月20日

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映画レビュー

4.5印象的なトランポリン、男の涙、返事をしない母

2020年9月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

1994年の韓国を舞台にした、14歳の少女の痛みを伴う青春を描いた作品だ。兄に暴力を振るわれ、父は家父長的な主人として尊大にふるまう。しかし、家族愛がないわけではない。主人公の入院の時には本気で涙を流したりもする。家族の中の男二人が唐突に泣き出すシーンがとても印象的だ。泣いた理由が明確に示されないのだ。
その他、トランポリンのシーンがすごく印象に残った。トランポリンで飛び跳ねてはしゃぐ主人公、しかし、そのトランポリンは誤って飛び出さないように囲われていて、とても狭い。抑圧的な檻の中でしかはしゃぐことができない閉塞感と、それでも飛び跳ねたい躍動感が同時に表現されているような、そんな重層的なシーンだった。
この映画には、あえて答えが示されないシーンが随所にある。主人公が外で母を見つけた時に声をかけるが、何度呼びかけても母は応答しない。よくわからないものにあふれた作品なのに、不思議なくらい「意味不明」とは感じさせない作品だ。それはきっと、彼女の鬱屈が私たちの鬱屈だと感じられるからだろう。キム・ボラ監督のリアリズムは非常に高いレベルにある。

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杉本穂高

4.0思春期の少女と90年代韓国

2025年6月25日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

カワイイ

ほとんど何の情報も入れないまま、主人公の中学生の顔がアップになったチラシのデザインになんとなく惹かれて観たが、非常に興味深く、かつ面白かった。本作は中学生が主人公なので青春映画というよりも思春期映画、あるいは少女映画と言ったほうが適切だろう。高校生を描いたいわゆる青春映画というのはたくさんあるし、小学生を描いた子供映画というか児童映画というのもわりとあるが、中学生を描いた映画というのは意外に少ない。1981年生まれでこれが初監督だという女性監督キム・ボラ自身がそれを意識して女子中学生の映画を撮ったと語っている。

臨床心理学者の故・河合隼雄が、子供から大人に変わりゆく思春期の内面では自分自身でも言語化できないような凄まじい変化が起きていて、特に思春期の少女の内面は男性にはほとんど理解不可能に近いと書いていたが、キム・ボラ監督はそれを見事に描き出している。僕は男なんで女性特有の感覚に若干違和感を感じるというかしっくり来ないというか馴染みきれないところも少しあったし、作風がかなり淡々としてるので中盤で少し眠くなるところもあったんだが、それを差し引いてもとても良い映画だった。主演のパク・ジフや女性講師役のキム・セビョクをはじめとする役者陣もみな素晴らしい。

映画に描かれる韓国の1994年という時代の空気もとても興味深かった。民主化運動の末に軍事政権が終わり文民政府の時代となった90年代だが、政治体制が変わっても社会風俗や生活文化は一夜にしては変わらない。家庭には強い家父長制が残り、また男尊女卑文化も根強く、学歴主義と相まって男児優先文化が家庭を、そして社会を支配していたことがよくわかった。それでいて誰かを悪者にしたりはせず、父親や兄もまたそのような文化のある種の犠牲者として描いているのも興味深い。

子供から大人へと変わろうとする少女と、新たな国へと生まれ変わろうとする韓国の歪みと矛盾と苦しみが二重映しに描かれているのも監督の意図通りだったようで、韓国映画の幅広い底力を見せつけられた。

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バラージ

4.0まるで一人の少女を追いかけるドキュメンタリー

2024年12月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

時代は1993、94年、
多感な時期を迎えた中学2年生の少女が主人公のお話で、
家族、友人、ボーイフレンド、
そして、放課後に通う漢文塾の先生との関係を通して、
少女の日常が淡々と描かれています。

その中で垣間見える、
この時代特有の空気感、
少女の揺れ動く心情…。

まるで一人の少女を追いかける
ドキュメンタリーを見ているかのような
リアリティがあり、
少女の日常の世界へどんどん引き込まれて行きました。

そして、当時実際に起こった事故を
キーポイントに置くところには、
やられましたね!

まさか、まさか…。
思いがけず、いい映画を見ました。
見終わった後も、静かな余韻が残っています。

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Noriko's Film Reviews

4.0透明感

2024年4月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

はちどりは10cmくらいの小鳥で、たぶん主人公の少女のこと
英題はHouse of Hummingbirdで、はちどりの家
監督自身の少女時代の家族を映画にしたのだろう
主人公の女の子を見つけるのに3年も探したらしいです
とても透明感のある少女でしたね
その主人公ウニが家族、友人、後輩といった人たちとの
人間関係や日常を描いたストーリー
そんな中で出会う漢文の先生
30年前の昭和っぽい韓国の日常がよくわかります

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かちかち