オフィシャル・シークレット
劇場公開日:2020年8月28日
解説
イラク戦争開戦前夜に英米政府を揺るがせた告発事件を、キーラ・ナイトレイ主演で映画化したポリティカルサスペンス。2003年、イギリスの諜報機関GCHQで働くキャサリン・ガンは、アメリカの諜報機関NSAから驚きのメールを受け取る。イラクを攻撃するための違法な工作活動を要請するその内容に強い憤りを感じた彼女は、マスコミへのリークを決意。2週間後、オブザーバー紙の記者マーティン・ブライトにより、メールの内容が記事化される。キャサリンは自分がリークしたことを名乗り出るが、告発も空しくイラク侵攻は開始され、彼女は起訴されてしまう。キャサリンを救うため、人権派弁護士ベン・エマーソンらが立ち上がるが……。弁護士エマーソン役に名優レイフ・ファインズ、記者ブライト役にテレビシリーズ「ドクター・フー」のマット・スミス。監督は「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」のギャビン・フッド。
2019年製作/112分/G/イギリス・アメリカ合作
原題:Official Secrets
配給:東北新社、STAR CHANNEL MOVIES
スタッフ・キャスト
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2020年8月21日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
「9.11」という数字の意味を知らない人はいないのですが、「9.11」のすぐ後にアメリカとイギリスが起こした「大量殺害」の話は、すっかり忘れ去られている気がします。
「9.11」が起こった後のアメリカのブッシュ大統領は、突然「悪の枢軸」と言い出し、イラクが核爆弾などの「大量破壊兵器」を持っている、と言い放ち、「9.11」の黒幕は(石油大国の)イラクのフセイン大統領だと決めつけました。
日本も賛同した「イラク戦争」は、すでに証明されているように、実はアメリカ政府が「でっち上げた嘘」に因るものだったのです。
本作は、イギリスの諜報機関に勤務する女性職員が、無理やり戦争をしようとするイギリス政府に「おかしい!」と感じ、マスコミにリークする実話を描いています。
同じテーマの作品としては、昨年に公開された「記者たち 衝撃と畏怖の真実」や「バイス」がありますが、これらはアメリカ視点で描かれているのに対して、本作は、イギリス視点で描かれている新しさがあります。
キーラ・ナイトレイの演技が良く、しかも、彼女の扮する「諜報機関職員」が主役のため裁判も関係するなど、物語としても、昨年のアメリカ視点の2作とは違った展開をしていきます。
「イラク戦争」での死者は、本作では「イラク人が15万~100万人、アメリカとイギリス軍は4600人以上」とされています。
いずれにしても、2000年代の、これだけ情報が行き交う社会で、100%の嘘で、平然と民主主義代表のような国が数万人以上もの人を殺してしまうわけです。
歴史に「もしも」は、ないのですが、「過去」(と言っても、まだ10数年前の話ですが…)からの教訓によって「未来」を変えることはできると思います。
その意味で、本作の役割は非常に大切なものだと感じます。
「国民の名の下に集められた情報はすべて公表すべきだ。問題は時期だけ。」「規制が必要なのは国の安全が危ぶまれる時だけでいい。政府が困るかどうかは関係ない。」
映画の中で出てくるウィルキンソン海外少将の言。ブレア政権の嘘は後に開示された。いつかは開示されるという信頼が施政者への抑止力となる。ブッシュやブレアの汚名は消えることはない。日本で欠けている機構。
主人公の行動は軽率ともとれる。社会的なキャリアの浅い翻訳家が、国家機密触れる場所に立ち入ることに驚きすら感じる。そのあまちゃん度合いに、主人公に感情移入することができず、距離をとってしまう。
内部告発には、告発する事実に公益に反する問題がなければならず、それを証することができなければならぬ。彼女にはその信念があったかもしれぬが、証明できた訳ではないだろう。
それがあやふやな状況であっても告発を社会が許容すべきなのかも知れぬ。しかし、それは結果的に証せなかった場合においても、社会が寛容であり続ける前提が必要である。その寛容さを社会に期待できるか。
政治的な判断により政府は追及を諦め、彼女は放免された。彼女の信念は証明されたが、それは結果である。同じくあやふやな状況で開戦したブレアは凶とでた。調査委員会が不必要な戦争と結論づけた。ブレアは自らの判断を未だ正当化している。多くの自国民もイラク国民も殺されたが、戦争犯罪人として裁かれた訳ではない。
先の主人公への距離感は全体として、良いバランスをもたらしてくれた。彼女の行為の是非とともに、社会のあり方の是非も問う良作である。
公正ミスをあそこまで罵るのは完全なるパワハラでNG。
2021年7月12日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
規制が必要なのはー
国の安全が危ぶまれる時だけでいい
政府が困るかどうかは関係ない
2021年5月21日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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映画「オフィシャル・シークレット」(ギャビン・フッド監督)から。
内部告発から端を発して大事件に至る作品は多いが、
今回はなんとなくスッキリしない。
結果的には、彼女の発したリークが大きなウネリとなるのだが・・・
どこまで影響するかも考えず、ただ若い女性の正義感が優先して、
リークした感じが強く残ったからかもしれない。
それは、いとも簡単に友達にリークを依頼するシーンが印象的。
「メールのコピーをあなたに託そうかと。
それを記者に渡してもらえない? 戦争反対の人に。
記者が無視してもいい、私はすっきりする」と主人公。
「すっきりする?私に公務秘密法違反を持ちかけておいて?
いわば反逆罪よ」と困惑する友達。
「政府を転覆させる気はない。マスコミの人に見てもらいたいだけ。
米国の横暴ぶりを追求して欲しい」
これが、内部告発の原点だとしたら、私は首を傾げる。
自分がスッキリすればそれでいい・・なんて動機で、
国を揺るがすような「最高機密」をリークされたら、
同じ職場の人間は、溜まったものではない。
ラスト近くに、関係者のこんな呟きがある。
「世界が見えているつもりの身の程知らずには参る」
本来なら、悪役のセリフなんだが、妙に納得してしまった。
もう少し、悩んで欲しかったなぁ、リークするにしても。