ステップのレビュー・感想・評価
全175件中、1~20件目を表示
空気が読めるタイプの子供だった人には、懐かしい香りがする作品
突然母(妻)を失った、父子家庭の日常と日々の成長のお話。
まず、主要人物2人が良い。
白鳥玉季の「良い子を演じている子」を演じてるのと、
山田孝之の「黙っているだけ」で、心の機微の移り変わりを魅せる演技が凄かった。
白鳥は「極主夫道」でもそうだったように、ちょっとマセて大人びたガキをさせたら、
今日本で一番上手くて、可愛らしい子役だと思うが、
今作でも、父親に対して、父の心情を汲み取った上で、
良い子にふるまっているマセた子供を演じていて、見事だった。
一方、山田は、2024年の「正体」で、主人公を追いかける刑事を演じていたが、
上司の方針や指示と、自分の本心との溝に苦悩する刑事を、
「黙すること」で表現したように、今作は、子育てに奔走し疲れ切っている親父役で、
妻を亡くした直後の不安定な父親と、
子供がある程度成長し、手がかからなくなったが、苦労した分くたびれた感じの父親と、
同じ疲れきった感じの父親だが、加齢で安定してきた感じの父親の成長幅を、
やはり「寡黙」で「黙する姿」だけで見事に違いを演じているのは、見事だった。
山田の場合は、ちょうどこの2020年の「ステップ」辺りから、
ここ数年で黙するタイプの演技に、拍車がかかって凄味を増してきた印象があり、
昭和の俳優にも似た雰囲気を持つ、役者になった感がある。
ストーリーは、父子家庭のステレオタイプな「突然不幸が襲ってくる」展開で、
意外さや驚きは無かったが、父子の互いを思いやる心の機微を丁寧に描くことで、
鑑賞後は温かい気持ちになれる映画で、満足度は高かった。
また、個人的な話だが、私も子供の頃はどちらかというと、両親共働きで、
マセたタイプの子供であり、
幼少時は、知り合いのおばあさんの家で、親の仕事が終わるまで、
預かってもらい過ごす子供で、
大人の意図を汲み取る術には、処世術として長けており、
小学校の頃は、鍵っ子特有の思慮深い子供だったし、
経済的に裕福ではない事は、なんとなく感じていたので、
駄々をこねている同年代の子を見ると、見下す感じだったし、
やけに大人びた子供だったと記憶している。
空気を読んで、大人の手がかからない良い子を、演じていた自覚がある。
だから、この作品の子役を見てると、自分を見ている心地になり、
いや、もっとマセてたなぁと感慨深くもなった。
良かった演者
山田孝之
白鳥玉季
映画の持つ力
ハンディキャップを題材にするズルい型であり、散々使い古されたものでもあるが、実際には2つとない物語でもある。
そしてこれはどこの家庭でもあり得ることで、しかしそれはどんなにシミュレーションしても経験しなければわかりようのないことでもある。
つまり、誰にとってもそれは絶対したくない初体験として捉えなければならないのだ。
恵まれた環境という設定が割と変哲のない感じを与えるが、この環境設定に余計なハンディキャップを加えると物語がぶれてしまうのだろう。
加えて聞き分けのいい女の子という設定もこの作品がどこを向いているのか明確にしている。
この作品はトモコが亡くなった。ただそれだけのことに的を絞っている。
冒頭に表示されるタイトルのステップのテロップは、あの坂道に沿って、その坂道が主役でもあるかのようにひっそりと遠慮がちに映し出される。
そして思い浮かぶのが、「道のり」とかそのまま「坂道を上る」とか、父娘二人のこれからの歩みを暗示している。
やがて物語の中盤に語られる「ステップ」とは、ステップファーザー、マザーという血のつながっていない関係を指す英単語として再登場し、もう一歩的が絞られる。
この作品のなかに健一の両親は登場しない。その代わり妻側の両親や息子夫婦が多数登場する。
彼らは真摯に健一親子の力になろうとするし、彼の再婚の後押しまで演出してくれる。
そして再婚相手はもちろん美紀と血のつながりはない。
この作品が訴えているのがこの「ステップ」、血のつながりがなくても強い信頼性を築くことができるということだろう。
そしてその境界線を勝手に引いているのは、自分自身だということへの気づきだ。
小学校で母の日に描く母の顔。担任はそのことで健一に相談するが、健一は娘が嘘をついているとは思えず、担任の考え方がどうしても受け入れられない。
意外なほどトモコに似ているコーヒーショップの店員にお願いして美紀と遊んでもらう。
健一は担任からの手紙をそのままコーヒーショップに置いたままにしたが、どうしても文句が言いたくて連絡先を知るためにそれを取りに行ったが、たまたま手紙を店員が読んでいたことでそのようにお願いしたことで、よけいな文句も言わずに済んだ。
そのことさえも、関係ない人からいただいた貴重な援助だ。
トモコが亡くなってからまだ日も浅いとき、健一は義父母から気を使われることにどうしてもなじめず、「何か引っかかる」と繰り返し呟いていた。それがいつか、他人行儀にしていたのは自分自身だったと気づくのだ。
上司からのたびたびの誘いと営業部復帰の打診も、彼の周囲の支えを群像表現している。
その自分で勝手に引いた境界線が、「関係」のあるなしを決めているのだと、この作品は伝えているのだろう。
保育園のケロ先生も二人の家庭事情を深く鑑みお世話していたことは、健一にも重々伝わっていた。そういう良き人たちに支えられて自分たち親子が立っていられるということを、異動で営業に戻り、「家庭」というものが一体どういう場所なのかを仲間でブレインストーミングしている機会に、健一の意見によってよく表れている。
やがてトモコの死から10年が経ち、心の余裕からか健一にも気になる人ができた。
そのナナエを母としてどう受け入れればいいのかという美紀の問題が始まるが、賢く聞き分けのいい美紀は彼女なりに思案を繰り返しながら受け入れていく。
美紀も自分でその境界線を引いていたことに気づいたのだろう。
健一のセリフに「悲しみも寂しさも消えない。でも乗り越えていくべきものでもない。付き合っていくべきものだと僕たちが生きてきた日々が教えてくれた」というのがあるが、この健一の言葉こそが作品が訴えていることだろう。この言葉のためだけにこの作品があるのだろう。
使い古された型ではあるが、個々人からは永遠のテーマだろう。勝手に境界線を引いて何もかも一人で抱え込む必要はないし、誰かが手を差し伸べてくれる時にはお世話になっていい。これは未だに日本人が苦手なことであり、これからの日本人が受け入れていく必要のあることなのだと感じた。
シミュレーションなどできないからこそ、映画の力があると思う。
良い作品だと思う。
⭐︎4.2 / 5.0
二人の子役が可愛くて、お父さんと仲良く暮らす様々な感情を上手く演じ...
泣きすぎて頭痛い…
わたる世間は福ばかり
泣けるけど最後の・・
全編通して素晴らしかったです。
ありがちな、大声を出して感情を表現する様なシーンも特になく淡々と進みこの点も好みです。
しかしラストちょい前くらいに仏壇前で亡き妻と語らうシーンは蛇足ではないかと思う。
写実的に進んできたのに非常にガッカリした。
全編ファンタジーな内容ならいいが残念でした。
優しさに包まれた父と娘の成長物語
全編、優しさに包まれた、シングルファーザーと一人娘の心温まる成長物語だった。父子に寄り添い成長を見守るという視点で、非常に丁寧に物語が進行していくので、じっくり作品と向き合うことができる。騒然としたコロナ禍の現代を離れて、心和やかに、心穏やかになる秀作である。
本作の主人公は、武田健一(山田孝之)。彼は30歳で妻に先立たれるが、妻の両親の申し出を辞退して、シングルファーザーとして一人娘の美紀を育てる決心をする。彼は、様々な困難に直面しながらも、周りの人々に支えられ、懸命に子育てに邁進していく。やがて、美紀は逞しく成長し、子育ても一区切りついたかに見えた時、父子にとって避けては通れない試練が訪れる・・・。
物語は、美紀の2歳~12歳までを描いている。様々な出来事が起きるが、敢えて劇的な展開にせず、淡々と進んでいく。どの出来事にも明確でスッキリした回答は用意されない。父子に寄り添って、父子の成長を見守っていくという姿勢で貫かれている。父子の人生の一片を切り取って観ている雰囲気になる。それぞれの出来事を丁寧に描いているので、父子の想いにじっくり感情移入ができ、父子の想いが心に深く浸透していく。
試練のところでは、父子の想いはなかなか噛み合わず、父子関係はギクシャクするが、ここでも、父子に寄り添い、父子が成長するまで、ゆっくり父子の成長を見守っていく姿勢は変わらない。
國村隼、余貴美子など、脇を固める俳優陣は芸達者揃いであり、作品に落ち着きを与えている。美紀役は3人の子役が担当している。違和感なく2歳~12歳の美紀を演じ切っている。3人もの子役を揃えて、美紀の心情を丁寧に描こうとする作り手の意気込みが伝わってくる。
最近、複雑で劇的なストーリー展開の作品が多いなかで、本作は対極にある作品である。
派手さはないが、じっくり向き合うことができる。じっくり味わうことができる。じっくり感動に浸ることができる作品である。
自分に置き換えて考えてしまう
題名ステップに涙
題名の通りステップが主題にある映画でした。簡単なあらすじは、妻の死後、男手ひとつで娘を育てていたケンイチは、葛藤の末新たな女性と良い関係になるが、娘のミキちゃんとの関係がなかなかうまくいかないというものだ。本映画のステップには「段階」という意味と「義」という意味の両方がかけられていると感じた。ケンイチ、ミキちゃん、新たな母親、そして義両親といった家族が「ステップ」(義)という関係を段階的に理解し、乗り越えようとする過程がうまく描かれていました。
優しさが溢れてた。
とても良かったです
30歳で妻を亡くし、それから男で一つで女の子を育てる事になる。自分が今同じ年齢になった時に同じような事が出来るのかと考えてしまいした。
この映画の中でように父子家庭で育った事もあって、自分と重ねてこの映画を観ている所もあった。
保育園での仕事で遅くなって迎えに行くシーンは、とても切ない気持ちになりました。
仕事と家庭を両立しようとしても誰も代わってくれるわけではない。かといって誰かのせいにする事も出来ない。
そんな苦しみがあったのではないかと感じました。
子供の成長と共に色んな苦しみがあった事が今では大切な思い出といえば、きれいだけどやってきた事に対して誇りが持てるそんな雰囲気を感じました。
「ステップファミリー」
血縁関係のない亡くなった奥さんの親やその親戚。
本来ならそのまま縁も切る事も出来るけど、見捨てないで支える力になっていたのがグッときた。
継父の言った「本当の息子のように思っている」
誰かの繋がりの中で人は、生きているんだなと改めて考えるきっかけを与えてくれる映画でした。
現実に寄り添いながら、今を精一杯生きる
若くして妻を亡くし、父親1人で娘を育てる状況の葛藤。
死はいつかは必ず来るものであると改めて思った。
そのいつかが分からないからこそ、今を思い残すことなく生きることが大切だと感じた。
夫からすると、妻を亡くしたこと、会社で思うようなことができなかったこと。
娘からすると、母が小さいころから自分だけいないこと、新しい女性が家族に入ること。
義親からすると、娘を亡くし、息子夫婦には子宝には恵まれなかったこと。
このように、生きているうちには、何が起こるがわからない。
しかし、何が起こったとしても、現実に寄り添いながら、時間をかけて受け入れることが必要だと思った。
特に、娘が新しい女性を母と呼んだことや、義父が危篤のシーンは感動した。
生きていると何が起こるか分からないから、何が起こっても現実を受け入れ、
どこかで死が来るから、思い残すことなく、今を大切にしようと思わせてくれた。
感涙した。
素晴らしい。。
義父の、「最初で最後の親父の説教」、山田孝之の「最初で最後の息子の頼み」、
最後の謝恩会と涙が止まりませんでした。
家庭の中で母親という柱が抜ける大変さ、それを乗り切る残された家族、それを見守る周りの人達。
皆がいい人で、幸せな気持ちになれる映画でした。
いい作品に出会えました。ありがとうございました。
全175件中、1~20件目を表示