ライトハウス

劇場公開日:

ライトハウス

解説

「ウィッチ」のロバート・エガース監督が、「TENET テネット」のロバート・パティンソンと名優ウィレム・デフォーを主演に迎え、実話をベースに手がけたスリラー。外界と遮断された灯台を舞台に、登場人物はほぼ2人の灯台守だけで、彼らが徐々に狂気と幻想に侵されていく様を美しいモノクロームの映像で描いた。1890年代、ニューイングランドの孤島。4週間にわたり灯台と島の管理をおこなうため、2人の灯台守が島にやってきた。ベテランのトーマス・ウェイクと未経験の若者イーフレイム・ウィンズローは、初日からそりが合わずに衝突を繰り返す。険悪な雰囲気の中、島を襲った嵐により、2人は島に閉じ込められてしまう。

2019年製作/109分/R15+/アメリカ・ブラジル合作
原題または英題:The Lighthouse
配給:トランスフォーマー
劇場公開日:2021年7月9日

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

受賞歴

詳細情報を表示

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画評論

フォトギャラリー

  • 画像1
  • 画像2
  • 画像3
  • 画像4
  • 画像5
  • 画像6
  • 画像7
  • 画像8
  • 画像9
  • 画像10
  • 画像11

(C)2019 A24 Films LLC. All Rights Reserved.

映画レビュー

3.5狂気を擬似体験する

2021年7月16日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

 一筋縄では行かない作品だが、主演二人の演技の熱量に目を奪われ最後まで引きずられていった。  ウィレム・デフォーとロバート・パティンソンの千変万化の顔面が、物語の大半を彩ると言ってもいいかも知れない。下からランプで照らされるデフォーの顔が怖い。パティンソンの目に宿る狂気も尻上がりにすさまじい。不穏な展開になる予感しかしないし、次に何が起こるか分からない恐怖を、彼らの表情から常に感じた。  撮影カメラはヴィンテージ、こだわりのモノクロームフィルム、1.19:1のアスペクト比。これらの「いれもの」が見る側をうまいこと物語の世界に連れて行ってくれる。  色々暗示的な描写があって、それは精神分析学やギリシャ神話に依拠するものらしいのだが、私は詳しくないので考え込むのは後回しにした。二人の顔芸(リスペクト込めて)と昔のサイコサスペンス映画の雰囲気を味わうくらいの構えで見てもいいのかも知れない。  なお余計なお世話だが、私の隣にカップルがいたので思ったこと。まだうきうきしている時期のデートムービーとしては絶対にお勧めしない。男性の性的暗喩や妄想その他諸々、気まずくなりそうな要素が多いので(私見)。  時折場違いなお笑い要素とおぼしき一瞬が挟まれるが、陰鬱な雰囲気や二人の演技合戦との落差が大きすぎて、全くほっこりしない。デフォー演じるウェイクはしょっちゅうオナラをするのだが、あ、お腹ゆるいんですね……くらいしか思う余裕がない。  こんな上司と離島に二人きりとか、そりゃ頭おかしくなるよな……というのをたっぷり見せられた後、当てにしていた連絡船が嵐で来れないことが分かり、兆しのあったウィンズローの妄想と狂気が暴走を始める。  そこからは、荒波に翻弄される小舟のような、二人の不安定な情緒の格闘だ。アルコールと妄想も混じって、泥沼でもがくかのごとき心身の取っ組み合いが続く。不条理が加速する展開に最早どういう趣旨の描写なのかよく分からなくなってくるが、彼らの顔に見入っているだけでそのまま狂気の世界に連れて行かれそうな、ぞっとする瞬間があった。  内容は全く関連がないのだが夢野久作の「ドグラ・マグラ」を思い出した。狂人を客観的な描写で見せるのではなく、その内的世界に引き摺り込むことで恐怖を感じさせるような……この受け止め方が、どこまで合っているか分からないが。そういえば「ドグラ・マグラ」も巻頭歌の後は「……ブウウーーーンンンーーー……」から始まっている。こちらは時計の音ではあるが、狂気の世界への導入が偶然似るというのも面白い。  パンフレットに伊藤潤二氏の漫画が載っていると聞き、鑑賞前に買って読んだ。カモメの描写で個性を出してるなあと思って鑑賞したら本編に全く忠実で、むしろ本編のカモメの方が不穏なのでちょっと笑ってしまった。  エガース監督、アリ・アスター監督と仲良しなのね。納得です。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
ニコ

3.5「何を言わんとしているのか??」 こりゃ考察サイト徘徊が始まるな。。

2021年7月15日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

全編、同じ2人の男&同じ場所&同じトーンで進行。しかも白黒&スクリーンの幅が狭いという面白い趣向。これが、孤島の灯台の閉塞感や、灰色の曇天、雨や海によるジメジメ感、そして何かが起こりそうな不気味な予感を醸し出すことに見事に成功していた。 2人の男のうち上司の方(トーマスだったけ?)が、どこかポセイドンぽいなあと思いながら見ていたら、途中そのようなショットが入って驚き! この役を演じたのは「プラトーン」であの有名な両腕を上げてるシーンを演じたウィルアム・デフォーなのね。全然わからなかった。役作りが凄い。。 そして若い方の男を演じた俳優はなんと「ブレイキング・ドーン」のかっこいいヴァンパイア役のロバート・パティンソン!これも口髭を生やしていたからか予告編ではパティンソンだと全く気づけなかった。白黒映画だとどうしても最近の俳優だと思えないな。しかし、この人もクールな男前役だけでなく、今回のように狂っていく人間や人間のカルマのようなものを奥底から演じることができる俳優だったんだなあ。凄いわ。 この映画が「何を言わんとしていたのか?」は、なんとなくわかりそうなのだがわかっていない。 これから考察サイトを徘徊して楽しみます。。。 ※あんな外套で作業してたらダメでしょ。水分含んで絶対重たいって。ワークマンで防水作業着を買ってあげたくなった。 ※島に向かう冒頭のシーンなど「シャッターアイランド」をちょっと思い出した。実は全部仕掛けだったり?(それは違うか。)

コメントする (0件)
共感した! 26件)
momokichi

4.0狭苦しい白黒映像の圧力に目が釘付け。

2021年7月31日
PCから投稿

古い白黒映画を観ていて、ただただ画に夢中になることがある。もう、ストーリーが面白かろうがなんだろうが(もちろん面白いに越したことはないが)、モノクロームが醸し出す美しさに魅入られて、目が離せなくなってしまう。そんな体験を、21世紀の新作映画でたっぷりと味わえるとは予想もしていなかった。 汚い狭い空間で、男ふたりがいがみ合い怒鳴り合い時たま仲良くなってまたいがみ合う。最初から最後まで、もうその繰り返しでしかないはずなのに、なんでこんなに美しいのか。もちろん役者VS役者の演技のせめぎ合いにも、シュールで隠喩に満ちた語り口にも惹き込まれるのだが、すべては二の次、三の次となって、画と音の奔流に脳内が満たされる。 気分が悪くなってもおかしくないほどグロテスクな映画だとも思うのだが、圧倒的な美術品を前にして、ただ惚れ惚れする時間を過ごして、なんだか幸せだった。レビューというには抽象的かつ主観的に過ぎますが、幸せな映像体験という表現が自分にはピッタリでした。

コメントする (0件)
共感した! 9件)
村山章

3.5光と闇を強調するモノクロ映像。D・リンチ的シュールさと狂気

2021年7月10日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

怖い

知的

観る人を選ぶ映画の部類に入るだろう。灯台しかない絶海の孤島に、独裁者のような老灯台守の助手として赴任した青年の話。4対3のスタンダードサイズに閉塞感を覚え、逃げ場がなく精神的に追い詰められていく彼の内面にシンクロする体験をポジティブに味わえればいいが、苦痛な時間になってしまうかも。ブラックな労働環境でこき使われた経験があるなら、つらい記憶がよみがえる可能性大だ。 モノクロの映像は余計な情報をそぎ落とし、神の力を象徴する灯台の光と人間の恐怖や狂気を増幅する闇のコントラストを強調する。妄想とも幻覚とも超現実的事象とも解釈可能なインパクト大のショットの数々は、たとえば「イレイザーヘッド」などに顕著なデヴィッド・リンチの作風を思わせもする。 私自身、初見の際は正直それほど…という印象だったのだが、全体の流れを把握した後でもう一度観ると、面白みがずいぶん増したように感じた。

コメントする (0件)
共感した! 11件)
高森 郁哉