異端の鳥のレビュー・感想・評価
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自分の子が、と思うとかなり辛い
終盤の中頃、罰のなかで生を感じ微笑むところにかなりのあやうさを感じたが、終盤の終盤、父親のスープを拒絶すること=自分の感情を親へぶつけることができたことに安堵。全般的に良かったが少々長すぎ、お尻が痛くなったので☆は4つ。しかしいくら演技とは言え、人間の醜い部分をとことん味わった彼はこの先どんな人生を送るのだろうか。ちょっと心配。
少年と狂人達
ホロコーストから逃れるために疎開していた少年が、ある出来事から家を目指し旅立つこととなり、道中で起こる厳しい仕打と少年の変化の物語。
とにかく観ていられないような描写が続く。
少年が行く先々で出会う人物は皆揃いも揃って狂人だらけ。中には善人もいたり、よくわからん人もいたけれど。
しかし、人ってここまで狂えるものなのか・・・戦争って恐ろしい。。
とにかく嫌~なものが3時間ノンストップ。しかし、大人しかった少年が狂気のなかで闘うことを覚えていく、ある意味成長(は語弊がある?)物語なのかな。
戦時中に異端として扱われる者への厳しさ、残酷さがよく描かれていた作品だった。
ただ、それと同時に、個人的には
「みんなの嫌いなもの全部乗せ!」
みたいなノリも感じてしまい、純粋に物語を観れない部分もあったかも。
この半分くらいでも充分だった気が。
それと、ちょくちょく行く劇場なんだけど、長い作品を観るにはもうちょっと背もたれが欲しいのです(^-^;
話はそれるけど、昔、三羽のカラスが一羽のカラスを空で地上で啄み続けている場面に遭遇しました。
可哀想だったので三羽を追い払ったのだけど、急いでいたのですぐその場を離れました。あのあとどうなったのかな・・・。
いつかは、誰もが、ペインティドバード
予備知識0で、劇場へ。オープニングから、一体、私は何を観ているのかしらと、戸惑い続けた3時間。
原作も、監督さんの意図も、解りかねます。と云うか、知りたいと思えないんです。ただ、あなたは、鳥にペイントしたことありますか?。ペインティドバードに、なりたいですか?。もし、ペインティドバードを見つけたら、何をしますか?。と、常に問われ続けた気がして、しんどかった。
本作を宗教や民族で、他者をペイントしたがる、ヒトの宿業と捉えることもできますが、おそらく本作は、明確な正解とか、無理にメッセージを探すものではないようです。ただ、そこにある。そんな3時間。
是非、皆様もご体感下さい。一時停止できない劇場でね。そしてラストに「フルメタル ジャケット」の微笑みデブみたいな目をしていた男の子に、幸あらんことをお祈り下さい。
「冬の小鳥」
ヒトは、ホモサピエンスの直系ですが、少しネアンデルタール人のDNA が、あるそうです。ネアンデルタール人は、がっしり体型で、狩猟が得意。反面、共同作業が不得手だったとか。ヨーロッパ系の個体に多く、アフリカ系には、いないそうです。ネアンデルタール色が濃いのが「異端の鳥」や「白いリボン」とすれば、ホモサピ色が濃いのが「冬の小鳥」。併せ御覧ください。
世の中のありとあらゆる不幸を描いたような作品。ホロコースト映画なの...
世の中のありとあらゆる不幸を描いたような作品。ホロコースト映画なのかも説明なければ分からない、ただの孤児いじめの話に見えてしまう。
BGMはなく、何かとハエの飛ぶ音を聞かせてくるのでちょっとイラッとしました。とにかく長く、エンディング前にとうとう寝落ちしてしまった..残念
ちなみに途中退場者は三名ほどいたようです。
見てよかったのか?見ないほうがよかったのか?
とにかく、重い。
人はこれほどまで、人を攻撃するのか?
映画の途中では、「これって、ソビエト残酷物語じゃない」と思いながら、目を背ける場面の連続。
この子が、感情を発達させていくさまも見どころだが、生きるって何だろうと考えてしまった。
これが、戦争の現実。
人が憎悪を噴出させる日常。
生きるために、異物を排除する世界。
ここから目を背けてはいけないのだろう。
原題が、この映画の本質をついている。
軽い気持ちで観に行ったら、痛い目に遭う。
ベネチア国際映画祭、ユニセフ賞を獲得してるので、日本でも注目度高いと思うが、これ、R15指定ってことだけど、それだけで大丈夫か?
戦争の現実を突きつける良作だとは思うけど、観るのに覚悟が必要だと思う。
3時間弱という長さの作中、拷問みたいに、これでもかってくらい、人間の邪悪で残虐な行いを見せつけられる映画。
あまりに救いがない。
モノクロなので、余計に陰鬱な気持ちになる。
特に女性には不快と思われる描写も多く、途中席を立った人もいた。
しかし人間とはこうしたもんであるというのも確かで、目を背けないことが、次の悲劇を生まないことに繋がるのかもしれない。
生きるということは、綺麗事では無いのだ。
まして、戦時中という混乱の中では。
自分の属する世界が、いつ何時、こうならない保証なんてない。
そうなった時に、人間的な行動が取れるか、そういうことを考えさせられる。
それにしてもちょっとこの平和な現代の日本で生きてたら、この過酷さは、想像できないだろうな。
あまりに凄惨すぎて、ちょっとシュールにさえ思えた。
そしてあまりに不運が続くので、少し感覚が麻痺して慣れてくる。
それは主人公も同じで、強く逞しく、狡猾に、非情になってゆく。
たまに登場する、ウド・キアーやハーヴェイ・カイテルやステラン・スカルスガルドやバリー・ペッパーなどの馴染みの顔にホッとする。
コミュ障少年の壮絶ロードムービー
ひたすら、淡々と進む典型的な文学系作品
。禁書となった小説の映画化で、上映時、退場者が出たなどの謳い文句に惹かれて鑑賞。
感想・・思っていた程では?
後、ユダヤ人であるが為、差別を受けるのですが、そちらは大した描写ではなく、むしろ、行く先々の頼る大人の変態性への犠牲の方にクローズ・アップされている感が強いです。
が、それもこれまで色々な作品で散々描かれてきているモノで、特段「この作品だから」と言える描写ではなかったです。
人間のどす黒い欲望や獣性は、弱者である女性や子供に向きやすい訳で、まあ、あの歳ならトラウマ級の出来事ばかり、そりゃひねくれるよ。
最後、いきなり父親と再会し、帰宅の途に着くところで終わるですが、心の中はどうあれ、父親にあの程度の反抗しか見せなかったのは、擦れたのか?逞しくなったのか?
途中、軍人とのエピソードで、少年がバッジで、何処の国の軍人か確認するシーンが有りましたが、(2か所?)国境が陸続きの欧州ならではでしょう。
モノクロで美しい情景の中で行われる少年の凄惨な体験の数々。また、凄惨な状況を淡々と見続ける少年。
只、喋れるのに物凄く会話が少ない上、(大人に叱られる子供が黙る感じか?)終始、仏頂面の少年が何考えてるのか?心情の変化は、一人目の殺人辺りから何となく狡猾さが、見え始め(そうしないと自分が死ぬから、ある意味逞しさ。)、最後は遣られたら遣り返す倍返しだ!!(笑)
そして、父親に連れられ日常に戻る。
さぞ、ひねくれた大人になるのでしょう。(苦笑)
只、父親の焼き印?を見た少年は、どう思うのか?
子供とは言え、ユダヤ人が殺人してお咎め無しなの?
蛇足で、完全に個人の主観なのですが、この映画を観て途中退場した観客というのは、余程、恵まれた環境でしか生きて来なかったのか、人は綺麗なモノだと思い込んでるピュアな方々なのでしょう。(皮肉ですよ)
そんなに異端ではない。
強烈なビジュアルとタイトルによりもっと異端な映画かと思ったらそんなに異端ではなかった。
原作は有名なのか、これはこれで面白そうだけど、モノクロの割にはお金がかかっている大作で、よくみればハーベイカイテルとか出ている。しかしいかんせん映画的興奮度が足りない。昨日見た「スパイの妻」に比べると圧倒的に興奮度が足りてないし、過去のソ連の戦争を描いた映画に比べても驚きが足りない、というのが冒頭10分ほどで気づいてしまう。けれど労作ではある。
東欧の人とは違った映画の見方をしてるかも知れない
時代感覚が無くなるほどの非文明的な田舎の環境に驚く。少年の流転する運命とともにだんだん周りは文明化した環境になるが異端者としての少年の排斥は続く。
小鳥も同じ。生と性に絡む軋轢、異端排斥は生き物の宿命なのか。
死ぬ運命の馬にしか話さなかった少年も最後には名前を取り戻して終わる。
宗教、共産主義、ロシア革命、ホロコースト、コサック、ソ連周辺国の苦難。
色々盛り込まれていそうだが遠く離れた日本人には掴み切れない文化的底流が有りそうなのは分かる。ポーランドの原作者やチェコの監督とは違った映画を見てるかも知れない、そんな不安も感じる。
エンディングに救われる。タイトルもすごい
東欧の厳しく美しい田園風景を背景に、少年が過酷な運命に耐える。少年が出会う大人たちは年寄りも女も中年男もふつうの大人たちである。しかし、そのふつうの大人たちが少年を精神的に肉体的に虐げ、少年が安心して暮らせる場所はない。
長尺169分の大部分の時間、モノクロのスクリーンに過酷な試練に耐える少年の姿が描かれ続ける。そんなに続かなくてもよいのではないかと思うし、海外でのプレス向け試写会では途中退場者も多かったという。
物語の終盤、父とやっと再会した少年は口をきかない。父に自分の名前を忘れてしまったのかと問われても答えない。しかし、家に帰るバスに揺られて眠ってしまった父の横で、少年は曇った窓ガラスに指で自分の名前を書く。父への答えであろう。救われるエンディングだった。
最後にタイトルについて。
原題の「The Painted bird」をそのまま訳すと「塗られた鳥」であるが、「自分ではどうにもできないことを理由に差別される鳥」という意味を、やや大げさに、かつ商業的に「異端」とキャッチーな一言で言いつくすとは。屁のような、不要な副題をつける映画も多い中で、すごい。
2020年ベストムービー!⭐️⭐️⭐️✨
これを観ずに死ねるかっ!…正にそんな一本。
今年最も必見な作品でしょうね!
ホロコーストの恐怖あるいは他者排斥を扱った作品…でも、ユダヤ人の大量虐殺もガス室も出て来ません…出て来るのは、ヨーロッパのどこぞの国の、閉鎖的な寒村と人々、そしてシャーマンとか兵士とか…エトセトラ(笑)
少年が話す言葉は、チェコ語?ポーランド語?
作品は、一人の少年が非道で理不尽な大戦下の世の中で、失われていく自分のアイデンティティを取り戻す…そんなお話(と言っても、まだ自我の確立もままならない年端もない少年が、人格すら否定される世界で、人間性を失って行きます)。
少年は、幾つもの季節を乗り越えて、長い長い、本当ぉ〜に!!気の遠くなる様な、なが〜い!!旅路を続けます…そこは正に地獄なんですけどね…。
少年にとって、地獄とは、正に自分自身が内に秘めていた(あるいは期待していた)"善"なるものへの裏切りの連続、もしくはそんな世界なんでしょうか…。山羊に嫉妬する場面は、本当に異様でした。
ラストの、バスの中のシーンは秀逸でした。
ジワッと来る、泣ける場面でした…長い旅路の末、少年は正に"自分"を取り戻すのです…
…あかん、
ラストシーンをまた思い浮かべると、また泣きそうになる(笑)
名作!!!
(追記)
観賞後、数日経って思うことは、この作品のテーマというか、より比重があるのは、ナチによるユダヤ人迫害とか異分子排斥というよりも、もっとストレートに"児童虐待"の告発にあるのかなと思って来た(ナチを告発するのに、ナチの中にも良い奴はいた…的な描写は必要ないと思うし…)。
つまり、あの寂寥とした風景やモノクロ映像は、虐待された者の心象風景だと思うのです。
一度は少年を捨てた、あるいは捨てざるを得なかった父に対する不信感、そして怒りは、父の身体に刻まれていた"番号"を少年が発見した時、全てが寛解します。
最後に少年の深く傷ついた心が救われたと感じるから、観ている私たちはとても感動したのだと思います。
うまく中和
何とか少年を救い出したい気持ちばかりで、落ち着かなかったです。一方、いずれのショットも、なぜか美しく感じ、美術館の絵画を順番にみるようでした。でもって総和すると、陰惨さや悲惨さをあまり感じなかったです。当時は実際にあった迫害や性的虐待と思われますが、主人公のような少年はその後、どんな人生を歩んだのか知りたいです。
正直、覚悟していたほどではなかった。
観ていて辛かったのは「無垢の祈り」の方が格段上だ。
何故なら、本作では辛い目に合うのは少年だけではないからだ。
むしろ、いきたり火だるまにされるフェレットや、異質の色を塗られる鳥の方が悲惨に思える。
結局、生きるというのはそういうものなのだ。誰もが平穏に生活出来る場所などない。
何処に行こうと辛い現実が待っているだけなんだ。だからこその“目には目を、歯には歯を”なんだ。
「無垢の祈り」のラストの少女の祈りに比べれば、充分ハッピーな終わりかたであったと思う。
洋画タイトルのpainted birdが全て、それで考察
色付けされた鳥、本来は仲間でもそれを見ると・・・
ナチスだから極悪・・・
ユダヤ人だから・・・
普通に暮らしている人は普通・・・
全部違う。
一部で起きているコロナウイルスの自粛強制する人たち、嫌がらせをする人たちも同じでは?と。
ステレオタイプの現代社会を撃ち抜く傑作でした。
さまよえるポーランド人
原作は高校3年の時に読んで衝撃を受けた。さすがに詳細は忘れてしまったが、映像化されたと知って、久々に再会することに。イエールジ・コジンスキーの作品はほかにハル・アシュビー監督で映画化された「預言者」を読んでいる(映画名「チャンス」)。
著者自身の体験に基づくとされる物語は、一言で言えば戦時下の少年の地獄めぐりである。戦争という災禍もさることながら、文化の果ての土俗と因襲の世界がひたすらおぞましい。虐げられ続けた少年はやがて達観したまなざしを身につけ、反攻に出る。
モノクロの端正な映像は、さながら動くダイアン・アーバスの写真集のようだ。
溶暗に続いて各章の登場人物名が浮かび上がるリズムが良い。そして最終章の名前のひとつについて、さりげなく由来が明かされる時、安堵の深いため息が出る。
人の異質物を排除するエゴと欲と業を歴々と見せつけてくる作品です。
以前から気になっていた作品で公開前から期待していて、公開2日目に観賞しました。
都内では有楽町の「TOHOシネマズ シャンテ」と立川のみの上映で、加えて上映時間が長いので観賞タイミングがなかなか合わせ難いのですが、チケットを予約しようと思った時にはかなりの席が埋まっていて、結果的には満席。
TOHOシネマズも作品によっては全席開放になってますが、こちらも全席開放で満席は凄い。場内の席が人で埋まりまくったのを見るのは久々で、まだまだコロナの影響が懸念される中で、ちょっと怖い感じがしなくも無いですが、決して大作系ではない作品が満席になっているのはちょっと嬉しかったりしますね♪
で、感想はと言うと、いや〜キツイ。キツイっすわ〜。
169分がそんなに長くは感じなく、見応えは十分にあるのですが、内容は中盤ぐらいまではかなりキツイです。
様々な描写がエグい。ここまで描かなくてはいけないのか?と思うぐらいにショッキングなシーンがてんこ盛り。
でも、なんか目が離せないと言うか、怖い物見たさの様な人を引き付ける魅力がある作品。
この世界観が癖になると言うか、ダークな世界観が好きな人で「ダンサー・イン・ザ・ダーク」や「ミスト」とかが好きな人には好きかとw
ポスタービジュアルにある首から上を残して埋められて、カラスと共に写っているのなんて「昔のフグの毒抜きか?」と最初は茶化した感じの気持ちだったんですが、いざ観賞すると、その場面になる事の理不尽な暴力に口アングリ。
前半は直接的な暴力による迫害。中盤からは性的迫害。後半は少年の自立心と言うか自我の覚醒的な目覚めな感じになってきますが、大人でも目を背けたくなる描写の連続にこれはR 15でもどうなんでしょうか?
自分が10代の頃に観賞してたらトラウマになりますわw
主人公の少年が疎開先の叔母が病死した事で旅に出るお話ですが、行く先々での迫害がキツく生々しい。人のエゴと欲と業を歴々と突きつけてくる。
エグいシーンの連続に少年の中での何かが剥がれ落ちるかの様な行動もある意味怖い。
これを成長と言うのか、人しての良心が欠け落ちたのかはそれぞれの解釈が有るかと思いますが、自分の中では成長したとは言い難い感じ。
主人公の少年役の男の子が上手い。寡黙に淡々と自身に降りかかる災難を受け入れつつも心のナイフを徐々に研ぎ澄ませていく。
でも、暴力描写よりも性的描写を監督が未成年の男の子にどう説明して撮影に挑んだかは気になります。
またモノクロの描写は何処か芸術的ではありますが、畏敬の念を感じさせる様な感じで、それでいてセリフも少なく音楽も少ないのが却ってモノクロの美しさを際立たせる感じ。
モノクロの映像の奥に広がる世界観に想像を掻き立てられるんですよね。
この作品で使われている言語は舞台となる国や場所を特定されないよう「インタースラーヴィク」という人工言語が使われていると言うのが興味深い。
様々な意図があっての人工言語が使われているんですが、この辺りがなんか厨二病的で、こう言う味付けは興味をそそるんですよねw
各章でそれぞれの地での出来事が語られますが、最初から全開で飛ばしてくるw
疎開地で虐められる少年のペットのフェレットがいきなり焼き殺されるシーンはこちらの理解の準備が出来てない状態からいきなりカマしてくる。
もう頭をいきなりぶん殴られた様なショックで理解が追いつかない。
そこに叔母が放った一言が「一人で歩いている方が悪い」。それだけで東欧でのユダヤ人の現状を表してます。
叔母が病死し、家が全焼した事で生きる為の流浪の旅に出る少年が出会う先での人々も一味も二味も変わった人物ばかり。
もういろんな意味で磁場が狂っている様な様は何が常識で何が非常識かが判断し難い様な感覚に陥ります。
少年を悪魔の使いとする村人と悪魔払いの老婆。
自分の女房と使用人に敵意と疑心暗鬼の目を向ける老主。
鳥売りの男と淫女。
司教から少年を引き取るがその実は少年を慰みモノとする男。
少年に留まる事を許すが、少年を性の対象とする淫女。
一時的に少年を保護し、一人の男として扱う軍人。
少年を万引き犯と決めつける中年男性。
助けられた軍人の辺りから少年の心境が変わってきますが、明らかにターニングポイントとなるのは少年を慰めモノにする男と女の章。
性に纏わるエピソードが少年の心境にきっかけを与え、トラウマたる傷跡を残す辺りが生々しい。
この映画は暴力を様々に見せつけながら、精神的な揺さぶりをかけてくるから、タチが悪いw
でも、いろんな人が全て正常ではなく、様々な情勢の中でエゴを剥き出す様は人間らしいと言えば人間らしく、気になって目が離せないんですよね。
それを映像美で成り立たせてくるから、観た後も余韻に浸れるんですよね。
ラストは…どうなんだろうか。ハッピーエンドと言えばハッピーエンドなんだけど、ラストに至るまでの怒涛の構成に比べると個人的には割と無難な着地点に感じます。
かと言って、バッドエンドを望んでいる訳ではないんだけど、ちょっと無難かな。
「発禁の書」「途中退場者が続出」と刺激的な煽り文句が並べられていますが、そう言った言葉に負けないだけのパワーはある作品かと思いますが、ただ、結構エグいので覚悟は必要かなw
でも興味と刺激を掻き立てられる作品で、モノクロの映像の美しさに目が奪われる、結構お勧めなダークパワーな作品ですw
21世紀の日本に生きている幸せをかみしめました。
100年くらい前の世界は、今よりももっと強者が弱者を虐げるのが当たり前だったんですね。
いやもう、淡々と様々な種類の暴力を見せられて…主人公と一緒に自分の中が侵食されるような嫌な気分を味わいました。
同時にとても惹きつけられて、最後まで主人公の行く末を見守りました。
この100年で随分人類は進化したように感じますが、21世紀の今でも。
中東で。南アジアで。アフリカで。中国で。
アメリカでも。そして、日本でも。
主人公のように虐げられて、黙って耐えている人はいます。
どうしたらいいのか答えは全然出なかったけれど、心の中にこの気持ち悪さを置いて、考え続けたいと思います。
上映中、退出する方が何人かいました。
「気分が悪くなったのかな?分かるわー」と思いましたが、しばらくして戻って来られたので、トイレかな?
私もこの長さの映画は久々で、姿勢を変えたり、足をくんだり、普段よりいごいごしましたが、やはりお尻は痛くなりました。
でも、飽きずにエンディングまで導かれて、十分な満足感がありました(^^)
帰り、そのままだとしんどくて、今週上映終了の「ギブン」を観ました。
「ギブン」は上映時間59分の作品ですが、どちらも観てよかったと思っています。
映画って、不思議なアートです。
傑作です。
音楽なし台詞ほぼなし。
粛々とモノクロの映像が戦時下の日常の悲惨さを訴え続ける2時間49分。
眼を背けたくなるようなシーンが続く。
動物がぎゃくたいされる。
殺人行為が平然と行われる。
暴行シーン数多。
途中退出する気持ちもわからないではない。
だが、観ている小生も時間の経過とともに段々慣れてくるのか、それほどでも感じなくなってきて・・・
人間って怖い、ほんと、天使にでも悪魔にでも成れる、二面性を持ち合わせてることを実感した。
この作品を理解するために2時間49分は必要不可欠だったんだと思わせました。
1時間30分や2時間では語り尽くせないんじゃないでしょうか?
正直、この映画、全く長く感じなかった。
むしろ、どんどん引き込まれていった。
そして、感動的なラストと
エンディング曲の素晴らしさは筆舌に尽くしがたいものあり。
時間があれば、何度でも観たいです。
容赦のないリアリズム
ひと言でいうと-容赦のないリアリズム-である。ナチス・ドイツによる迫害を逃れて両親と離れて疎開しているユダヤ人の少年。小動物を助けようとするような優しい少年だ。ある出来事で放浪の旅を余儀なくされる。ベルリンの壁崩壊までは東ヨーロッパと言われていた地域である。戦争にすべてを持っていかれ、貧しくて逼迫した生活をするしかない人々。口を利かない少年のことを人々は何故かユダヤ人と見抜き、寝場所と食べ物を与える代わりに重労働を課す。
少年は行く先々でさまざまな人に使われる。集落でシャーマンのように崇められている老婆、猜疑心と嫉妬心の塊のような年老いた牧場主、酒を密造しているホモのロリコン男、色情狂の若い女などだ。「十字は切れるのか?」と少年に訊いた鳥飼いの老人の台詞が印象的である。少年は躊躇いなく十字を切り、カトリック教徒を装う。生きるためには宗教も捨て、ユダヤ人であることも捨てるのだ。
欲望や感情をむき出しで生きる人々と接する中で、少年は人生を学んでいく。ときどき飛行機の編隊が空を飛んでいるのが見える。戦争は少年には関係ない。今夜の雨風をしのげる場所と明日のパンがあるかどうかだけなのだ。
映画は、ユダヤ人で差別を受けているからといって少年を正当化したりしない。自分が助かるために人を見殺しにし、旅に必要なものがあれば暴力で奪う。生き延びるためには他人の靴さえ舐めることを厭わない。靴を舐めるのは犬だ。犬は人間ではないから殺されず、放り出されるだけだ。善も悪もひっくるめて少年の人生である。
優しさとの出逢いがまったくなかった訳ではない。年老いた牧場主の妻、カトリックの司祭、年配のナチス・ドイツ兵士などが、一瞬ではあるが情けをかけてくれる。しかし殆どは少年を便利に使ったり、欲望のはけ口にしたりするだけだ。意味なく殴る人間もいる。最初はただ無抵抗に殴られるだけだった少年も、いつしか反撃の手段を得る。迷いも躊躇いもない。
ユダヤ人はナチス・ドイツが支配する地域においては塗料を塗られた鳥と同じだ。仲間に入れてもらえず、迫害されて殺される。だから生き延びるために自分を親戚に預けた両親のことは理解できる。しかしその行動を正当化しようとすることが許せない。それは嘘だからだ。
ラストシーンで漸く少年の心に余裕が生まれる。父の腕に刻まれた数字を見て、少年は少しだけ優しさを取り戻す。過去を正当化することは出来ないが、これからも生き延びることは出来る。重荷を背負って生きていくのだ。原作者のイェジー・コシンスキは1991年に57歳で自殺した。
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