ロボット2.0 : 映画評論・批評
2019年10月21日更新
2019年10月25日より新宿ピカデリーほかにてロードショー
驚きと興奮の連続。1秒先が予測不能! 驚天動地の傑作にして大怪作
驚異のCG使いで全世界の度肝を抜いたSF超大作「ロボット」から8年、今、インド映画界で一番“何をやらかすかわからない”狂気の映像作家シャンカル監督と、ご存知“スーパースター”ラジニカーントのコンビは、この8年でさらに急激に進化したデジタルVFXと痛快なるイマジネーションの大暴走を武器に、またしてもかつて見たこともない映像のビックリ箱で世界を圧倒する。
ある日突然、すべてのスマホが意思を持ったように人々の手から離れ、空へ飛び出してしまう。そればかりか無数のスマホは合流、合体し、人間を襲い始める。原因は携帯会社の電磁波で命を失った鳥たちの怨念、それを操るのは携帯会社や政府の関係大臣たちへの抗議のために自殺した鳥類学者の悪霊だった…。
そこから始まるのは、“「ロボット」の続編”というイメージから思い浮かぶあらゆる予想の遥か上をいく超絶ヴィジュアル・ワールド。もちろん、世界の危機を救うのはラジニカーントが二役で演じる、天才科学者バシー博士と最強ロボ“チッティ”だ。
SFというよりモンスター・パニック風で始まり、勢力を拡大して猛烈な大怪獣映画となり、「エクソシスト」や「ゴーストバスターズ」も加味されて、クライマックスでは「パシフィック・リム」がアメコミ・ヒーロー映画と戦争するような巨大スケールの驚天動地のバトル・ムービーとなっていく。
ここでは撮影不可能な現実をリアルに再現するのではなく、リアリティも説得力も無視してありえない驚きの妄想世界を映像化するために最新のVFXが駆使される。今、世界中の映画はありきたりな映像で溢れかえっている。VFXだらけの戦闘シーンも群衆シーンも、どれがどれだかわからないものばかり。だが、シャンカル映画のVFXは過去の様々な映画を想起させつつも、いい意味での“異常さ”に満ち、1秒先が予測不能で、上映時間中驚きと興奮が連続する。もちろん彼の映画ならではのストレートな社会派メッセージも満載だ。
あまりにも見せ場が多すぎて、今回歌と踊りはエンド・クレジットの1曲のみ。シャンカルはまたしても、インド映画どころかどんなジャンルにも当てはまらない、彼にしか作れないとんでもない傑作にして大怪作をものにした。
鳥類学者を演じるのは「パッドマン 5億人の女性を救った男」などのボリウッドのスーパースター、アクシャイ・クマール。VFXが主役といってもいい作品だし、ラジニもアクシャイも濃厚メイクで地顔はほとんど見せないが、それでもこの2人がとんでもない演技力を持つ名優なのは一目瞭然、その演技合戦も泣かせる見せ場となっている。
(江戸木純)