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解説

「火花」で芥川賞を受賞した又吉直樹の2作目となる同名小説を、主演・山崎賢人、ヒロイン・松岡茉優、行定勲監督のメガホンで映画化。中学からの友人と立ち上げた劇団で脚本家兼演出家を担う永田。しかし、永田の作り上げる前衛的な作風は酷評され、客足も伸びず、ついに劇団員たちも永田を見放し、劇団は解散状態となってしまう。厳しい現実と理想とする演劇のはざまで悩む永田は、言いようのない孤独と戦っていた。そんなある日、永田は自分と同じスニーカーを履いている沙希を見かけ、彼女に声をかける。沙希は女優になる夢を抱いて上京し、服飾の大学に通っている学生だった。こうして2人の恋ははじまり、お金のない永田が沙希の部屋に転がり込む形で2人の生活がスタートする。沙希は自分の夢を重ねるかのように永田を応援し、永田も自分を理解し支えてくれる沙希を大切に思いながら、理想と現実と間を埋めるかのようにますます演劇にのめりこんでいく。

2020年製作/136分/G/日本
配給:吉本興業
劇場公開日:2020年7月17日

スタッフ・キャスト

監督
原作
又吉直樹
脚本
蓬莱竜太
製作
岡本昭彦
共同製作
藤原寛
岩上敦宏
藤田浩幸
古賀俊輔
吉澤貴洋
飯田雅裕
吉村和文
エグゼクティブプロデューサー
坂本直彦
チーフプロデューサー
古賀俊輔
プロデューサー
谷垣和歌子
新野安行
アシスタントプロデューサー
清水理恵
音楽プロデューサー
田井モトヨシ
キャスティングディレクター
杉野剛
ラインプロデューサー
城内政芳
撮影
槇憲治
照明
中村裕樹
録音
伊藤裕規
美術
相馬直樹
装飾
田口貴久
スタイリスト
高山エリ
ヘアメイクデザイン
倉田明美
編集
今井剛
音響効果
岡瀬晶彦
音楽
曽我部恵一
VFXスーパーバイザー
進威志
スクリプター
工藤みずほ
助監督
木ノ本豪
制作担当
鎌田賢一
岡本健志
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(C)2020「劇場」製作委員会

映画レビュー

3.5山崎賢人の汚れた目

2020年8月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

周りにいたらさぞ迷惑だろうけどちょっと人生をのぞいてみたいと思わせる人っていると思う。この作品の主人公の2人はまさにそういう人物だ。一人は売れない劇作家。前衛的で理解しづらい作品ばかりを作って、日々の生活もままらない。そんなだらしない男をなぜか懸命に支えてしまう女性。男は女に頼りっきりでどんどんダメになり、女も男に依存し続け、夢も見失い駄目になっていく。二人が一緒にい続けることにメリットはない、だだ、互いに引き付ける引力のようなものはある。
主演の山崎賢人と松岡茉優が良い芝居をしている。二人ともこういう役柄に挑むことはあまりないだろうが、しっかりものにしていた。特に山崎賢人のやさぐれた感じはとても良かった。監督は彼の澄んだ目をどう汚すかを考えたそうだ。
舞台が下北沢の街の雰囲気もとてもリアルで、久しぶりに下北を散策したくなるような作品だった。あの街は演劇の街として有名だが、実際に多くの演劇関係者が暮らしている。街に暮らす人々のリアルな息使いを感じられる作品だった。
文学も映画も良いロールモデルを示すばかりじゃなくても良い、だらしない人間を見ることも学びである。

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杉本穂高

4.52020年を代表する意欲作

2020年8月10日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり公開延期になった作品が数多くあるが、そんななかにあっても邦画は非常に充実している。
又吉直樹原作小説を行定勲監督のメガホンで映画化した「劇場」は、山崎賢人と松岡茉優のベストパフォーマンスと形容してしまえるほど生々しい演技に、思わず唸らされてしまう。
夢を追いかけたことがある人ならば、誰もが共感し、そして身悶えるほどに切なさを味わう。
見た人それぞれが自らの過去と再び対峙し、わかっちゃいるけど追体験させられるような感慨にとらわれる。

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共感した! 18件)
大塚史貴

4.0メタ化の仕掛けが行定勲監督らしい

2020年7月18日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

悲しい

又吉直樹のデビュー小説にして映画化第1弾の「花火」と同様、妥協せずオリジナリティを追求する表現者の葛藤や焦燥を描く点は共通するが、「劇場」の特徴は恋愛物として書かれたこと。独善的であるがゆえに創作でも対人関係でも行き詰り鬱屈していく男と、そんな男を天使のように愛し支え続ける女の組み合わせは、現実にも物語にもよくあるが、エピソードの具体性と、山崎賢人と松岡茉優の渾身の演技によって、ありきたりでない生々しさを伴う(それゆえ大勢に自身の体験を思い出させる)格別な映画になった。

原作のストーリーをメタ化するラストの仕掛けは、題の“劇場”に新たな意趣を重ねる点も含め、行定監督らしさを感じさせる。ただ、又吉の2作に共通する「夢破れし者への優しさ」という視点を弱めたかとも思う。あと松岡は確かに巧演だが、演技の上手さが透けて見えてしまい、原作の沙希にあった無垢さ、ピュアさは再現しきれなかったか。

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高森 郁哉

4.0「舞台」が好き「役者」が好き「リアリティー」が好き等、気になる要素があれば是非見てみてほしい作品

2020年7月16日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

当初は、それなりの規模で劇場公開されるはずだった作品ですが、新型コロナウイルスの影響で、「劇場」というタイトルなのに、ほんの一部の「劇場」でしか見られなくなってしまいました。これも、いつか歴史的な1ページになるのでしょう。
とは言え、本作が万人受けするのか、というと、そういうわけでもないのかもしれません。
理由は、ベースが主人公の山崎賢人が扮する永田と、ヒロイン役の松岡茉優が扮する沙希の2人の物語、ということがあると思います。
もちろん本格的な「映画」なのですが、「舞台」に近い構造を持っている作品のようにも感じました。
そのため、2人に入り込める意味では他の作品より効果的に仕上がっています。
演劇に心血を注ぐ、どんよりとした天才肌の劇作家兼演出家を山崎賢人が人生初のヒゲを生やして臨んでいたり、そんな「成功」という夢を叶えようとする彼を健気に支える難役に松岡茉優が臨んでいたりと、これまでの、どの作品とも違った2人を見ることができます。
「夢」と「現実」の狭間で、もがき続ける2人の7年間は真に迫るものがあります。
2人の出会いがユニークである一方で、その後の「作家あるある」なディープな描写は、それを体験している行定勲監督だからこそ描けるわけで、監督自身が映像化を熱望したのも理解できます。
本作は、2019年の6月から7月にかけて撮影されたようですが、舞台となる下北沢の小劇場は常に使われていて借りることができず、結局スタジオに小劇場を作ったそうです。
それもあってか、ラストの仕掛けは、私は「映画」と「舞台」が見事に融合した凄いものになったと思っています。
7年間を凝縮した山崎賢人と松岡茉優の名演技と、「舞台」にも力を入れている行定勲監督の演出によって、「劇場」というタイトルに相応しい新しい映画が生まれたような瞬間を体験できました。

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共感した! 41件)
細野真宏