Winny

劇場公開日:

Winny

解説

ファイル共有ソフト「Winny」の開発者が逮捕され、著作権法違反ほう助の罪に問われた裁判で無罪を勝ち取った一連の事件を、東出昌大主演、「ぜんぶ、ボクのせい」の松本優作監督のメガホンで映画化。

2002年、データのやりとりが簡単にできるファイル共有ソフト「Winny」を開発した金子勇は、その試用版をインターネットの巨大掲示板「2ちゃんねる」に公開する。公開後、瞬く間にシェアを伸ばすが、その裏では大量の映画やゲーム、音楽などが違法アップロードされ、次第に社会問題へ発展していく。違法コピーした者たちが逮捕される中、開発者の金子も著作権法違反ほう助の容疑で2004年に逮捕されてしまう。金子の弁護を引き受けることとなった弁護士・壇俊光は、金子と共に警察の逮捕の不当性を裁判で主張するが、第一審では有罪判決を下されてしまい……。

金子役を東出、壇弁護士役を三浦貴大がそれぞれ演じるほか、吉岡秀隆、吹越満らが脇を固める。

2023年製作/127分/G/日本
配給:KDDI、ナカチカ
劇場公開日:2023年3月10日

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(C)2023映画「Winny」製作委員会

映画レビュー

3.5当たり前の自由…

2023年4月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「緊張感のある現場だった」…出演のひとりである親友からの一言がなかったら、僕はこの映画を観ていなかっただろう。

この作品には、何よりも先に、金子勇氏を始めとする実在する人物に対する敬意と配慮が行き届いている。これは悪人は誰かを追求するのではなく、一人の無垢なるクリエイターが、なぜ、こんな体験をせねばならなかったのかを呈示し、いかにして「無実」を証明し、「当たり前の自由」を取り戻したのかを描くヒューマンドラマである。

映画表現というリアルに挑戦する試みとして、並走する愛媛県警の実直な警官の描写も側面から効いてくる。過剰の説明を避けて、吉岡秀隆演じる警官の目に宿る腐敗への嫌悪と恐れを必要最小限の情報で見せる。
体重を増やすことで役柄に同化したかのような東出昌大と三浦貴大も好演。個人的には、勝訴率の高い弁護士を演じた吹越満の芝居が良かった。

朝日新聞に掲載されたひとつの記事を端緒に、今や当たり前になったオンライン環境の黎明期を現出させた松本優作監督は20代でこれを撮った。日本映画もまだまだ可能性を秘めている。

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高橋直樹

4.0日本映画の意欲作

2023年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

近年の実話を基にした作品自体が日本映画では珍しいうえに当事者も実名で登場する意欲作だ。事件の経過もすごく調べられていて、きちんと社会派映画としても機能していて、日本の警察・検察、そして司法の問題点をあぶりだしつつ、人間ドラマとしても完成度が高い。
この作品は、WinnyというP2P技術を用いたソフトを巡る物語ではあるが、技術の妥当性やディテールを細かく描くものではない。それよりも、日本の司法の異様さをあぶりだす裁判映画であり、法廷ドラマとして構成している。一番の見どころは迫真の法廷劇である。特に秋田弁護士による警察の尋問シーンがすごくエキサイティング。人質司法によって捏造された証拠の問題や、メディアを利用した悪質なイメージ作り、有罪率99&の日本の司法のどこがまずいのかをわかりやすくストーリーの中に組み込まれていて見ごたえがある。
この映画を見ると、日本の冤罪を生みだす仕組みが良くわかる。最近も袴田事件の再審が決定したニュースなどがあったが、冤罪を生まれる土壌は、21世紀になっても温存されていて、最新テクノロジーをめぐる事件でも暗躍していたのだ。

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杉本穂高

3.5実話ゆえの苦い後味と、過ちへの対処について

2023年3月9日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

1990年代からIT系ニュースサイトで英日翻訳に関わっていたので、主に米国や世界全体でのナップスターやビットトレントなどP2P型ファイル共有ソフトの普及や問題についてはある程度把握していた。だが日本の状況については相対的に関心が薄かったため、Winnyを開発した金子勇氏の逮捕や裁判の経緯などはそれなりに報道されたはずだがほとんど記憶になく、本作で初めて知ったことも多くていろいろ考えさせられた。

Winnyは結果的に映画や音楽などの著作物の違法アップロードと違法コピーを招いたのだが、では共有ソフトの開発者を著作権法違反ほう助の罪に問えるかどうかが主な争点であり、本作の大きな要素にもなっている。デジタル技術の進歩に法整備が追いつかないのは日本だけの事情ではないにせよ、才能ある開発者が斬新なソフトウェアやサービスを作った結果、意図せずして法に触れる使い方をされてしまったケースは少なくないだろう。金子氏は天才プログラマーだがいわゆる“専門バカ”で、一般常識が足りない人物として描かれている。もし彼が、2ちゃんねるという場所を介してファイル共有ソフトを公開した場合に著作権侵害に使われる可能性を予見できていれば、長年に及ぶ訴訟に人生の貴重な時間を浪費することなくデジタル革新に貢献できていただろうにと惜しまれる。

サイドストーリーとして描かれるのが、愛媛県警の裏金問題を内部告発した仙波敏郎・元巡査部長の話。本筋のWinny問題との関係性がやや弱いのは難点だが、興味を持ってWikipediaの仙波氏の項を見たら、県警を定年退職後に鹿児島県阿久根市のワンマンな竹原信一市長の専決処分で同市の副市長に就任し、4か月後に市長が失職して市長職務代理者になり、さらに1カ月後には解任されるという、なかなかに波乱万丈な人生を送っている。仙波氏の人生にフォーカスしても一本の映画が撮れそうだ。

最後にもう一点。罪に問われ法廷で裁かれることになった人物を東出昌大が演じることに、「寝ても覚めても」で共演した唐田えりかとの不倫騒動と杏との離婚、仕事の激減に思いを馳せる人も多かろう。東出本人も重ねられることは承知の上で引き受けた役だろうし、共演陣と製作スタッフらも東出を窮状から救いたいという願いをそれぞれの演技や仕事に込めたのではと想像する。それ自体の是非をここで書く気はないが、日本で芸能人同士の不倫騒動が起きると、復帰までの期間や仕事量の戻り具合から推測して、男性に甘く女性に厳しい傾向があるのは確か(川谷絵音とベッキーの件もしかり)。こんなところにも日本社会での男女不平等が表れており、処し方についてもっと議論され、改善されるべきだと常々思っている。

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高森 郁哉

5.0タブーに触れられる「幸せ」を満たせてくれる作品

2024年4月23日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

世の中の情報は、操作されている。いかにも陰謀論的言い方だが、私たちが「思う」ことはすべて誰かによって誘導されているのではないかと思ったことはあるだろうか?
実話の金子さんがなぜ逮捕されたのか? これがこの作品の重要なパートだ。
警察による尋問で行われた「誓約書」。裁判で勝つための工作。無知な金子に対する彼らの手法はどんな事件に対しても行われているのだろうか?
警察の裏金工作は、愛媛県警の「一不祥事」としてのみだされているが、これがすべての警官によって為されていたというのが衝撃的だった。
余談だが、この裏金が何に利用されているのか? それは、現署長が異動する際に渡される「退職金」である。 以前私は東京都職員で某機関に勤務していたが、その際聞かされた事実だ。警察ともなれば全職員がそれに加担しているというのは衝撃的だった。
当然すべての「議員」が自分のためにそれをしているのも、理解できる。
さて、
事件は警察内部の機密情報がWinnyによって漏洩したことで、その開発者が「悪い」と「決められた」。
すべてのメディアも警察発表通りに記事にして、Winnyが悪いと決めつけ、その報道が私たちの「思い」にすり替えられているのだ。これが陰謀論界でいうところの「TVは洗脳道具」だ。
似たような事件は当時の安倍首相のときに、官邸の屋上で発見されたドローンだ。
このとき、政府もその話を鵜呑みにしているメディアも一旦はドローン禁止路線に走ったものの、その後の経済団体の圧力でルール設定することで落ち着いた。この事件の背景に、このWinny裁判の影響はあったのだろうか?
作中に出てくるWinnyとウィルス。問題はWinnyではなく、ウィルスだ。そして当時のアナログ長老たちはそれが何かさえ理解できていない。
「ナイフによる刺殺事件で、なぜナイフを作ったものが裁かれるのだ」というセリフはとてもこの事件の争点をわかりやすく説明していてよかった。
警察は何を事件とし、何を裁きたいのか自らで決めている。
「事件は会議室で起きている」あの有名な映画のセリフは正しいと思う。
警察の中にもいる正義。仙田警察官は、愛媛県警の裏金問題をリークした。
これによって一般警察官が裏金作りを加担させられることはなくなったと思いたい。しかし、議員同様、おそらく「総務主任以上」のレベルでそれは今でも行われているはずだ。
そして「トカゲの尻尾切り」 「いつでも真実は闇の中」こそが真実だろう。
このようなタブーを映画として広く世の中に出せるのは、自由報道ができる国第80位の日本において、まだ希望のあることだと感じた。

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R41
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