キーパー ある兵士の奇跡
劇場公開日:2020年10月23日
解説
イギリスの国民的英雄となった元ナチス兵のサッカー選手バート・トラウトマンの実話を基に描いたヒューマンドラマ。1945年、イギリスの捕虜となったナチス兵トラウトマンは、収容所でサッカーをしていた折に地元チームの監督にスカウトされる。その後、名門サッカークラブのマンチェスター・シティFCにゴールキーパーとして入団するが、元ナチス兵という経歴から想像を絶する誹謗中傷を浴びせられてしまう。それでもトラウトマンはゴールを守り抜き、やがてイギリスの国民的英雄として敬愛されるように。そんな彼には、誰にも打ち明けられない、秘密の過去があった。主人公トラウトマンを「愛を読むひと」のデビッド・クロス、妻マーガレットを「サンシャイン 歌声が響く街」のフレイア・メーバーがそれぞれ演じた。
2018年製作/119分/G/イギリス・ドイツ合作
原題:The Keeper
配給:松竹
スタッフ・キャスト
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2020年10月30日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
元ナチスの兵士がイギリスで捕虜となり、収容所でサッカーに興じていたところをスカウトされ、プレミアリーグでスタープレイヤーになる。このまるで、ありそうでなさそうな実話を映画化した本作は、ナチスに対するイギリス国民の憎悪と偏見を好プレーによって跳ね返した主人公の、苦難の道程を詳かにすることで、人は与えられた運命に決して抗うことはできないことを描いている。同時に、戦争で犯した罪の重さは、長い時を経てもなお、振り払うことが困難であることも伝えている。それは、サッカー選手のドラマチックで感動的な半生に寄り添いながら、この物語に自戒の意味を込めたドイツ映画の懐の深さを思い知る瞬間だ。そして、これが戦争とスポーツを題材にした1級のエンターテインメントに仕上がっているところが凄いと思う。戦争を絶対に美化せず、不幸な時代を生きた人々の人生を丹念に繰り返し掘り起こすこと。それが映画に与えられた使命だと改めて痛感させられる作品である。
2020年10月29日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
劇映画でサッカーを描く際、キーパーは案外良いポジションであることを本作が証明した。現実の試合ではストライカーや攻撃を組み立てるミッドフィルダーが注目されるが、俳優が流れの中で妙技を再現するのは難しい。その点キーパー役ならある程度の特訓で、際どいシュートをジャンプして弾いたり、ドリブルや浮き球に体を張ったりと、断片的な好プレーをカット編集でテンポよく見せやすいからだ。
元ナチス兵が英プレミアリーグで活躍し国民的英雄になり、敵同士だった英独の平和の懸け橋に…という展開は感動的だが、大衆の心を動かすスポーツの力を如実に示した例でもある。古代ローマの闘技会以来、人間同士が闘う見世物は憂さ晴らしや現実逃避になる娯楽だった。観戦は闘争心に響き高揚をもたらすが、一種の代償行動として暴力衝動や憎悪の解消に役立つ。ただしそうしたスポーツの力は、権力者に悪用されもし、諸刃の剣であることを忘れるべきではない。
2022年7月19日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
人として戦時の行いに、罪の意識に苛まれながらも、
偉大な妻、チームに見出された偉大なヒーロー。
彼を認めてくれるひとが一人欠けててもなし得なかっただろう。
2022年7月17日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
2018年(イギリス/ドイツ)監督はドイツ人のマルクス・H・ローゼン
とても良作だと思います。
第二次世界大戦後のイギリスで活躍したドイツ人ゴールキーパーの実話です。
《スポーツに国境はない》
《スポーツはかつて敵国だっ人々も、絆で結ぶ》
そんなことを改めて感じる作品でした。
勝利の美味を味あったら、パート・トラウトマン(デビッド・クロス)が、イギリスの敵国ドイツの兵隊で、捕虜としてイギリスに来たことなんて、ちっぽけなこと!!
(いえいえちっぽけと思えない人も沢山居たのです)
スカウトされた一部リーグのマンチェスター・シティFCでは、大々的な反対運動が起こります。
「ナチスにゴールを任せるのか!!」とか
「ドイツ野郎、国へ帰れ!!」とか、10万人のデモが起こるほどでした。
しかしパートはゴールを死守する守護神として、反対派の心をほぐして行きます。
ユダヤ人のラビ協会からも、彼を認める声明が出されます。
後に妻となったマーガレット(ブライア・メイバー)も勇敢でした。
結婚することじたいが多くの障害があった筈です。
けれどマーガレットの父親はバートを一番に見出した地元サッカーチームの監督だったのです。
マーガレットとバートは惹かれあい愛し合うことに。
パートを演じたデビッド・クロスは2009年作の「愛を読む人」の主役の少年でした。
30歳になった今、昔の面影そのままに残す彼は素敵です。
戦時中のトラウマに悩むバート。
そして突然襲う不幸。
しかし、ゴールを守り続けたバートは国民的英雄となり大英帝国勲章を授与されます。
イギリスとドイツの架け橋となったサッカー選手の彼は、
イギリスとドイツのサッカー殿堂入りの選手にもなりました。
チームメイトは彼を「真の紳士だった」と称えています。