家族を想うとき

劇場公開日:

家族を想うとき

解説

「麦の穂をゆらす風」「わたしは、ダニエル・ブレイク」と2度にわたり、カンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールを受賞した、イギリスの巨匠ケン・ローチ監督作品。現代が抱えるさまざまな労働問題に直面しながら、力強く生きるある家族の姿が描かれる。イギリス、ニューカッスルに暮らすターナー家。フランチャイズの宅配ドライバーとして独立した父のリッキーは、過酷な現場で時間に追われながらも念願であるマイホーム購入の夢をかなえるため懸命に働いている。そんな夫をサポートする妻のアビーもまた、パートタイムの介護福祉士として時間外まで1日中働いていた。家族の幸せのためを思っての仕事が、いつしか家族が一緒に顔を合わせる時間を奪い、高校生のセブと小学生のライザ・ジェーンは寂しさを募らせてゆく。そんな中、リッキーがある事件に巻き込まれてしまう。2019年・第72回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。

2019年製作/100分/G/イギリス・フランス・ベルギー合作
原題:Sorry We Missed You
配給:ロングライド
劇場公開日:2019年12月13日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第72回 カンヌ国際映画祭(2019年)

出品

コンペティション部門
出品作品 ケン・ローチ
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(C)Sixteen SWMY Limited, Why Not Productions, Les Films du Fleuve, British Broadcasting Corporation, France 2 Cinéma and The British Film Institute 2019

映画レビュー

5.0バラの花どころかパンも買えなくなった労働者

2020年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ケン・ローチは60年間、ずっと同じ問題意識で同じテーマを取り続けている作家だが、近年ますます彼の問題意識が社会の中で重要になってきているような気がする。
本作は前作『わたしは、ダニエル・ブレイク』の取材でフードバンクを訪れた時に、職があるのに食べ物に困っている人が多くいることに気が付き、本作を制作することにしたと言う。ケン・ローチはかつて「ブレッド&ローズ」という映画を作ったことがある。ロスのビル清掃人のデモを描いた作品だが、タイトルは、「生きるのに必要なパン(ブレッド)だけじゃない、人生を華やかにするバラの花(ローズ)も買えるだけの賃金が欲しいんだ」という意味のデモのスローガンから来ている。しかし、本作のきっかけになったフードバンクで、バラの花どころかパンを手に入れるのも困難な人々がいる現実に直面したわけだ。労働者階級にとって、社会は確実に悪くなっている。そんな理不尽な状況を引き起こす経済システムに対する怒りに満ちたパワフルな作品だ。

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杉本穂高

4.5原題の含意、問題への怒り

2019年12月29日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

悲しい

原題の"Sorry We Missed You"は宅配業者の不在票の文言からとられていて、「あいにくご不在でした」といった意味。日本の事務的な不在票より人間味を感じさせるフレーズだが、宅配の文脈を離れるなら「あなたがいなくて残念」ともとれる。家族と一緒に過ごし幸せになりたい、しかしそんなささやかな夢のために働くことが逆に家族との時間を奪っていく…という、現代の労働環境をめぐる問題に翻弄される家族の思いも込められていると感じた。余談めくが、ピンクフロイドの名曲の題『Wish You Were Here(あなたがここにいてほしい)』と対になるようなフレーズでもある。

前作の「わたしは、ダニエル・ブレイク」もそうだが、ケン・ローチ監督は現代社会の構造的な問題に苦しめられる弱者を見つめ、彼らに寄り添い、静かな怒りを映画で表明する。堪らないラストが記憶に刻まれ、いつまでも感情を揺さぶり続ける。

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共感した! 34件)
高森 郁哉

4.5ありったけの尊厳を込めて描かれた珠玉の家族ドラマ

2019年12月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ケン・ローチ映画では登場人物の誰もが幸せになりたいと願い、努力する。しかし、幸せは近づくどころか、遠のいているようにさえ思える。次第に笑顔も消えていく。これを「うまくやらなかった本人のせい」と片付けることもできるだろうが、ローチはそうはしない。システムそのものがおかしいのではないか、と社会全体に痛烈な疑問を投げかけるのだ。

本作で「フリーランス」が描かれるとき、フリーランスで働く私自身も他人事とは思えなかった。その存在は時に舐められ虐げられ、家族の絆も引き裂かれそうになる。それでもなお彼らが「善くありたい」と願い続ける姿を、ローチはありったけの尊厳を持って描く。我々がローチ作品に心を動かされるのもまさにこの部分だ。時にユーモアすら挟み込みながら深刻な物語を絶望させずに伝える。これほど厚い魂と筆致を兼ね備えた映画作りができるのは、世界広しといえどローチくらいしかいないと、そう強く思うのだ。

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牛津厚信

5.0右?左?資本主義もまともに歩めない者達に共産主義が聞いて呆れる

2023年9月13日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
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マサシ
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