劇場公開日 2019年12月13日

  • 予告編を見る

「原題の含意、問題への怒り」家族を想うとき AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5原題の含意、問題への怒り

2019年12月29日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

悲しい

原題の"Sorry We Missed You"は宅配業者の不在票の文言からとられていて、「あいにくご不在でした」といった意味。日本の事務的な不在票より人間味を感じさせるフレーズだが、宅配の文脈を離れるなら「あなたがいなくて残念」ともとれる。家族と一緒に過ごし幸せになりたい、しかしそんなささやかな夢のために働くことが逆に家族との時間を奪っていく…という、現代の労働環境をめぐる問題に翻弄される家族の思いも込められていると感じた。余談めくが、ピンクフロイドの名曲の題『Wish You Were Here(あなたがここにいてほしい)』と対になるようなフレーズでもある。

前作の「わたしは、ダニエル・ブレイク」もそうだが、ケン・ローチ監督は現代社会の構造的な問題に苦しめられる弱者を見つめ、彼らに寄り添い、静かな怒りを映画で表明する。堪らないラストが記憶に刻まれ、いつまでも感情を揺さぶり続ける。

高森 郁哉