ひとよのレビュー・感想・評価
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女優陣が凄い
父から虐待を受けている子供たちを助けるために、父を殺した母。ショッキングな設定だが、児童虐待がクローズアップされる中で、現実に起こり得るかもと感じてしまう。
設定は「ビジランテ」と共通しているが、アクションで見せるより、子供たちの感情により焦点を当てて、丁寧に描いている。
とにかく俳優陣の演技、特に女優陣が凄い。冒頭から、田中裕子の表情、セリフ回し含めて、存在感が圧倒的。松岡茉優もとても良いが、周りの筒井真理子、韓英恵、MEGUMIもみな見せ場と味わいがある。男優陣も熱演しているが、佐々木蔵之介の力演ぶりはちょっとフィットしていなかったかな。
シリアスな中でも、ふっと笑いがこぼれるエピソードを入れるなど、緩急のある演出で、これまでの作品と比べると薄味ではあるが、白石和彌ならではの後味の良さがある。
アカデミー賞?
映画館にわざわざ足を運ぶからには、
それなりの対価が欲しい。
観終えて長嘆息するのは本当に嫌なのだ。
だから、暗く落ち込みそうな映画は予め避ける。
これはそんなタイプの映画かと思ったが、
妻がどうしてもと言うのでお付き合い。
昼食後の時間帯で多分寝るかなと思っていたが、
最後まで眠くなることはなかった。
では、おもしろかったかというと、
そこまで心揺さぶられることはなかった。
一番印象に残ったのは次男の行動が、
我が家の息子のそれに酷似していたこと。
ストーリー自体に見るべきものはなかった。
殺されても仕方ない、死ねばいい、
そんな人間はいない!
何人の命も地球より重い!
などとは全く思わない。
この父親も殺されて然るべきと思う。
そして、殺した母親は最大限情状酌量され、
子供たちは手厚く保護されるべきだ。
それが社会の趨勢だろう。
それなのに社会の悪意を全面に出しているところに、
この映画に対する違和感がある。
シンパシーを感じない。
時に「覚悟」などのキーワードを散りばめるが、
心には響かない。
上記のような煽りが前提にあるからだ。
それでも評価が比較的高いのは、
俳優陣の演技にある。
特に、松岡茉優は煌めいていた。
社会派の映画ならばこそ、
もう少しリアリティと深みが欲しかった。
素晴らしい演技
渋谷シネクイント トークショー よかったです。始まってすぐに映画の中に引き込まれました。私のピークはその始まって20分間くらいの間。ただ2時間以上ダラダラ進んだ感じは全くしませんでした。15年という月日が過ぎた事は分かるのですが、あっという間で、その間の苦労を感じず、母親との再開の気持ちが分かり難かったです。泣きそうになるシーンが何回かあり、実際泣いている人が大勢いらっしゃいました。私が泣かなかったのは、あまりにも作られたようなストーリーに感じ、自然な家族感が感じられず、重い内容を詰め込みすぎているように思ったからです。ただ映画が終わった後、ほのぼのとかスッキリ感まではないけれど、嫌な感じは残らずよかったと思いました。何回か笑えるところがあったのもよかったです。役者さんは全員素晴らしい演技をされていました。
止まっていた歯車が回り始めた
不器用な母の不器用な愛
母がある日、父を殺した。しかし、その父は暴力男で子供たちを苦しめていた存在だった。
夫の暴力に対して、行政や誰かに頼ることができなかった母は、突発的なのか、今まで秘めていたのか、暴力による暴力の解決をしてしまったのだ。
事故だと言えば済んだかもしれないが、不器用な母は、自分がしてしまった「正しくない」ことを警察に自ら出頭することで子供たちに「正しい」ことを伝えたかったが、そのことで結果的に子供たちの人生に重荷を残してしまったことで、別の苦しみを生んでしまったことも実感する。
そして、15年後に戻ると言った母は15年後にその言葉の通り戻ってきた。何故、本当に戻ってきたのか…それは、不器用な母なりの償いでもあったのだと思う。
母自身もあの時してしまった「正しいくないこと」は「正しいこと」に自分の頭の中で変換する必要があったのだと思う。
自分が崩してしまった家族を再生させるため戻ってきた母は、何からしていいのかわからず、とりあえず日常の日々をこなしていく中で、子供たちに寄り添っていくが、やはり昔からの不器用な母のままだった。
子ども達の問題に直面したとき、「どうにかしてあげないといけない」という母としての意思に反して、何もできない不器用な自分へのもどかしさを表すシーンが過去と現在のエロ本を万引きシーンだ。このシーンが母の子どもへの愛の不器用さを象徴的に見せている。
子どもたちも、父の暴力の日々から救ってくれたという思いとは別に殺人を犯した母への批判や嫌がらせに苦しめられて育ってきた事実もある。その間でどうしていいのか、どう頭の中で処理していいのかがわからない。
答えも出口もない問いが、それぞれの中でぐるぐるとループしている様でもあった。結果的に子供たちの抱えている問題は、あまり解決されていないが何か引っかかっていたものが、少しだけほどけた様にも感じた。
人生は続くし、まだ完全には許せないし、許せるかもわからないけど、過去のしがらみで足止めをくらっていた人生もまた人生として受け入れて、母と共に生きていくしかないのだということを感じた。
一夜…ただのよる
重い内容なので、捉え方も様々だろうなと思います。
素直に、長女、長男の嫁、母親の立場、で観ることが出来ました。
もっと言い争いや反発しあうのかと思いました。
私の父親も酒乱で、暴力と暴言は日常茶飯事。夜中、庭を走り逃げた事も、警察が家に来た事もあり、何度も殺されてしまうのではないかと、怖い夜を過ごしていました。離婚しない母親を憎んだし、色々考えもしました。
だから、稲村家の母親を軽蔑する事は出来ませんでした。
でも、誰にも暴力はされない、自由になれる、何にでもなれる、は今はそうでも未来はちょっと違ったようでした。
最後のほうで、
他の人にとってはただの夜でも、自分にとっては特別な夜、それでいいじゃない。
みたいなセリフ、なんか胸にきました。
色々な夜があり、色々な人がいる。
俳優陣の演技に助けられた映画
ひとよ
邦画だね!
俺がいたんじゃお嫁に行けぬわかっちゃいるんだ妹よ♪
男はつらいよシリーズ、
昭和のお茶の間の人気番組、
時間ですよ→寺内貫太郎一家
→ムー→ふぞろいの林檎たち。
そんなファミリー向けコメディ作品の、
匂いは1ミリも予想していなかった。
しかし、1ミリだけあった。
その1ミリこそが、類似作品を大差で引き離す、大きな1ミリであり、
リアルで滑稽でバカでカッコ悪い人間たちの空間をくっきりと縁取りする消臭リキー〜になっていた。
長女のセリフ・・の後の捨てゼリフ、
従業員のひとこと、態度、
このわからないくらいのコメディ感。
このタクシー会社は、
帝釈天参道の、とらやか⁈
もちろん、その空気の一枚内側には、
父殺しという重過ぎる圧力がかかっているので、笑えないし、ニヤリともさせてくれない。
デラべっぴんの母娘
と
デラおとこまえの長男次男、
デラカッコ悪いカッコイイ従業員、
♪奮闘努力の甲斐も無く
今日も涙の今日も涙の日(ひとよ)が落ちる
日(ひとよ)が落ちる♪
スジ、ヌケ、ドウサ、
全てが素晴らしい、
デラ傑作でした。
絶望×絶望=希望
田中裕子を観に行って松岡茉優に魅入られて帰る。
田中裕子は素晴らしい。こういう枯れた役は間違いがないのが観る前からわかっていたが、やはり見届けようと観にいって、松岡茉優に魅入られてしまう。
万引き家族以来吹っ切れたように女優力がグングン上がっていてこれからもっと凄い女優になること間違いなし。
この救いようのない重い空気の世界の救いになってるのが松岡茉優の演じる娘と、タクシー会社の社長。
この二人がいなかったら陰鬱すぎて観ていてしんどいと思う。
兄弟は三者三様の立場であるのも面白い。二人兄弟でも四人兄弟でもダメだ。
三人というのが絶妙。
佐々木蔵之介演じるタクシードライバーの絶望が本題に絡み合って、絶望×絶望=希望
となるところで、親子の絆というのは底知れないなと思う。
マイナスとマイナスを掛け合わせてプラスになってしまう感覚。
親を恨んだり、境遇を恨んだりして生きても何も生まれない。
辛い過去は忘れられはしないけど、恨みは水に流すことは出来るんだな…
そういう希望を感じさせる良作。
生きるって辛いことだらけだけど、ひとよの夢があるから生きていけるのかも。
佐々木蔵之介のタクシードライバーにもいつか、希望が訪れて欲しい。
15年後も家族は繋がっていた
冒頭から殺人シーンで一気に作品に引き込まれた。
白石監督ならではの暴力シーン、かなりの迫力。この父親から解放されるにはどうするのが1番の方法だったのか。母親にもDVはしていたのか。そして、殺人に善はあるものなのか、殺人を犯した者が罪を償ったからといって、家族であれど素直に受け入れられるものなのか、様々な疑問が浮かんだ。
登場人物の各々に葛藤があるが、みな家族という括りの中で、離婚問題に揺れる長男、介護問題だったり、自分と同じ道を歩み始めてしまった息子など、日常よくありうる問題を抱えている。それぞれが自分の人生が上手くいかない理由を母の犯した事件のせいにしたいのだ。本当は自分自身の問題だとわかっていながら…
母であるこはるだって、私は間違ってないと自分に言い聞かせるように言ってたけど、相当な覚悟と葛藤、苦しみに苛まれたはずだ。作品を鑑賞中、お母さん自殺しないでほしいと願いながら観ていた。
最終的に母の思いは真っ直ぐにではないが、ちゃんと子供達の心に届いていた。雄二が15年経っても、母から貰ったICレコーダーを使い続けていること、母を売った記事のデータを削除したこと。なかなか本心を言わない雄二が言った、父の命と引き換えにもらった自由を絶対に無駄にしたくなかったって台詞に、全てが詰まっていた気がする。
家族って難しい。1番近いけど、本音も言い合えなかったり、大切なことを言葉で伝えられなくて、理解してもらえなかったりする。恨んだり、憎んだりもあるかもしれないが、家族という血の繋がりだけは、どうやっても切ることはできないのだ。
白石監督の実力
なんだこれは
「ひと」が魅力。
疑似家族ではない本当の家族
地味そうな映画だったので見る気が起こらなかったが、レビュー評価が高いので見てみることに。本作は是枝監督の他人ばかりの疑似家族を描いた「万引き家族」の対局を行く作品で、切り離すことができない家族の絆を描いており、家族の起こした問題は家族が引き受けざるを得ないという、別れたら所詮他人、後は国に任せたという「万引き家族」ような安易な問題意識ではなくもっと深い本当の家族を描いており、こちらの方が明らかに出来がいい、フランスで褒められたと言って偉そうにするなと言いたくなる。ここにも松岡茉優が出ていることが面白い。
白石監督の作品は面白かったためしがないので最初は観る気はなかったん...
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