グリーンブックのレビュー・感想・評価
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アメリカの光と影
古き良きアメリカの雰囲気を伝える、サウンドトラックと美しいアメリカ南部の車窓風景、その対比を成す根強い黒人差別をベースに、白人と黒人を超えた友情を全面に出した映画だった。
これが実話に基づいてなければ読み飛ばし、見逃してしまいそうなベタな演出と演技も、繰り返される淡々とした二人の関わりを見続けてると、ああコレで良いんだと肯定できるものがあった。
二人の友情にほっこりする
実話をもとにした温かく心温まるストーリー
実話を基にした、人の尊厳と友情の心温まるストーリー。
人種差別、偏見といったテーマも扱っているため、考えさせられること、学ぶことも多い映画です。
主人公トニーのユーモアある人柄やもう一人の主人公のドクターとのやり取りと友情を育む経緯にクスッと笑いあり。全体を通して重くならず、大切な問いかけを投げかけながらも温かい思いになる素敵な作品です。
個人的には、ドクターの奏でるピアノの音色が、回を重ねるたびに優しかったり、感情がより厚く感じられたり、楽しそうになっていく、そんな風にも受け取れたのも見どころでした!
未だ残る人への差別や偏見。重要な社会問題の一つです。
一気に世界を変えようとするのは難しいかとかもしれない。
けれど、この映画を通じて、自分の人生の中で出会う一人一人を尊重し、
仲良くなり、理解に努め合うことこそが、
リベラルでより豊かな世界をつくるための希望だと感じました。
沢山の方に見て頂きたい、名作です。
トニーとドクターが対話するうちにお互いを知り、友情を芽生えさせてい...
トニーとドクターが対話するうちにお互いを知り、友情を芽生えさせていく。ドクターの決断は、それもまた偏見をなくす一歩であるからだが、そのコンサートに来るのは、「先進的」だと思っている白人ばかり。黒人の音楽に理解を示す自分は差別主義者などではないと彼らは思っている。しかし、地元の黒人にはめもくれず、この構造自体が差別を温存してもいる。(スパイク・リーが過激な発言をよくするのは、そういう構造に利用されたくないという思惑もあるのだろう)
白人であっても貧困で被差別的な扱いのイタリア系のトニーは黒人に仕えるということに複雑な感情を抱き、黒人であっても知的で裕福に暮らすシャーリーは黒人コミュニティでも馴染めない。人種差別がとても複雑に入り組んでいるのである。
人生を戦う人の強さ
人種差別、歴史的背景などは、生まれてこの方日本から出たことの無い私には理解が及ばないところがありました。でも、だからこそ楽しめた部分もあったのかなぁ、とちょっとモヤモヤした気分です(笑)
グリーンブックという存在について知ることが出来たのは良かったです。当時の黒人が受けていた差別、迫害がどのくらい酷かったのか、この映画が全てだとは思いませんが、その一部でも感じる事が出来たのも良かったです。
黒人に対して差別意識の強いトニーが、徐々にドンと打ち解けていく様が丁寧に描かれていますが、これがとても面白い。飲み屋での喧嘩や服屋での扱い、道中様々な差別を受けるドンを目の当たりにし、トニーの意識に変化が表れます。監督がコメディ映画を得意としていたみたいで、クスリと笑えるエピソードが散りばめられているのも見どころです。
人種差別問題だけでなく、ドンが孤独な天才ピアニストであったという点に胸を打たれました。彼が抱えていた感情を爆発させるシーンは見ていて辛くなります。
ヴィゴ・モーテンセンとマハーシャラ・アリの真に迫る演技が素晴らしい、観るものに勇気を与えれくれる映画です。
素晴らしい作品に出会えて良かった
知人から紹介されるも食わず嫌いで放置。
音楽系で差別的な内容だろう。
見なくてもわかるからいいやと遠ざけていて
今になって見ることが出来て逆に良かった。
のんびり見れる映画で外れてもいいやと見だしたら細部まで見逃すことなく見入ってしまった。
冒頭の分かりやすい布石から
ラストの感情の変わり具合の流れが締まっていて本当に、本当に良い完結の仕方。
痛快で豪胆で爽快で。
流れ的には単調で一本道なのに全く飽きさせない展開で気持ちよく見終わる事もでき、実話を元にした作品とはいえ、映画って本当にいいなと改めて思わせてくれた作品です。
見て損は絶対にないです!!
これを見てまあ普通だったと感じる人とは仲良くなれないですね、しらんけど。
考えさせられたり、怒りを覚えたり、少しグッときたり、笑ったり、気持ちよかったりと色んな感情を一度に全部放出する事が出来ました。
いつもはネタバレ書いたりしますがこれは書きません。
ぜひご自身で見てください!!!
タイトルなし(ネタバレ)
『グリーンブック』この映画は、アカデミー賞作品賞・脚本賞他も受賞した、是非観るべき一本だと思う。実話であるということも、たいへん興味深く、大きな意味を持っている。タイトルの『グリーンブック』とは、実に爽やかなイメージの響きがあるが、現実は「黒人旅行者を受け入れるホテルやレストランの一覧が記載された本」だった。という事実もショックだ。
映画の舞台は、1962年のアメリカ。人種差別が常態化していた時代に、高名な黒人ピアニストが白人運転手を雇い、アメリカ南部の演奏ツアーを敢行し、そこで様々な差別や暴力に遭いながらも、2か月の演奏ツアーを終えて、無事にニューヨークまで戻って来る。その間、ピアニストと運転手との間には、人種を越えて堅い友情が芽生え、生涯の親友になったという感動の実話だ。
黒人ピアニストのドクター・ドン・シャーリーは、カーネギーホールの上階に住み、裕福な生活をしている。天才ピアニストであり、礼儀正しく、知識も教養もある物静かな文化人だ。
ドンは、白人のチェロ奏者とベース奏者と共にトリオを組み、敢えて、人種差別が著しいアメリカ南部に演奏ツアーを行うのだが、(これにも深い意味がある)そのツアーの為の運転手を募集するところから、物語は始まる。
ナイトクラブの警備(用心棒)の仕事をしていたトニーは、店が2~3か月改修工事に入る為、その間の仕事を探していた。黒人への偏見もあり、口がうまくて、言葉遣いも悪く、すぐ暴力を振るってしまう粗野なトニーが、ドンの運転手の面接を受けることになった。一旦はトニーから断ったのだが、ドンから電話があり、結局2か月の演奏ツアーの運転手の仕事を引き受けることに…
正反対の性格の二人の為、衝突することも度々あったが、ドンが黒人であるということで、差別を受けていることを目の当たりにし、次第にドンに対する考え方や接し方が変わってくる。何度もボディーガードのようにドンを助け、守った。
そして、ドンの演奏を聴いて「凄い、素晴らしい、天才だ」と気づかされる。ホテルで二人が話している時、トニーはドンに「あんたの弾くピアノはスゲエんだよ!」と言う。
トニーが妻のドロレスに手紙を書いているのを見て、ドンは色々アドバイスをし、その手紙を受け取ったドロレスは感激していた。
ある時、ドンが演奏をした会場で、トイレに入ろうとした時、主催者の人に「あなたのトイレは、あの外のトイレです」と言われ、ドンはそのトイレを使うことを拒否し、モーテルまでトニーの運転する車で戻ったことがある。だが、ドンは演奏が終わると、愛想良くお客さん一人ひとりと握手を交わしていた。
その姿を見ているトニーにトリオのメンバーが「これからも、こういうことは何回もあるだろう。でも、我慢するんだ。ドクター(ドン)は、この2か月北部にいれば、パーティーに引っ張りだこで3倍の金を稼げた。彼は自らここに来た」と言う。
トニーは「じゃあ、何で南部に来たんだ?それに何であんなに、にこやかに握手出来るんだ?」と疑問を口にしたが、トリオのメンバーはそのことについて何も言わなかった。後にその答えは、その彼から聞くことになるが。
ある会場に向かう途中、エンジントラブルでトニーは車の修理をしていた。そこには草原が広がり、畑では黒人の人たちが農作業をしていた。ドンは車の外に出て修理が終わるのを待っていると、畑で作業をしていた人たちが全員、ドンの方をじっと見つめていた。その光景を見て、不安そうな顔で車に乗り込むドン…「何でお前は、白人に車の修理をさせて、そんないい服を着ているんだ?」と言いたげな、みんなの目に圧倒されたのだろうと思うが、ちょっと考えさせられるシーンだった。
移動中、買物があると言ってトニーが店に立ち寄った時、店先に売り物の翡翠の石が落ちていて、その翡翠をトニーはポケットに入れた。その様子をトリオのメンバーに見られていて、ドンから「お金を払って来なさい」「翡翠を返して来なさい」と注意され、渋々翡翠を売場に戻しに行った…筈だった。が、後に真相が明かされ、意味を持ってくる。
どしゃ降りの雨の中、パトカーに停められ、トニーは「降りろ、黒人の夜の外出は禁止されている」と言われ車の外に出たが、警官にバカにされ、トニーは警官を殴ってしまう。そして、二人とも留置場に入れられる。ドンは「暴力では勝てない。品位を保つことが勝利をもたらす」とトニーを諭す。ドンは弁護士に電話を掛けさせてくれるよう、権利を主張し、何とか電話を掛けることが出来た。暫くすると電話が掛かってきて、電話の相手は知事だった。ドンが電話を掛けたのはロバート・ケネディだった!二人はすぐ釈放された。これは凄い人脈と言うか、ドンの偉大さがよく判るシーンだ。
その日、車の中で言い争いになり、どしゃ降りの雨の中、ドンは車を降りてしまうが、そこでドンは本音を吐く。「白人相手のステージでは喝采を浴びるが、ステージを降りると、ただのクロとして扱われる。侮辱を受けても、痛みを分かち合える仲間もいない…」それを聞いたトニーは、その夜ドンと同じ黒人専用ホテルの同じ部屋に泊まることにした。トニーはドンにしっかり寄り添っている。もう充分親友の二人だ。
いよいよ最後の演奏の日。ドンが案内されたのは、物置同然の部屋だった。トニーとトリオの二人のメンバーが同じテーブルで食事をしているところで、トニーはメンバーの一人から、以前聞かれたことへの答えを話す。「6年前の1956年にナット・キング・コールはバーミングハムに招かれ、初めて白人施設でショーを行った勇気ある黒人だ。だが、彼が白人の歌を歌い始めると、ステージから引きずり下ろされ、袋叩きにされた」「ドンがわざわざ南部に演奏に来たのは″信念″だ。先人が示した勇気が人の心を変える」…と。
そして、ドンが食事をしようとレストランに行くと、黒人はここでは食事が出来ないと言われる。トニーが間に入って何とか、ドンが食事が出来るように交渉するが、どうにもならなかった。ドンは「演奏しよう。君が望むなら」とトニーに言う。するとトニーは「とっとと、こんなとこ、ずらかろうぜ」と二人は出て行く。何だかこのシーンは、気持ちがスカッとした。
その後、レストランに入って食事をしていたが、ピアノを弾いてくれと言われ、いつも弾いている「スタインウェイ」ではない、ごく普通のピアノだったが、ピアノを弾くと大喝采で、その店のバンドメンバーとのセッションで大盛り上がり。店を出たドンは「ギャラなしでも、もう一度やりたい」と言っていた。
その後、今出発すればクリスマスイブに家に戻れるということで、ニューヨークに向かって車を走らせるが、天候が悪くなってきて、ドンは「君のあのお守りの石(翡翠)を前に置いたら安心だ」と言うと、トニーはポケットから本当は返した筈の「翡翠」の石を出して車の前に置いた。ドンは全てお見通しだったわけだ。
途中、パトカーにまた停められる。「またかよ」と思うトニーだったが、実は「パンクしているんじゃないか?」と教えてくれたのだった。トニーが外に出てパンク修理をする間、警官は交通整理をしてくれていた。いい警官で良かった。心温まる話だ。
運転を再開したが、天候が更に悪化し、トニーも「眠くてたまらない。今日はモーテルに泊まろう」と言い出したが、場面が変わると、トニーを後ろの席に寝かせ、ドンが運転をしていた。
そして、ニューヨークのトニーの家に到着した。「家族に紹介する」というトニーに「メリークリスマス」と言って車を運転して帰ってしまう。自分がどう思われるか心配だったのだろう。
トニーの家では、クリスマスパーティーが始まっていた。トニーは家族みんなに大歓迎された。
ドンは自宅に戻り、翡翠を手に取って考えていた。
そして…ドンはシャンパン(ワイン?)を持って、トニーの家を訪ねる。トニーとドンはしっかり抱き合う。ドンの「トニーを貸してくれてありがとう」トニーの妻ドロレスの「ステキな手紙をありがとう」…がいい。最高のラストだった。
黒人への偏見があったトニーの気持ちが、段々と変わっていく様子や、孤高のピアニストだったドンが、トニーとの触れ合いをきっかけに心を開いていく様がよく描かれている作品だと思う。
人種差別の実態もよく分かり、勉強にもなる。黒人の人たちにとって、本当に辛い時代だったと思う。今でも、アメリカでは黒人差別は残っているが…
音楽も良かった。リトル・リチャード、アレサ・フランクリン…黒人音楽も大好きな私には、音楽も楽しめた映画だった。
テーマは『近視眼的偏見』アイデンティティに翻弄されるBROTHER達
ボストン・ポップスの「アーサー・フィドラー」を知ってりゃ「アレサ・フランクリン」を知ってるだろ。『近視眼的偏見』だけどね。
『近視眼的偏見』だけと、イタリア人はピザを食べる時に手では食べないよ。
『近視眼的偏見』で言えば、彼はイタリア系アメリカ人なんだと思う。勿論、アフリカ系アメリカ人もいて、彼らは最終的にBROTHERになる事だと思う。
性的なマイノリティーに付いては近視眼的眉唾だと思うけどね。南部の宗教は、カトリック教会よりもプロテスタントが多くて、寧ろ性的なマイノリティーには寛容だったと記憶するが。
近視眼的偏見かもしれないが、黒人のクラシックピアニストがいない。
黒人と言えば『JAZZ』
ツアーの最後をアラバマ州にしたのは、偉大なる『アラバマ物語』に対する近視眼的アンチテーゼなのかなぁ?
進行する映画のストーリーは『アラバマ物語』が上映時の出来事。
まぁ、最後の演奏はアレサ・フランクリンを知らない理由にならない。寧ろ、嫌みさ。
二度目の鑑賞だが、最後だけ言い訳の偽善にせざるを得ないかなぁ近視眼的に思えた。そんなお話。
僕のレビューが888番目。やったー。
追記 アーサー・フィドラーってジョン・ウィリアムズの先輩の様な人でボストン・ポップスはスクリーンミュージックの宝庫。
黒人音楽家とブロンクス育ちのイタリア人の友情の旅
素晴らしい映画だ。一気に二回目を見終えた。
この映画は脚本がよくできていて、テンポもとてもよく、ストーリーに起伏がついている。笑いあり、涙もさそう、音楽がとても素晴らしい。黒人音楽がもともと好きな私にとってはとくにそうである。
大まかなストーリーは覚えていたがラストシーン
Christmasに間に合わようにボスが運転して雪の中無事到着する。イタリア人はChristmas家族や仲間たちで暖かい。黒人のボスはいつものように執事がいる広い部屋にかえってくる。執事を帰し静かなChristmasイブを。ここでエンディングでもよかった。いや、むしろ、そのほうが余韻を持って終われるような気がする。
映画では黒人差別があるイタリアンファミリーが最初は驚くが、暖かくむかえる。
このあとChristmasパーティーは黒人クラッシックピアニストとイタリアン人雇われ運転手の話題に花がさくだろう。
東京物語、それのオマージュ作品の東京家族は旅を終えて静かな日常で終わっている。
どちかを好むかは人それぞれかもしれないが。
タイトルなし(ネタバレ)
前から観たい観たいと思いつつ先延ばしにしてたのをやっと観た
ほぼ最後まで普通に良い映画って事で「★4だな」って思ってたけど、最後の期待通りの「ニガーはよせ」とドロレスの「手紙ありがと」で★0.5追加🤣
アカデミー賞受賞式で
助演男優賞プレゼンターのキー・ホイ・クァンに対する、ロバート・ダウニー・Jrの振る舞いがニュースになった。それを報じる映像の中には、本作ドン・シャーリー役のマハーシャラ・アリもいて、ロバート登壇の際には、祝福のために一歩踏み出した彼も無視されていたのだが、そのことは誰からも触れられていないようだ。(追記:後でXにて「マハーシャラ・アリ」で検索したら、少しいた)
そんなことを考えながら、「ああ、グリーンブックを見返すならこのタイミングだな」と思ってAmazonプライムで鑑賞した。
細かな内容の一つ一つについてはここでは述べるつもりもないが、観終わって、差別は完全に「する人の問題」だということを改めて再確認した。
「差別される人」の属性の問題なのではない。
その人の属性に起因する様々な結果が問題なのでもない。
その属性や、それに起因する様々な結果を「問題にしたい人(つまり差別する側の人)」が、自覚のあるなしに関わらず、「差別する目的で問題にしている」に過ぎない。それを、この映画では全編に渡って様々な例で描いている。
例えば、演奏会のメイン演奏者であるドクが、そのホテルのレストランで食事をさせてもらえないシーン。ホテルのマネージャーは、かつてNBAのチームの選手たちもここで食事をとらなかったことを引きあいに出し、「この地域の伝統だから」と説明する。「自分は差別してるつもりはない。ただここではそういうきまりになっているから」というのは、レイシストに限らず差別する側の常套句だ。
なぜ、受け入れる理由を探すよりも、排除の理由を探すのか。
答えは「差別したいから」以外には見つからない。
主人公のトニー・ヴァレロンガも、差別をする側であると共に、される側でもある。彼は、黒人、ユダヤ人、ドイツ人、中国人への差別感情を口にするが、自分もイタリア人であることで、差別的な取り扱いを受ける。
ある時は、白人として恩恵を受けるが、ある時はイタリア人として蔑みの対象になるというように、差別の基準がコロコロ変わるのは、「差別は、差別する側が恣意的に基準を変えてまで行う、する側に起因したもの」ということをよく表している。
特定の属性に対する無知や偏見は、それが指摘され可視化されることによって少しずつ減ってきていることは事実で、実際、あらゆる面で状況は改善されてきている。
差別を減らしていくためには、そうした地道な一歩一歩が大切だと思うが、時に差別を訴える声に対して、周囲から否定的な言動がなされることもある。
しかし、それこそが「差別はする側の問題」で、「否定的な言動=差別したい気持ちの表明」ということをよく表していると思う。
民主主義社会である限り、心の中で何を思おうがそれのみでは問題にされない「内心の自由」は、最も大切にされるべき権利だが、だからといってそれに従った振る舞いが許されるかどうかは、全くの別問題だ。
アカデミー賞での、ロバート・ダウニー・Jrの振る舞いについて、彼の差別意識があったかなかったか、彼の内心を周囲が騒ぎ立てて問題にするのではなく、可視化されたものに対して一人一人がすべきことは、「自分の中の差別したい気持ちと向き合い、より良い振る舞いについて考えること」しかないと思う。
最後は、話題を変えて。
グリーンブックの中で一番好きなシーンは、ラストのドロレスがドンに抱きついてお礼を言うところ。
もう今回で4回目くらいの視聴だが、やっぱりそこは泣いてしまう。なんでかなぁ。
わかり合っていく2人
トランジットで暇だったので3本続けて映画を見た3本目。前の2本はオスカーノミネートだけどこちらはオスカー3回受賞作品なだけあって、すごく良かった!!
黒人差別を少なくしていきたい志を持って、あえて黒人差別の程度が大きい南部へとツアーに出たその気持ちがドクらしいなと思った。気品があってお金持ちだけど孤独なドクと、ガサツでお金がないけど家族がいるチャーリーが少しずつ違いの理解を深めていくのが良い!ドクがピアノを弾く時はもてはやされるのに、弾いてないときは差別されるという白人でも黒人でもない立場を誰とも共有できない!!と告白したところが印象的。
奥さんがちゃんと手紙はドクが書いたものってわかっていたのがすごい笑夫婦だら相手のことをちゃんとわかってるんだね。やっぱり家族を大切にしたいし、家族は自分を大切に思っているんだと思い出させられる作品です。
勇気
少し差別意識があるけど憎めない主人公トニーと孤独を抱えているドク。
二人が二人にないものを補い、お互いから学び、理解をすることがみえる映画。
育った環境が違うからこそ補える存在がとても素敵でした。
人はちゃんと人と同じ時間を過ごすことによって偏見はなくなり、友になれる。
映画の中での
"Because genius is not enough. It takes courage to change people's hearts"
というのがとても印象的。
天才であるだけでは人の心は変えることができない、そこには勇気が必要。
ドクはそれをわかっていてこの南部のツアーを行っている。勇気を持ってやっているドクに対するレストランの無礼な対応をみて、トニーがドクに演奏なんかする必要ないと決めるシーンはドクのトニーへのリスペクトがみえる。
もう一つが
"The world's full of lonely people afraid to make the first move."
これも勇気がテーマとなっていて、ドクは待っているだけではだめだとトニーは伝える。
これが最後にドクがトニーのお家に行くことに繋がるんじゃないかと思った。
まとまりがないけど、とても好きな映画の一つです。
友達に勧められて
アイデンティティに気づく旅
過去鑑賞作のレビュー。
アカデミー賞とったというのに、全くノーマークだった作品。
もう何百人もの方がレビューを書かれていて、ALLTIME BESTにも選出されている名作なので、映画のあらすじは書きません。自分が感じたこと、考えたことを書きます。
■黒人差別の知らなかった一面を知った
アメリカにおける黒人差別がどういうものかは、歴史の教科書以上のことは知らなかった。この映画で、1960年代当時にアメリカ北部と南部でこれだけ違う社会があったということも知らなかった。そして、北部では一部の才能や富を持つ黒人が(一応は)社会的に高い地位にいたことも知らなかった。この人種差別は我々日本人の想像以上に複雑なものだったということを知った。
主人公2人も劇中で「黒人差別の知らない一面」を知り、衝撃を受けるのだから、何も知らない日本人が衝撃を受けるのは、当然と言えば当然か。
■俳優2人の演技力
トニー役のビゴ・モーテンセン、ドクター・シャーリー役のマハーシャラ・アリの演技が素晴らしい。粗暴だが、家族想いで本質を見抜く眼を持つトニー。教養高く気品に溢れるが孤独な天才シャーリー。全く水と油のような個性の強い2人が、それぞれの個性を徐々にむき出しにして衝突していくが、その衝突が契機となって相互理解を深めるという過程を違和感なく演じている。淡々と進むロードムービーではなく、動のトニーと静のシャーリーがいて、物語にリズムが出てくる。
■これは1人の天才が、1人のオヤジの力で、自分を取り戻す旅の話
この作品は、大人の男同士の人種と価値観を越えた友情物語であり、美談です。制作側もそれを意図して、狙って作っていると思います。ラストシーンもベタと言えば、ベタです。でもそれだけだろうか?
私が一番印象に残った台詞は以下の2つ。私はこの2つの台詞がこの映画の本題を表しているように思う(あくまで個人的解釈)。
「If I’m not black enough, and if I’m not white enough and if I’m not man enough, then tell me Tony, what am I?」(私が完全な黒人じゃなくて、完全な白人でもなくて、完全な男でもなかったら一体私は何者なんだ?)
「Anyone can sound like Beethoven or Joe Pan or them other guys you said. But your music, only you can do that.」(ベートベンとかジョーパンとかは大勢が弾く。あんたが弾くような音楽はあんただけ)
それぞれ別のシーンで出た台詞だが、繋がっていると思う。自分が何者かわからなくなっている天才に「おまえは唯一無二だ。おまえはおまえだ!」と言うオヤジ。
シャーリーの雨の中での魂の告白には心打たれたが、トニーの言葉には「やるなオヤジ!」と声をかけたくなった。
他にも、名シーン、名セリフがいくつもあり、色々な気づきを得ることができた。感動だけではない、味わい深い映画だった。
対象を深く知ることで世界が広がる
腕っぷしが強く快活な性格だが無学な白人のトニーと、教養があり名の知れたピアニストだが黒人差別に悩むシャーリー。トニーはシャーリーから文章力や黒人差別の現状を、シャーリーはトニーから差別へ立ち向かう気概や、縁の無かったアメリカの大衆文化を学ぶ。対照的な2人が、交流を深めることで互いの良い部分を学び合い、世界を広げていくのが面白い映画。何事にもチャレンジしていくことが、人を成長させるのだと思える映画。
2人が黒人しかいないジャズレストランに行くシーンがある。ここでシャーリーは、今までに見せたことの無いような楽しそうな表情でピアノを披露する。トニー含めた観客は拍手喝采する。白人のトニー、上流階級にいるシャーリー、そして一般大衆の黒人達とが、人種や階層の垣根を超えて一体となった瞬間であり、観ていて心が温まる。
人や物事に対する偏見は自分もたくさんあるが、多くの場合表面的にしか対象を見ていないから生じる。対象と深く付き合おうとしなければ、本当のことは何も分からない。そういったことを考えさせられる素晴らしい映画だった。
腹の出たビゴの名演
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