アメリカン・アニマルズのレビュー・感想・評価
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未知の野生動物のような米国の“新人類”を、斬新な手法で立体化
2004年にケンタッキー州の大学生4人組が起こした窃盗事件を題材とする劇映画。ただしドキュメンタリー出身のバート・レイトン監督は、俳優を使って事件を再現するだけでなく、本人たちが回想する姿を収めた映像も挿入し、ハイブリッドな手法で“真実”の再構成を試みる。とはいえ、本人たちの言い分が食い違ったりして、映画と真実の関係が一層複雑になる。
「レザボア・ドッグス」を手本に、13億円もする骨董本を大学図書館から盗もうとする若者たち。おバカな犯罪と片付けられそうだが、その軽いノリは“バカッター”や“バイトテロ”などと揶揄された日本の一部の若者と共通点を感じさせもする。従来の常識、良識が通用しない点で断絶をうかがわせるし、20世紀までの文脈で理解するのは不毛かも。彼らはアメリカの(新しい)動物なのだ。バリー・コーガンが「聖なる鹿殺し」に続き独特の存在感を放っている。
バカげた事件にこそ宿る真実を探る
なんでアメリカという国は、一般の人がテレビに登場して自分のバカげた愚行を嬉々として晒すのか。アンディ・ウォーホルが言った通り「誰でも15分だけ有名になれる」のだとしても、その「有名」って悪名でも構わないのですか?
そんなことをずっと思っていたが、ニュースなどを観る限り日本のYoutuberなんかも似た類の名声欲に取り憑かれているように見える。この映画もそんな「15 minutes of fame」の誘惑に魅入られた若者たちが起こしたバカげた強盗事件の顛末を描いている。そして例によって、本人たちもカメラの前で嬉々として自分語りをしている。
本作の秀逸さは、彼ら自身のなんでもなさを描けば描くほど、ショボいはずの事件が神話性を帯びてくること。呆れて笑うしかないはずなのに、彼らと自分たちとの間にどんな違いがあろうか。日常から抜け出したい、でもその術がわからない。現実という牢獄からの脱出という意味において、愚かであるか否かはもはや本質とは関係がないのである。たぶん。
カメラワーク、色彩感覚、若者たちの演技、すべてが渾然一体となって新鮮に突き刺さる
無軌道な若者たちが無計画な犯罪に手を染める————そういった物語には過去にも数多く出会ってきたように思うが、本作はそのいずれとも異なる独自の魅力を放つ。
私にはなぜ彼らがこのような犯罪に手を染めたのか、一向にわからない。彼らの頭が切れすぎるわけでも、逆に脳みそが腐るほど馬鹿なわけでもない。恐らく自分達にも理解できていないのではないか。そんな天然記念物的かつ突然変異的な彼らが、よりにもよって「歴史的に貴重な動物画集」を強奪しようとする。ある意味、ミイラ取りがミイラになるような、皮肉なアイデンティティの末路がそこには横たわっている。
ともあれ、カメラワーク、独特な色彩感覚、本人へのインタビュー手法、若者たちの息のあった演技・・・すべてが渾然一体となって新鮮に突き刺さる。この監督の手腕あってこそ、本作はこれほど光り輝く存在と成りえたのだろう。何度も見直したくなる中毒性すら兼ね備えた快作だ。
タイトルなし(ネタバレ)
アメリカ新人類の真実なんて言うそんな哲学なんて無い。
と言うよりも、
『理由なき反抗』の頃と全く同じじゃないか。
2001年、9/11事件後のアメリカンドリームのサブカルチャー。つまり、
ベトナム戦争が負けた後のサブカルチャーと同じで言い訳映画。
こう言った奴らには民事でがっぽり取られば駄目である。実刑7年は当たり前。
意味不明
2004年に起きたトランシルバニア大学の希少図書強盗事件の再現ドラマ。
監督・脚本のバート・レイトンさんはドキュメンタリー作りが本業だからか、ドラマの中に本人を登場させ当時の回想を語らせるという実にユニークな犯罪ドラマ。
盗られたのがダーウィーンの「種の起源」の初版本(1859年1250部)だからか、冒頭に「アメリカの動物は地上からケンタッキーの洞窟の奥深くへ何世代もかけゆっくり移住した」との種の起源からの引用がクレジットされる、タイトルはこの一節からとったのだろうが全くもって意味不明、なんで洞窟?
ルパンが狙うような厳重警備の美術館でもなく司書がいるだけの大学図書館、希少本が欲しい訳でもなく金銭価値に魅かれてだから動機も単純、主人公の二人は幼馴染で芸術系の奨学生と運動系の奨学生で大学生活に魅力を失い刺激を求めているようだ。
アメリカ人には関心を集めた事件なのだろうが、犯罪物としてはサスペンス感も薄くチープで歪んだ青春ドラマのようで酔えませんでした、むしろ、種の起源(On the Origin of Species)の初版本にスペルミスがあったとか、アメリカの動物分布についてのダーウィンの説の方が気になりました。
武勇伝、武勇伝、武勇伝でんででんでん
彼の手の中で踊らされていた
半ドラマ半ドキュメンタリー
先日(2023/05/08)、白昼の銀座で高級腕時計強盗があった。
実行犯はアノニマスのお面をかぶった高校生を含む10代4、5人。
すぐ捕まったが盗品は黒幕に渡った後だった。
状況から見てかれらは捨て駒で、さしあたっての目標は達成された模様。
闇バイトを勧誘するにあたって、組織の人事係は、おそらくこんな風にかれらを誘ったのではなかろうか・・・。
「若いから(刑期も)はやめに出てこられるし、出所したらSNS界隈で強盗逮捕歴ありの強面インフルエンサーになることもできる。希少な経験だから箔付けと考えよう」
今の社会では、善悪さえもが「多様性」のなかに埋没している。
迷惑系という言葉が説明するように有名になりたい者は初動でニュースに取り上げられるような悪事をする。
炎上しても佳境を過ぎると均されて、万人の妥協ポイントの中に浮遊する、しょうがない気配の著名人になる。
悪名は売名のスタート手段と化した。
強盗をやった若者たちも、出所したら反省して真人間になったという体裁で、若者が闇バイトへ零落するのを食い止める活動家になるかもしれない。
あっち系のライターに「あのときぼくをかりたてた悪魔のささやき」とかなんとか、活動を後悔している元シールズみたいなエモい記事を書いてもらえば、ばかな同調者を釣れるかもしれない。
いずれにせよ、あれをやったティーンたちは強盗やそこからもたらされる泡銭を本気で夢への一歩だととらえていた可能性がある。
社会ではヤカラや「昔はワルをやった」がセールスポイントになりえる。
かのBreakingDownは男らしさを象徴するイベントと定義されている。
われわれの解釈がどうであろうとワルが衆目をさらい人気をあつめる。周囲からの畏怖も得られる。なんとなく劇的な感じがして、あこがれてしまう。
多感な思春期であればなおさらだろう。
若年期は誰にでも葛藤がある。
大学へ行っていい会社に入って出世して何になるのか──という順風な路線をはしることへの危機感、抵抗感、不安感に加え、野心家ほど「生ぬるさへのジレンマ」のようなものがある。世の偉人たちは波瀾万丈をへて偉業をなしている。ならばじぶんも何かすごい経験をしなければならないのではないか──とかれらは考える。
アメリカンアニマルズの犯行動機もそんな感じ。
映画は刺激をもとめて大学の図書館から稀覯本を盗み出す学生らを描いている。
実話にもとづき、じっさいの当事者へのインタビューを挿入しつつ、役者が演技をする珍しい構成をもった「半ドラマ半ドキュメンタリー」映画になっている。
7年の刑期をまっとうし更生した当事者が出演していた。
おれはこんなんでいいのか──という漠然とした倦怠感から強盗へ変節していく学生をバリーコーガンやエヴァンピーターズらが演じているが、やはりバリーコーガンがもっていく。眼窩に得体のしれない韻があって出ているだけで映画格をあげる俳優だと思う。またエヴァンピーターズは時計じかけの頃のマルコムマクダウェルにそっくりだった。
4人は計画をたててやるが実地ではひどい醜態で、主目標だったオーデュボンの画集「アメリカの鳥類」は逃走時に落としてしまう。(それは半畳もある巨大本だ。)
緊迫した強奪の様子や実行後の不安と恐怖が生々しく描かれる一方、全体を哀感が覆っていた。
強行に奔る若者の動機にはあるていどの普遍性がある。
将来に対する悲観。
世界に対する不信。
アメリカのすべての学園ドラマの裏側はボウリングフォーコロンバインだ。あれと同質の哀感があった。
余談だが先日の強盗事件でひとりの若者の逮捕の瞬間が動画にあがっていた。
多数の警官に追い詰められ横倒しに捕らえられた若者が「痛いです、痛いです、痛いですぅ」と大声で叫ぶ様子がうつっていた。
かれはいったい強盗がどんなことだと思っていたのだろう。
微妙。
計画の「しょうもなさ」
若者の無軌道な計画を描いた、実話ベースのクライムムービー。
本作で何より興味深かったのが、刑期を終えた本人たちが出演してることでしょう。これは中々すごい。
これは作品に深みを与えるのにも効果的であったと思います。反面、本人にはマイナスでしかないと思うのだけど、単純に出たかったんでしょうねw
それと多分深い意味はないと思うのですが、車中にある招き猫が面白かった。
全編にわたって、若者ならではの先の見えない苦しさや憤りなどがよく出ていたと思います。
終盤からボロボロ出てくる計画のほつれは、どこに着地するのか中々にハラハラさせられました。
観終わって改めて思うのはその計画の「しょうもなさ」でしょう。
それとこんな「しょうもない」事件を扱おうと思った監督もすごい。
でも作りは丁寧だしテンポも悪くない、作品としては中々面白いから不思議なんですよね。
監督はこれが長編作品デビューらしく、自作が楽しみです
今を変えたい
ゴミみたいな事件を至ってまじめに映画にしている。
これ、実際の犯罪に嫌悪すると観れない作品。いや、そういう見方もそれはそれだけど、感情移入してたら苛立って仕方ないと思う。ほんとゴミみたいな事件。
映画の視点としてはドキュメンタリー込みだし事件をノリで題材にしてるような扱いではない。なので、ややこしいけどゴミみたいな事件を至ってまじめに映画にしている。
どこかこの若者たちの実行力にエネルギーを感じてしまうのも事実で、中盤までのドラマの展開はそのあたり魅力的に描いていたりもする。結果間違った方向にエネルギーのベクトルが向いてしまっているわけだけど、彼らが日常の閉塞感からどうにか抜けだそうとする切迫感みたいなものは共有できる内容になっている。
インタビューとドラマが交錯する構成もよく練られていると思うし、だから作品としての完成度はあるということになる。ほんとややこしい。。
なんだか本人達はカッコつけているけど…
2004年のスタンドバイミー
物語としてはつまらない
ずさんな計画
ドキュメンタリー×実録モノ
内容はともかく、犯罪を犯した本人たちのインタビューをはさんで2004年に起こした犯罪ストーリーをミックスするという構成が凄い。ちょっとおバカな大学生たちの行動でもあることから、最初はモキュメンタリーかと思ったくらいでした。
そもそも「アメリカン~」というタイトルの映画は多いけど、アメリカを自画自賛する内容の作品は少ない。どちらかといえば自虐的だったり、国の闇の部分を描いたものが多いと思う。これも鬱屈した大学生が、平凡な日常や息が詰まりそうになる将来を変えようとして起こした犯罪。短絡的だし犯罪者になろうという意志さえない。『オーシャンズ』や『レザボア・ドッグス』を参考にするというデタラメさもその一つの理由。レザボアなんて強盗シーンがないのだし、色のコードネームで呼び合うという点だけ・・・
4人それぞれの性格の違いも面白いし、証拠を残しすぎるというお粗末な計画。またウォーレンの記憶についても重要なテーマとなっている。もっとも面白かったのは全員老人のメイクをして、一旦は計画中止になるところだったろうか。中止によって解放感さえ味わえるという気持ちも伝わってくるのです。まぁ、ここで終わっちゃ映画にならないんだろうけど・・・
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