劇場公開日 2019年5月17日

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「バカげた事件にこそ宿る真実を探る」アメリカン・アニマルズ バッハ。さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0バカげた事件にこそ宿る真実を探る

2019年5月28日
PCから投稿

笑える

悲しい

知的

なんでアメリカという国は、一般の人がテレビに登場して自分のバカげた愚行を嬉々として晒すのか。アンディ・ウォーホルが言った通り「誰でも15分だけ有名になれる」のだとしても、その「有名」って悪名でも構わないのですか?

そんなことをずっと思っていたが、ニュースなどを観る限り日本のYoutuberなんかも似た類の名声欲に取り憑かれているように見える。この映画もそんな「15 minutes of fame」の誘惑に魅入られた若者たちが起こしたバカげた強盗事件の顛末を描いている。そして例によって、本人たちもカメラの前で嬉々として自分語りをしている。

本作の秀逸さは、彼ら自身のなんでもなさを描けば描くほど、ショボいはずの事件が神話性を帯びてくること。呆れて笑うしかないはずなのに、彼らと自分たちとの間にどんな違いがあろうか。日常から抜け出したい、でもその術がわからない。現実という牢獄からの脱出という意味において、愚かであるか否かはもはや本質とは関係がないのである。たぶん。

村山章