若おかみは小学生!

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劇場公開日:

若おかみは小学生!

解説・あらすじ

累計発行部数300万部を誇る人気児童文学シリーズ「若おかみは小学生!」をアニメーション映画化。小学6年生の女の子おっこは交通事故で両親を亡くし、祖母の経営する旅館「春の屋」に引き取られる。旅館に古くから住み着いているユーレイ少年のウリ坊や、転校先の同級生でライバル旅館の跡取り娘・真月らと知り合ったおっこは、ひょんなことから春の屋の若おかみの修行を始めることに。失敗の連続に落ち込むおっこだったが、不思議な仲間たちに支えられながら、次々とやって来る個性的なお客様をもてなそうと奮闘するうちに、少しずつ成長していく。人気子役の小林星蘭が主人公おっこの声を担当。「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」などスタジオジブリ作品で作画監督を務めてきた高坂希太郎が、「茄子 アンダルシアの夏」以来15年ぶりに長編劇場アニメの監督を手がけた。脚本は「映画 聲の形」「夜明け告げるルーのうた」などヒット作を数多く担当する吉田玲子。

2018年製作/94分/G/日本
配給:ギャガ
劇場公開日:2018年9月21日

スタッフ・声優・キャスト

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受賞歴

第42回 日本アカデミー賞(2019年)

ノミネート

最優秀アニメーション作品賞  
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(C)令丈ヒロ子・亜沙美・講談社/若おかみは小学生!製作委員会

映画レビュー

5.0高坂監督の実力を知らしめた

2018年10月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

知的

背景が美しい、作画がなめらか、キャスティングもばっちりはまっている、そして脚本の構成が抜群。あらゆる面で高レベルな作品で絶賛が相次ぐのもわかる。子ども向けと子ども騙しは全く異なる。本当の子ども向けの傑作は大人も感動させる力があるが、これはその見本のような作品だ。

おっこの健気さは、両親の死を受け入れていない危うさと表裏一体で、仕事を通じて成長していき、1つの達観した感覚に達する。仏教的死生観が根底にはあるがそれは決して難しいことではない。理屈ではなく感覚でそれをわからせる説得力が画面にみなぎっている。

高坂希太郎監督は、ジブリの作画監督として有名だがこれまであまり積極的に監督業はされてこなかった。しかし『茄子 アンダルシアの夏』など非常に質の高い作品で、監督としても相当に実力がある人なのは明らか。これから積極的に監督業にも進出してもらいたい。日本映画を代表する監督になれるだろう。

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杉本穂高

3.0原作モノの作家性の帰属について

2025年5月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

原作、テレビ版ともに未見です。

レビューの異常ともいえる評価の高さにつられて、「見てみたい」と思い、ケーブルや有料チャンネルで放送される機会をうかがっていましたが、運よく近所の映画館でやっていたので足を運びました。平日の昼間に一回だけの上映で、完全貸し切りの状態で観劇。もしこれが『死霊館』的な映画だったら、メンタルがもったかどうか、一人で映画を見るという貴重な体験になりました。

さて、内容はどうかと言えば、正直言って、タイトルのまんま。それ以上でも、以下でもない。ある意味、今のアニメ業界がどんな状況なのかを知ることが出来てよかったと思っています。それは、作画と、メディアミックスなどのポストプロダクション。そして、映画に作家性が問われるとして、それが誰のものになるのかという問題についてです。

近年、非常に多く見かける制作委員会方式。これについては特に何の感想も持たないのですが、ジブリアニメなどでは宮崎駿、高畑勲など、作品と同列かそれ以上のブランドとして作家の名前が先に出て、その作品性に大きく影響しているように扱われます。近年では、細田守、新海誠、片淵須直などが台頭してきて、彼らの作品は、良くも悪くも監督の名前でお客が入る状態になっていると思います。当然批判も監督に帰結するもので、例えば声優の演技力なども含み、ブランドの浮沈にかかわる始末です。

今作で、その仲間入りをしそうだった高坂希太郎について、残念ながら、彼は作家ではなく、コーディネーターだったようです。少なくとも私にはそう感じられました。とは言え、この映画自体は非常によくできていて、細かいところまでこだわって描かれています。なのでツッコミどころのない、ていねいな作りで、破たんのない出来栄えの一本となっており、キャラクターの造形、特にその可愛らしさに関しては素晴らしいものがあります。

しかし、映画館に足を運び、非日常の世界に思いを馳せ、2時間弱の映像と音のイリュージョンに身をゆだねて劇場を後にするには、この映画非常に食い足りない印象しかありません。劇中に出てくる、健康状態に問題がある宿泊客が、「これじゃ、病院で食べる食事と一緒だよ。せめて湯治に来て食うメシぐらい、もっと腹に響くようなもんが食いてえなあ」とつぶやくシーンがありますが、あのまんま。私は映画そのものに、そう感じました。

具体的には、対象年齢の低さもあって、非常に展開が早く、女将に就任するくだりなどは幼い子供が「ぼく、おかあさんと結婚する」と言ったレベルの口約束にしか取れません。まわりの大人はそれを鵜呑みにして、踊らされすぎでしょう。唯一、ライバル旅館の跡取り娘だけは、地に足が着いた考えの持ち主に見えますが、逆に意地悪な印象を与えるように描いてあり、残念です。

次に、近年よく取り上げられる、声優の起用についての感想です。麻上洋子さんが改名されていたことは初めて知ったので、パンフレットを読み非常に感銘を受けましたが、基本的に私は職業声優さんをあまり好みません。特に、アイドル的活動を幅広く展開している人は、軽く嫌悪してしまうほどですが、その点素人(プロの俳優をつかまえてその表現もどうかと思いますが)を起用した劇場アニメーションによく批判が集まりますが、私は好意的に受け止めています。一部の例外は除きます。この映画では、見終わった後に知りましたが、バナナマン設楽統さんなど、畑違いの起用もいくらかあったようです。が、私にはアニメアニメしすぎた演出のように思えました。ひと言で言って、広く芸能を仕事にしている才能たちがこれだけ跋扈する世の中に、「閉塞的である」と思うからです。

最後に、いまどき、コナン君でもピカチュウでもなく、若おかみという発想は非常にユニークで、もう少しだけ、ほんの少しだけ大人向けに作ってくれていたら、大満足の出来だったと思い残念な気持ちで劇場を去ります。高坂監督の次回作に期待ですね。

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うそつきかもめ

5.0ジブリの魂を継ぐ者

2024年4月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

笑える

原作は同名の児童文学。
ジブリ企画の『那須 アンダルシアの夏』で宮崎駿から直々に指名された高坂希太郎が監督。

【ストーリー】
主人公・おっこは小学六年生。
交通事故で生死の境をさまよった後遺症で、霊や妖怪が見える「霊界通信力」を持つようになる。
両親をなくしたおっこを引きとったのは、温泉旅館"春の屋"を営む祖母の峰子。
凛とした心根の峰子のもと、中居としてはたらくおっこ。
事故からの転居に霊界通信力のめざめ、接客労働、転校という環境の変化にも、おっこは持ち前の馬力とほがらかさで乗りきってゆくが、ときおり原因不明の呼吸困難におそわれる。

視聴された方はご存知でしょうがこの映画、非常によく出来てます。
それもそのはず高坂希太郎、発注されてジブリのスタジオで仕事していたら、宮崎駿がそれを見て「絵が抜群に上手い」と太鼓判を押したアニメーターです。
『那須 アンダルシアの夏』ではインタビュー中ずっと自転車の話してましたが、なんでだか上坂監督アスリートみたいに速くて入賞とかしちゃってる人。あれ?SHIROBAKOにそんなキャラいたような……。
とことんやるこだわり派だから、きっと宮崎監督も認めたのでしょう。
自転車って宇宙で一番描くの難しいから、企画押しつけられてめちゃくちゃ嫌だったそうですが。
当時CGもあんまり普及してなかったし、ほぼ手描きはしんどすぎる……。
スズキハスラーのアニメCMも、この高坂監督ですよ。
あの軽快なリズムの曲、メッセンジャーってバンドの『That's The Way A Woman Is 気になる女の子』っていうんですね、今知りました。

テレビアニメも放送されましたが、ストーリーは劇場版オリジナル。
この作品単体で完結してます。
作画もいいんですが、すごいのがおっこの事故の記憶を巡る構成と演出。
子供なんか怖がってしまいそうな、ホラーちっくなカット割されてます。
新海誠も「幾度も笑わされ、幾度も泣かされました」と絶賛。
高坂監督は別にジブリの所属じゃないんですけど、長くジブリと仕事をした人。
宮崎駿の一番弟子なんて言われたそうですが、実際にジブリ生え抜きアニメーターと比べても、作品や演出の理解は頭ひとつ抜けてます。
ジブリの次世代を嘱望されたアニメーターたちはついつい宮崎駿の方向に行きがちなんですが、そっちにいっちゃうとフォロワーとしか見られないし、どれだけハイクオリティに作ってもミニ宮崎作品にしかならない。
このあたりは庵野秀明も指摘してます。
比して高坂希太郎ですが、ジブリ風でない絵もぜんぜん描けて演出もしっかりしている。
宮崎駿の薫陶を受けた中で、宮崎駿なんて追いかける必要ないんですよ、ということを世に知らしめられる数少ないアニメーターなんですね。
監督作品も数少ないのが、残念ですが。

高坂監督、そろそろ次の作品もおねがいします。

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かせさん

2.0児童小説が原作だからね。期待し過ぎは禁物

2024年3月28日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

巷での評価も高く、大人も観られる作品だとの良い噂も聞いたので観ることにした。
よくまとまった良い作品だと思った。
しかしそれはあくまで子ども映画としてだ。

ああするべき、こうするべきと改善点等をたくさん書き連ねることもできるが、自分から子ども向け作品に首を突っ込んでおきながらダメ出しするのも筋違いだと思うのでやめておく。作品は何も悪くないのだから。

だけど、私と同じような犠牲者を出さないためにも書いておかなければならない。
本作はギリギリ大人の鑑賞に耐えられる程度の本格的子ども映画だ。
朝とか夕方に地上波で放送しているファミリーアニメーションなどの感覚で観るなら本当によく出来てる。
それ以上のものを求めるならば観ないほうがいい。

つまらないレビューになってしまったのでどうでもいいくだらないことを書き足そう。

ある宿泊客とのエピソードで、おっこは彼を満足させるために己のプライドもかなぐり捨ててライバル真月に助けを求める。
「お客様に満足してもらう方が大事だもん!」と奔走するおっこ。接客を生業とする旅館業とはいえ、おっこの行動は小学生でありながら完全に資本主義を内面化している。
「すべてはお客様のうまい!のために」を地でいくほどの情熱。それは言い換えれば資本主義経済に何の疑念も抱かない経済活動の権化だ。
「お客様の喜ぶ顔が見たい」というささやかな幸せを大幅に越えるほどの、強迫観念に近い「顧客第一主義」がさも当然のように描かれることに、違和感はなかっただろうか。
おっこが過剰とも言えるほどのサービスを提供する姿を、幼い子どもたちにさも美徳のように刷り込む一連のシーンは、もはや「資本主義のプロパガンダ」と指弾されてもおかしくない。

と、妻が私に語った。頭にはてなマークが浮かんだ。子ども映画で熱く語りすぎだろ。

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つとみ