未来を乗り換えた男
劇場公開日 2019年1月12日
解説
「東ベルリンから来た女」で知られるドイツの名匠クリスティアン・ペッツォルト監督が、ファシズムの風が吹き荒れたナチスによる史実と現代の難民問題を重ね合わせ、祖国を追われた人々が希望を求めてさまよう姿をサスペンスフルに描いたドラマ。原作は、1930~40年代にかけて、ナチス政権下のドイツから亡命した小説家アンナ・セーガースによる「トランジット」。ドイツで吹き荒れるファシズムから逃れてフランスにやってきた青年ゲオルクは、パリからマルセイユへと流れ着く。偶然の成り行きから、パリのホテルで自殺した亡命作家ヴァイデルに成りすますことになったゲオルクは、そのまま船に乗ってメキシコへ行こうと思い立つ。そんな時、必死に人捜しをしている黒いコート姿の女性マリーと出会ったゲオルクは、ミステリアスな雰囲気を漂わせる彼女に心を奪われる。夫を捜しているというマリーだったが、その夫こそゲオルクが成りすましているヴァイデルのことだった。2018年・第68回ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品作品。
2018年製作/102分/G/ドイツ・フランス合作
原題:Transit
配給:アルバトロス・フィルム
オフィシャルサイト スタッフ・キャスト
全てのスタッフ・キャストを見る
2021年8月31日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
「水を抱く女」ではウンディーネがうまく美しく現代に置きかえられていたがこの作品は粗かった。
効果的だったのは冒頭から始まる耳障りなパトカーや救急車のサイレンの音。耳の中で鳴り止まずそれが不穏な空気に包まれた時代と場所を作り上げていた。時代は現代のようで現代でないいつかー作家の原稿がタイプライター打ちだった。情報統制でインターネット含めあらゆる通信手段が奪われているのだろうか?ゲオルクが関わる人が次々と死んだり行方知れずになる。皆、ゲオルク側の人達ー亡命者や不法滞在者。
ナレーションはあまりいい声でなく音声も大きすぎた。その上語り手設定が良くなかった。最初はゲオルクが通うマルセイユのレストランの店主が語り手だった。それが途中から全知の語り手になり今度はゲオルクの視点になったかと思うと最後はまた店主の視点。語り手をこんな風に変える必然性を感じず居心地が悪かった。
いつもパンプスで小走りのマリーは迷子犬を探しているみたいで夫を探しているようには見えなかった。ゲオルク役のロゴフスキは相変わらず優しく顔を見るだけで安心するが今作では彼の良さが無駄使いされているような気がした。ロゴフスキがフランス語?彼にはドイツ語だけ話してもらいたかった。
ゼーガースの原作を読むことにする!そう思わせてくれたのでこの評価。でなければもっと低いです。
現代の風景で戦時中のような、フワッとした世界観についていくのに少々時間がかかりました。
とはいえ、マルセイユの風景がすごく綺麗で映像に圧倒されますね。
途中、解説のセリフもあり小説を読んでるような感覚にもおちいり、マルセイユの綺麗な風景がイメージを膨らませてくれるような不思議な感覚もしました。
そこら辺は監督さんの狙いでしょうか。
難民問題は僕には少し難解でした。
しかし、マリーは旦那さんが大好きなんでしょうが、男を取っ替え引っ替え。
難民問題、恋愛感が僕にはあまり共感出来なかったのが残念です。
全体的にはあまり他には無い映画なので面白かったです。
ネタバレ! クリックして本文を読む
最初に見出してナチ関係の映画かと思ったら…あれ?現代にナチ?よく分からん、しかもすっごく淡々と進んでくし暫く見てからこれ混乱する前にネタバレした方が良さそうと思いレビューを見てから舞い戻りました。
そして見終わった感想は、現代の難民問題の原因を「戦争や貧困等の様々な原因」→「ファシズムによる迫害」と置き換える事で沢山ある原因や時の政府の姿を1つに単純化して社会問題を政策だったり経済だったりの大きな視点から、実際に今振り回されている人達の視点まで降ろして問題定義した話なんではないかと理解。
その辺に何となく納得してから見たら、日本にいるとこういった状況は遠いけれど難民問題を抱える国の人達なんかにはもっと生々しいお隣さんの話なのかなと思えました。
三人称で主人公を呼ぶナレーションもお互い状況を語り合い確認し合うもかなりあっさりとした亡命希望者の関係も根無草の不安感やアイデンティティの喪失といったポッカリとした虚しさがあり淡々とした展開に後こういった人達が何人いるのか分からない先がどうなるかも分からないな恐怖感がじわじわくる。
いやでもこれかなり独特な空気感だったし見方を決めないと入って行けなかった〜そして見て良かったけど疲れた。
2020年5月14日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
架空の現代。ファシズムドイツに侵略されたフランスを舞台に、自殺した作家の名前を騙った男の人間ドラマ。
WOWOWのレビューにはサスペンスとありますが、サスペンスではまったくありません。サスペンスだと思って鑑賞した私としては、正直興味を惹かれない内容で、評価はかなり厳しめにしました。
レビューを書いた方は、映画をちゃんと観て書いたのか・・・そんな質問をしたくなる内容です。
ただ、世界観は不思議な魅力がありました。迫りくるドイツ軍。恐怖、焦燥、そして諦め。そんな心理が淡々と描かれています。
主題は、主人公と、自殺した作家の妻の交流です。しかし、他にも「その妻の恋人」、「死んだ知人の子供」、「亡命を志す女性」らと交流が描かれていて、彼等との別れがもの悲しく描かれています。
大仰に感動や涙を誘う映画でもありませんが、静かに染み渡るような感傷を得られる映画かもしれません。
すべての映画レビューを見る(全29件)