劇場公開日 2018年8月25日

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輝ける人生 : 映画評論・批評

2018年8月7日更新

2018年8月25日よりシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほかにてロードショー

シニアだって跳べるはず。英国の名優たちが老境の人生リスタートを好演

英国出身で1970年代から映画・テレビ映画の監督としてキャリアを築き、シェイクスピア戯曲の映画化「リチャード三世」から、ハリソン・フォード主演のハリウッド製サスペンスアクション「ファイヤーウォール」まで、多彩なフィルモグラフィーを誇る名匠リチャード・ロンクレインモーガン・フリーマンダイアン・キートンを老夫婦役で起用し、住み慣れたアパートメントの引っ越し騒動をハートフルに綴った「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」に続き、シニアの生き方、身の振り方をテーマにした映画を、今度は母国を舞台に描くのがこの「輝ける人生」だ。

長年連れ添った裕福な夫と破局した気位の高い女性が、質素な暮らしの姉のアパートに転がり込む――という序盤の筋は、ウッディ・アレン監督・脚本、ケイト・ブランシェットサリー・ホーキンスが異母姉妹を演じた「ブルージャスミン」と似ている。ただし、テネシー・ウィリアムズの戯曲をエリア・カザン監督が映画化した名作、「欲望という名の電車」とのプロット上の共通点を持つ「ブルージャスミン」が、迷走と破綻の度合いを深めていくのに対し、本作は邦題が示唆するように、中盤から明るくポジティブに展開していく。

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イメルダ・スタウントンが演じるサンドラは、夫の浮気を目撃し、豪邸を飛び出す。上流気分の抜けない妹を快く受け入れる姉ビフ役にセリア・イムリー。そして、ビフがサンドラを連れ出すダンス教室の仲間で、認知症が進んだ妻を施設に預けているチャーリー役にティモシー・スポール。3人とも演劇の本場・英国の舞台にも立つ名優であり、彼らのアンサンブルはときに軽妙、ときにエモーショナルで飽きさせない。さらに、バラエティーに富む楽曲に乗って彼らが踊るダンスシーンの楽しさも格別だ。

ビフやチャーリーとの関わりを通じて、姉妹の絆や何かに夢中になる情熱を取り戻していくサンドラの変化の過程を、スタウントンは実に細やかに表現している。ちなみに原題の「Finding Your Feet」は、「(子供が)立てるようになる、自信を持つ」といった意味。いくつになっても初心に返って人生をやり直せる、再起することができるのだ――そんな比較的凡庸なメッセージでも、円熟の演技と的確な演出が組み合わされば心躍る快作ができあがるという好例と言えるだろう。

高森郁哉

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