ウインド・リバーのレビュー・感想・評価
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羊たちの沈黙の再来
アメリカの社会問題
貧しい者たちを「独立」の名のもとに放置する罪。
アメリカのインディアンが、住んでいた肥沃な大地を追われ、もとの土地とはまったく無関係で、極寒で痩せた土地をあてがわれ、居住地として押し込まれたことは、ご存じと思います。
ただし、その土地がなかば独立国のように扱われていること。
それは本来は良い意味であったはずなのに、実は居留地自治体が、教育や警察を含めて、あらゆる行政サービスを自分たちだけのお金で賄う必要があることに思い至ると、ここに基本的人権すら無視された人々が捨てられるように住んでいるのだという重大さに慄然とさせられます。
この映画の舞台ウインド・リバー居留地も、居留地が極貧であることから、部族警察には警察官がたったの6人しかいない、これでどうやって治安が守れるの?という背景から、映画が作られています。
国民としてのサービスをほとんど満足に受けられない極貧の者たち。
凶悪犯罪が起きても、中央政府は、たった一人の若いFBI係官を派遣して、それでおしまいなのです。
しかし、自らの娘も失った失意のハンターが、FBIと二人で悪に立ち向かう、そういうストーリーです。
内容的には、アメリカ映画伝統の、勧善懲悪ストーリーなのですが、上記のような舞台背景があり、その問題点を訴えるという目的意識が明確に据えられているので、登場人物たちの心を表現する芸達者な役者たちの名演技もあり、一味も二味も違った佳作に仕上がっていました。
ヒーロー物とも言えるかも知れませんが、スパイダーマンのような話とは異なり、もしかすると明日、自分にでもなれそうな、まさに等身大のヒーローの活躍話なので、たいへん共感し、感動しました。
狂気と良心と
アベンジャーズのエイジオブウルトロンで、ホークアイのジェレミーレナーが、スカーレットウィッチのエリザベスオルセンを叱咤する場面がある。
ソコヴィアが宙に浮いている時で「わたしのせいで」と良心の呵責にさいなまれ、弱気になっている彼女に、
「誰のせいでもいい、なにしろ街は浮いてるし、ロボットたちがおそってきてる、おれなんか弓と矢でやってんだ、でもしごとだし、やるしかない、あんたの子守はできないし、過去なんて関係ない、とにかく戦え」と言って励ます。
印象的なシーンでよく覚えている。
脚本家Taylor Sheridanは(Sicarioの前に1本監督作があるが)三作で躍り出た時の人。
一作目がボーダーライン(Sicario)、二作目はNetflixで最後の追跡(Hell or High Water)、三作目がこの映画で、監督もつとめ、カンヌで(監督賞を)とってしまった。
三作とも重い主題、共通するものがあった。
ボーダーラインの衝撃は大きかった。
麻薬カルテルの巣窟へ入っていくFBI捜査官ケイトは、まるでカーツ大佐のいるジャングルへ入っていくマーティンシーンのようだった。
続く最後の追跡も、復讐劇に陥らず、といって社会派にも落とさない、絶妙な筋書きだった。
そしてWind River。
エイジオブウルトロンのあの場面から着想したとしか思えないキャスティング。
主従でも、師弟でもない、ホークアイとスカーレットウィッチに酷似した二人の関係性が、Wind Riverにも描かれていた。──それが、言いたかった。
人の狂気があらわれたとき、亡くなった者、生き残った者。
なにかの巡り合わせで、地獄のような運命のおちいってしまった人々。
それぞれの複雑な心象と、どうにもならない立場と、人の持つ残虐性。
それらが緊迫したドラマになっているのだが、復讐や執念を描きながらTaylor Sheridanが最終的に言いたいのは、地獄を見ても失われなかった人の良心だ──と思う。
狂気のこちら側には、かならず良心がある。
それが三作に一貫している。と思う。
裁く立場とは何か、真実を知った後の正義。
隔離されたも同然の極寒の山岳地帯で起こる、非日常的な日常。本来は法で裁かれるべき犯罪に、隔離されてしまっているが故に正義が揺れる。真相、復讐、後悔、仲間と家族、そして亡き娘達への変わらぬ愛。
前情報無しで観たので衝撃的だった。ジェレミー・レナー演じるコリー、エリザベス・オルセン演じるジェーン。アベンジャーズコンビの素晴らしい演技が、ラストまで一気に魅せてくれる。
特にジェレミー・レナーの、時間が解決するはずの心の痛みと、時間が解決し切れない心の内面を、表情と口数少ない言葉の絶妙な演技は必見。
復讐という重く難しいテーマを、自分ならどう行動するか考えさせられる。それにもかかわらず観終わった後の、何とも言えないスッとした気持ちは、結果として自分が求めていた通りだったからか。マーティンへの友としてのコリーの優しさ、ラストのゆっくりな一言一言が心に染みたからか。
重い内容だが、ゆっくり観て欲しい作品。
このクソみたいな世界で生きるということ
ラスト3行に込められた告発
事件自体は唾棄すべき集団レイプ事件を扱っていますが、
最も伝えたかったことはそこではなく、ネイティブ・アメリカンの人たちのこと。
ハリウッドが能天気な西部劇を作れなくなったのは
'70年に公開された「ソルジャー・ブルー」から。
これはその時代から何一つ変わってないアメリカの現状を訴えています。
あるサイトではそれはアメリカの「原罪」という言い方をしていて、
隠されたままのイマをえぐっています。
女性のFB I捜査官というと真っ先にジョディー・フォスターが浮かびますが、
この映画のエリザベス・オルセンもいいですね。
自然体で、変に大変がったりしないところが良かったです。
やっと女優に求める演技が変化してきたことを感じます。
映画館で観たらもっと楽しかっただろうな
物語、進行、展開、すべて終始楽しめました。唯一の違和感は防寒対策をしてこなかった捜査官のちょっとした着替えシーン。なんなんだこのムンムンの色気はと、鑑賞後調べてみたらなるほど納得のお方。しかし今作ではそれを封印し極寒地での熱演に全フリ。ハンターの男ぶり、無敵っぷりも痛快。ただ、根底のテーマに人種差別が孕んでいるぶん、手放しで楽しんではいけないものなのかも。
無法地帯ってあるよね。
正義
雪深い地方でのネイティブアメリカンの悲哀
静かな怒りと哀しみ
アメリカの深い闇
監督、脚本はボーダーラインなどで脚本をつとめたテイラーシェリダン。
ネイティブ・アメリカンの保留地で少々の死体が発見され、第一発見者のハンターと新人FBI捜査官が調査を開始する。
ハンターのコリー役にはジェレミーレナー。
新人FBIのジェーン役にエリザベスオルセン。
どちらもアベンジャーズで有名なお2人ですね。
舞台はかつて白人によって追いやられた辺境の地ワイオミング州のウィンドリバー。
ネイティブ・アメリカン保留地は白人に対する強い嫌悪感もあり、星条旗を逆さまになっていたり、白人の新人FBI捜査官にも敵意を隠すこともなくあらわしています。
それもそのはずで、事件として成立しなければ死亡者数や行方不明者数もカウントされず、FBIものこのこ引き返さなければなりません。
その為、保留地では無法地帯と化しているところも多々ありガン患者が亡くなってしまうより殺人事件の死亡率の方が高いそうです。
しっかりとメッセージを残してくれている映画ですが、エンターテイメント性も高くハンターのジェレミーレナーがホークアイのような超人的な活躍を見せる場面あり、FBI捜査官のエリザベスオルセンの魅力もたっぷりです。
また、ストーリーもただのサスペンススリラーではなく娘を亡くした父2人のドラマにも焦点をあてられ見応えたっぷりです。
しかし、ナタリーもいつかはウィンドリバーを後にして白人が作り上げた都会に行く事を夢みていたのでしょうね。
恐らくコリーの娘さんも。
オススメです。
実話故の…。
最初は犯人探しに意識をもっていかれて観ていたんですが…(よくあるやつか…と)
気になるシーンが、ネイティブアメリカンの居留地に入る所で星条旗が逆さまに掲げられていて、何だろ?と思って調べると…生命と財産の危機を知らせる為だとか。
犯行現場で何が起きたのかのシーン…。あぁ 伝えたい事は犯人云々ではないんだなぁ と思いました。
今なお続く差別と現代の闇、孤立した土地が抱える問題。そこなんだと気付かされました。
手つかずの自然の中で野生動物から身を守る事の厳しさを伺わせるセリフの数々や銃の威力。
遺された者の心情が痛いほど伝わってくるとても辛い実話でした…。
飽きずに観れた
アベンジャーズの二人の共演は良かった。知ってる人が出てるとなんかホッとする。名前覚えられないけど女優さんの声が好き。
ウォーキングデッドに出てた俳優さんもいた。もっとムキムキになってた。
プライムビデオでミステリーで検索したら出てきたので観賞してみた。
狩りのシーンは当たり前に出てくるけどちょっと苦手。後半の展開はびっくりした。そこまで皆でやらなくてもいいのに。
可哀想だった。
みんな血の気が多いというかストレスたまってる感じ。
ミステリー要素はあったけど主人公の娘さんの犯人が分からないのが残念。
実話ということだったがネイティブアメリカンのこと良く知らないからあまり感情移入出来ず。もう少し分からない人にも分かるよう描写があったら良かったなと思った。
久しぶりに良い映画に出会えた!
狼
山にあった腐乱死体は、恋人だったの?。
現実にあった話らしいけど、FBIの捜査方法が稚拙で涙目になった。
話の展開は置いといて
そこに生きる人達はとても上手く描写されて素晴らしい!。
白い大地
白い大地は、不毛で何もない。
そんな場所に、インディアン居留地が作られ、彼らはそこに押し込められたのだ。
これは、紛れもないアメリカ合衆国の歴史だ。
そして、そんな場所に資源が見つかれば、我が物顔で、所有権を主張する。
シェール石油やガスのブームに乗って、あちこちを掘り起こそうとしている現代アメリカ社会の様子も伺える。
この事件の背景は、ここまでがセットだ。
生まれた人種や民族、国や地域、場所によって行われる苛烈な差別や偏見。
これは、何もアメリカに限った話ではないだろう。
中国のウイグル人に対する苛烈な差別や、自治区でレアアースなど貴重な資源が見つかると漢民族が大挙してやってきて、大地を掘り起こしていくのもそうだ。
日本でも、北海道の開拓では、アイヌを迫害し、狭い地域に追いやったし、すこし前に、アイヌ女性に対して、開拓者がレイプをしていたというようなことを伝えるドラマを見た覚えがある。
この映画を観て、したり顔で、アメリカの暗部・闇の歴史、法の及ばない場所がある、など言うのは簡単だ。
レイプしたり、人を簡単に殺してしまうような連中には憤りを感じるし、そんな奴らが、猟銃の弾丸で撃たれ、吹き飛ぶ様を見ると、ざまみろみたいな感覚にも囚われる。
この映画は実際にあった事件をベースに作られたものだが、彼らインディアンは、復讐に囚われて生きているのだろうか。
暴力には暴力しか手立てはないと思っているのだろうか。
白人が持ち込んだ薬物の中毒になってしまった息子を一時は見放したものの、迎えに行くつもりだと話すインディアンの父親の気持ちを考えると、そんなことはないのだと改めて感じる。
そう、ここまでが、この映画のストーリーなのだ。
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