ゴッホ 最期の手紙のレビュー・感想・評価
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たった8年間で、素人だった彼は影響力のある芸術家に
映画「ゴッホ 最期の手紙」(ドロタ・コビエラ監督)から。
「この作品は100人以上の画家による手描きの絵による映像です」
作品冒頭のテロップが示すとおり、今までに観たことがない形式。
とても新鮮だった・・と記しておきたい。
作品は、ゴッホの死の謎解きを中心に展開されるサスペンスだけど、
油絵風の画像が、なぜか緊張感を和らげてしまった。(笑)
さてゴッホについて、多少の予備知識はあったつもりだったが、
あっ、この視点でゴッホを評価したことはなかったな、とメモをした。
「フィンセントは28歳にして初めて絵筆を手に取った」
これは、画家としては遅咲きだった、という知識があったものの
「たった8年間で、素人だった彼は影響力のある芸術家に・・信じられん」で、
そう言えばそうだよなぁ、とメモをした。
エンドロールに近いテロップで、こう文字が浮かびあがる。
「彼は8年間で800点以上描いだが、生前に売れたのは1点のみ」
「死後『近代絵画の父』と称される」と、その不思議さを再認識した。
どんなに絵が好きだったとしても、また毎日描いていたとしても、
さらに、どんな天気でも一日中絵を描いていたとしても、
絵画の世界で「印象派の巨匠」と呼ばれる存在になれるものだろうか。
私は、そちらの方が「謎」に近い。
彼を変えたのは「友人のゴーギャン」なのかな。
十人十色の人物像
ゴッホを求めて
手書きやCGのアニメーションの圧倒的な映像美やハイクオリティーさには目を見張らされるが、斬新さや驚きは稀。
しかし、本作は違う!
油絵が動く!
役者の演技に油絵を合成。
100人以上の絵描きと7年の歳月という労力と時間をかけただけあって、完成した画は“こんなアニメ見た事無い!”。
1コマ1コマ、芸術作品を見ているかのよう。
回想シーンはモノクロの油絵であり、こちらもユニーク。
画の表現法が先になってしまったが、本作の題材は…、
ゴッホ。
“動く油絵”は、彼のタッチの再現とリスペクト。
話は変化球。ゴッホの伝記物語ではなく、
拳銃自殺したゴッホが弟に宛てた手紙。
ゴッホの友人だった郵便配達の父からその手紙を託された息子が、ゴッホの死の真相に迫る…。
恥ずかしながらゴッホが自殺した事は初めて知ったが、ゴッホが生前評価されず、死後評価された事は知っている。
それ以外でも、ゴッホの人生は苦難の連続。
母には愛されず。
親の期待に応えようとするも、多くの職を転々。
画家となって才能を発揮するも、当時は異端の存在。
周囲や子供からも変人扱い。
唯一弟だけが理解し支えてくれたが、やがて精神を病んでいく…。
主人公の青年がゴッホの死の謎を調べていくと、ゴッホと親交あった人々の証言に矛盾が生じる。
ゴッホの本当の素顔とは? 何故彼は自ら命を絶った?
ゴッホの死の直前を知る医師に辿り着き、彼から明かされた真相とは…。
手紙に込められた思いとは…。
ゴッホの死は今も謎に包まれている為、本作の真相は本作だけの仮説。
創作として筋は通っているようで、悲痛でもあるが、それが直接死に繋がったか、ちと動機が弱い気もした。
登場人物も多く、カラーとモノクロで色分けしているも、現在と過去交錯し、なかなか複雑。
が、ゴッホと近かった実在の人物やゴッホの謎に迫る内容は、ファンには堪らないだろう。
いつぞやの『名探偵コナン』の映画でゴッホを題材にして“アート・ミステリー”なんて言った割りにそうでもなかったが、本作は話に面白味もあり、興味深くもあり、アートとして堪能も出来、これぞ本当の“アート・ミステリー”である。
日本で言ったら、葛飾北斎のあの独特のタッチの画が動く。
それはそれで見てみたい。
興味深い、深いよー。
ゴッホ好き必見
ゴッホと言えば作品の多くを知らなくても自分で耳を切り取った事件は有名だと思う。そこからは激しさや狂気の人というイメージだけど、映画の中では優しく愛情深いゴッホが描かれている。
ストーリーとしてはゴッホの死の真相を確かめるミステリー風になっている。
普通のアニメ映画と違うのは、ゴッホタッチの油絵がアニメーションになっていていて、作品にも描かれている人々がスクリーンの中で動くのだぁ!
オープニングのとき100人の画家の協力を得たというナレーションがあって、どうやって作ってるのか?興味深くて調べてみた。
実際に油絵をキャンバスに描いていくらしい。キャンバスに絵を描き終えたら、次に動く部分をこそげ取って次のコマとなる絵を描いていく。気の遠くなる作業やわぁ〜
この膨大な作業のために公募によって各国から選ばれたアーティストたちが集まったという。作業の前にゴッホの筆致を特訓して臨んだというからスゴイわ。
所々で、じんわりしたり、うるっとしたり心に響くセリフもあり、とにかくゴッホの絵が好きな人にはとても興味深い映画だと思う❤
What this nobody has in his heart. ゴッホ好きなら観なきゃ損
ゴッホの絵はスゴい。いや、ホントにスゴいんです。実際に展示会等で作品を観ると本やネットではわからない迫力があります。初めてゴッホの作品を生で観たときには、まぁ正直圧倒されましたよね。自分の貧困なボキャブラリーでは表現できない、心を鷲掴みされる感じで。心に響いてきます。あまり好きな言い方ではないのですが、どんなにインターネットが発達しても「実際に観なきゃわからない物」が、そこにはあるんですよね。ぶっちゃげ絵画ってキャンパスに絵具を塗ってあるだけの代物なんですよ。でも、それに魅了され感動を覚える。だからアートって面白い。
そして今作品はそんなゴッホの絵を基にして、ゴッホの最期に迫っています。この映画を作ろうと考えた人は狂ってるなぁ。もちろんいい意味で。良くここまでの物作ろうと考え、それを実現させたもんです。ゴッホっぽい絵がぬるぬる動く画面は新鮮でした。話もゴッホの死の陰謀設を含ませながら、よくまとまっていたと思います。
医者の娘のマルグリット、声を聴いて「もしかして?」っと思ったらやっぱりシアーシャ・ローナンでした。声に特徴ありますよね。ちなみにエド・シーランのPV「Galway Girl」に出ている彼女はメチャメチャキュートです。医者のガシェ役はドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のブロン役のジェローム・フリン。こちらは見た目でわかったのですが、ジェローム・フリンって本当にガシェ医師の絵に似ています。
でも折角こだわってるなら全編フランス語で作って欲しかったですね。オランダ人で、南仏ではフランス語を喋っていたであろうゴッホが流暢に英語を話すと何処かしら違和感があります。
それにしても「Loving Vincent」という原題が表すようにゴッホへの愛情溢れる作品でした。油絵アニメという他では見られない手法と共に観て良かった一作です。
動く絵画
油絵具の匂い
前半凄い
ゴッホの大展覧会
「世界初、全編が動く油絵で構成される珠玉のアートサスペンス映画」という触れ込みの本作だが、全編が動く油絵で構成されたアニメーションという意味では世界初の試みではない。
ロシアにアレクサンドル・ペトロフというアニメーション作家が存在する。
彼はガラス板に油絵を描いてそれを撮影して、変更部分を消してまた油絵を描くという技法で作品を発表している。
ただし描画、撮影、編集の全てを1人でこなすためおのずと膨大な時間がかかるため作品は少数で尺も短い。
第72回アカデミー賞短編アニメ賞を受賞した『老人と海』が最長の作品になるが、それでも50分である。
それ以外は『雌牛』が10分、『おかしな男の夢』が20分、『水の精 〜マーメイド〜』が10分、三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーにも収録されている『春のめざめ』が28分である。
本作は96分もの長編だが、125人もの画家が分業して油絵を描いたからこそ成し遂げられた賜物だろう。
唯1人の日本人として参加した古賀陽子がゴッホの絵柄に近付けるために3週間もの研修期間を経験したようだが、やはり125名それぞれの画家の個性は如実に現れているように感じた。
日本をはじめ世界中のアニメでも各パートでアニメーターの個性が出る場合があるので、それと変わりはないのだが、ペトロフという1つの個性が炸裂させる唯一無二の完全なる世界観をひとたび経験してしまうと本作の各画家の画調の違いにどうしても目がいってしまう。
またペトロフが0から油絵の映画を制作するのに対して、本作は俳優を起用してまずは実写撮影をしてそれを油絵に直す手法を用いているので、同じ油絵という以外両者の共通項はほぼない。
とは言え本作における何層にも塗り重ねられて所々盛り上がった箇所のある油絵はまさにゴッホの筆遣いを感じさせるものである。
小林秀雄は『ゴッホの手紙』を読んで文学者の視点からゴッホを高く評価したようだが、いまだ読んでいない筆者としては彼の描いた作品から彼を眺めるしかない。
ゴッホを扱った映像作品は100作品を優に超えるらしく、監督のドロタ・コビエラと制作兼共同監督のヒュー・ウェルチマンは映像作品や資料などをできる限り渉猟し、ゴッホは本当に自殺したのかを疑う近年の議論を踏まえて本作を創り上げたようだ。
珍しいところでは黒澤明の『夢』ではマーティン・スコセッシがゴッホを演じていた。
ゴーギャンとの共同生活と諍いからの別れ、精神病院への入院、そして自殺、アルルへ移住以後オーヴェールで果てるまでの一連の流れはあまりにも有名である。
そのくせ、実際にはどのような人物とゴッホが交流があったのか実際には知らなかったので、本作ではそこも含めて興味深く鑑賞することができた。
マルグリット・ガシェ役のシアーシャ・ローナンは『ブルックリン』に主演したこともあって本作の俳優の中では一番旬だと思うが、筆者としてはライアン・ゴズリング監督作の『ロスト・リバー』でのヒロイン・ラット役で見せた純粋な少女の演技を推したい。
去年東京都美術館で開催された『ゴッホ展 めぐりゆく日本の夢』において展示されていたガシェ家の芳名録には多くの日本人の名前が記載され、戦前からゴッホ終焉の地オーヴェールに数多くの日本人が訪れていることを知った。
こちらが申し訳なくなるくらいに日本に憧れを抱き、浮世絵を模写した油絵も数多くあるゴッホを嫌いな日本人は殆どいないだろう。
2010年にも国立新美術館で『没後120年 ゴッホ展』が開催され、大規模なゴッホ展が久しぶりであったこともあり平日でも会場は込み合っていたことを良く覚えている。
さすがに本作にも登場するような有名な絵は殆ど展示されていなかったが、それでもゴッホを感じるには十分な絵が100点以上もある大規模な特別展であった。
そして本作は内容よりもやはり動く油絵に目を奪われる作品なのではないだろうか。
各所にゴッホの名画がちりばめられている。
アルル中心のカフェ・テラスを描いた『夜のカフェ・テラス』に始まり、アルル時代の『ゴッホの寝室』、アルマン・ルーランが事情聴取に足を運んだ『夜のカフェ』、パリの『タンギー爺さん』『ローヌ川の星月夜』、オーヴェール期の『医師ガシェの肖像』『鴉の群れ飛ぶ麦畑』『オヴェールの教会』などなど、殆どの場所やそれぞれの登場人物にほぼ元になるゴッホの絵が存在する。
そしてオーヴェールを離れるアルマンが車窓から眺める景色の最後では、ゴッホが敬愛したミレーの絵を模写した『種まく人』が映し出される。
本作では主役を山田孝之が日本語に吹き替えていた。
声を聞いてすぐに山田だとわかったが、それにしてもあっちこっちで引っぱりダコなその人気ぶりを今さらながら実感する。
結局真相は明かされないまま物語は幕を閉じるが、動く油絵を鑑賞した余韻が胸に残る。
美術館でゴッホの展覧会を観たのと同じような感覚に近い。
近代絵画はパパばかり
油絵と鉛筆画的手法でのアニメーション。勿論モチーフはファンゴッホであり、回想部分を白黒で描かれている。
ファンゴッホが亡くなってから、弟テオ宛の未達郵便を届けに行く郵便夫ジョゼフ・ルーランの息子が、ファンゴッホの自殺の真相を探っていくストーリー展開である。ストーリーそのものは美術史に載っている内容であり、自殺、他殺等々の諸説を上手くミステリー仕立てに織込んでいるのだが、如何せんドラマの強弱が薄く、終盤迄の展開が冗長である。なので、1時間以上は眠気を堪えるのに精一杯で、折角のゴッホの作品をストーリーに組み込んでいるのに、あまり憶えていないという失態をしてしまった。
およそ100人の画家が描いたというアニメーションは、とても挑戦的であり、そのチャレンジを称える。しかし、難しいのは絵画というその被写体を閉じ込め凝固させた芸術と、反対に自由に動かすアニメーションの融和点をなかなか見つけることが出来なかったのではないかということ。ただ、ストーリー自体は、ファンゴッホの慈愛が余すところ無く描かれ、改めて日本人のゴッホ愛みたいなものの原点を思い知らされた内容ではある。
いずれにせよ、この挑戦、そのままシリーズ化して、他の画家にも果敢に挑んで欲しいと願うばかりである。
ミステリーとゴッホ作品の両方が楽しめる傑作
映像表現は斬新
あの偉大な画家への愛に満ち溢れた作品
拳銃自殺を図って亡くなったとされているゴッホの真相を探るべく、推理小説タッチで構成された作品。1秒当たり12枚の手書き油絵を繋ぎ合わせて映像化した手法は正に「動く油絵」そのもので斬新でした。ゴッホから弟テオに宛てた手紙を、彼の死後、郵便配達人ジョゼフ・ルーランの息子アルマンが配達に向かう設定でこの作品は始まります。作品の中でこの偉大な画家は、自然を愛し、周囲の人々に優しい人柄として描かれています。そして絵画に対してはとりわけ真摯な姿勢で向き合っていたことを教えてくれます。自分の耳を切り取ったりと言った奇行で、ともすれば変人奇人扱いされている彼のイメージを根底から変えてしまう本作は美術ファンならずとも必見と感じました。
濃厚な1時間半
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