ゴッホ 最期の手紙
劇場公開日:2017年11月3日
解説
「ひまわり」「夜のカフェテラス」などで知られる印象派の巨匠フィンセント・ファン・ゴッホの死の謎を、全編油絵風のアニメーションで描き、解き明かしていく異色のサスペンスドラマ。郵便配達人ジョゼフ・ルーランの息子アルマンは、父の友人で自殺した画家のゴッホが弟テオに宛てた手紙を託される。テオに手紙を渡すためパリへと向かったアルマンは、その過程でなぜゴッホは自殺したのか、その疑問が募っていくが……。俳優が演じた実写映像をもとに約6万5000枚におよぶ油絵が描かれ、アニメーション化するという手法で作られた。出演した俳優はダグラス・ブース、ヘレン・マックロリー、シアーシャ・ローナン、エイダン・ターナーら。
2017年製作/96分/G/イギリス・ポーランド合作
原題:Loving Vincent
配給:パルコ
スタッフ・キャスト
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2021年8月14日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
原題の「Loving Vincent」は、手紙の最後に書かれる「愛を込めてフィンセント」という意味です。
邦題の「ゴッホ~最期の手紙~」は、主人公を行動させる元となる手紙のことです。
サブタイトルの「愛か、狂気か」は、愛があれば、狂気はないし、愛がなければ、狂気しかないというように感じました。
ゴッホやゴッホの絵画に興味がある人には、お勧めできる映画です。
絵画に興味のない人にも、この映画を鑑賞することで、絵画やゴッホに興味を持つきっかけになれる映画なので、お勧めできる映画です。
フィンセントが描いた油絵を元にして、油絵によるアニメーションで、フィンセントが見た世界を見せるという演出は気に入りました。
ストーリーは、今でも判明していないフィンセントの死について、実在の人物に語らせて、真相を追求するというミステリーです。
自分のこの映画を観て、フィンセントの死について、考えてみました。
フィンセントは、南フランスのアルルを気に入っていましたが、アルルの人々と上手く過ごすことができずに、追放の嘆願書によって追放されました。
フィンセントは、南フランスのアルルを追い出され、パリにも馴染めず、テオの勧めでポール・ガシェのいる北フランスのオーヴェル=シュル=オワーズに滞在し、滞在するために、多くの絵画を制作しました。
フィンセントは、南フランスのアルルにはない、北フランスのオーヴェル=シュル=オワーズの何かに惹かれたということです。
フィンセントは、過去の失恋により、女性に対する抵抗感がありました。
マルグリット・ガシェは、父親であるポール・ガシェの過保護のため、オーヴェル=シュル=オワーズの男性と交際することができません。
フィンセントは、ポール・ガシェの治療を受けるために、マルグリット・ガシェと出会いました。
ポール・ガシェは、フィンセントとは芸術を通して、フィンセントを尊敬しています。
マルグリット・ガシェは、父親であるポール・ガシェが尊敬しているフィンセントに親しみから愛情を持つようになるのは当然でしょう。
フィンセントは、初めてマルグリット・ガシェという女性と普通の交際ができて、愛情を持つようになり、幸せの絶頂になるのは当然でしょう。
タンギー爺さんの言っていたフィンセントがやっとつかんだ星とは、マルグリット・ガシェだということです。
本当は芸術家になりたかったが、父に逆らえず、医学の道へ進んだんだポール・ガシェは、フィンセントとマルグリット・ガシェの交際には反対したでしょう。
ポール・ガシェは、鬱病の専門家としての知識を利用して、「テオは第三期の梅毒にかかっている」と嘘を言って、フィンセントを精神的に追い込み、マルグリット・ガシェと別れさせたということです。
妻のヨーも長男も梅毒ではないので、テオも梅毒ではありません。
しかし、テオが体調を崩していたのは事実です。
フィンセントの自殺の痕跡が全て消され、警察が探しても分からないほどの隠ぺい工作が行われました。
この隠ぺい工作ができるのもまた、警察と医者として付き合いがあるポール・ガシェだけです。
他殺か自殺かという疑問は残りますが、ポール・ガシェがフィンセントの死に関与していたことは事実だと感じました。
フィンセントは、南フランスのアルルでは見つけられず、北フランスのオーヴェル=シュル=オワーズで見つけたのは、マルグリット・ガシェの愛情です。
フィンセントが庇いかったのは、マルグリット・ガシェです。
マルグリット・ガシェが知られたくなかったのは、フィンセントへの愛情です。
フィンセントが1日でも多く長生きしていれば、もっと多くの絵画を残すことができたと思うと、残念でしかありません。
自分も生きている今日を大切に生きなければならないと感じました。
2021年3月21日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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近代芸術を代表する画家、フィンセント・ファン・ゴッホ。
彼の死後に発見された手紙を弟テオに届けるため、パリへと向かった青年アルマンだったが、ゴッホに縁のある人々から話を聞くうちに、次第に彼の死に対し疑問を抱くようになる。
ゴッホの死の真相へと迫るミステリー・アニメ。
ゴッホの主治医だったガシェ医師の娘、マルグリット・ガシェを演じたのは『グランド・ブダペスト・ホテル』『ブルックリン』の、名優シアーシャ・ローナン。
6万5,000フレームにも及ぶ映像を、油絵を繋ぎ合わせることでアニメーションにする、という常軌を逸した技法で表現した、これまでに全く観たことのない芸術作品。
あまりに自分の知っているアニメーション、もっと言えば自分の知っている映画とはかけ離れた映像表現だった為、とにかく度肝を抜かれた。
あまりに凄すぎるヴィジュアルに驚くあまり、映画の冒頭は全くお話が頭に入ってこなかった😅
ゴッホのことを知らない人は居ないだろうが、彼の生涯について詳しく知っている人は少ないのでは?
ちなみに自分は「耳を切り落として自殺した人。生涯で一枚しか絵が売れなかったが、死後に評価されてレジェンドとして扱われるようになった可哀想な人。」くらいの知識しかなかった。知っている絵も「ひまわり」くらい。
んだもんで、登場人物や描かれる風景などが実際のゴッホの作品を下敷きにして描き起こされたものだと後から知ってビックリ!
「黄色い家」や「夜のカフェテラス」などの作品が、そのままアニメーションの舞台になっているって、そんな映画有り!?
常識では考えられない情熱で作られた、正にゴッホに対するラヴ・レターのような作品です。
ヴィジュアルの凄みは世界でもオンリーワンなのに対し、物語はちょっと残念。
手紙の配達なんて面倒くせーよ、というスタンスの若者が、徐々にゴッホ自殺事件に対し興味を持ち始め、だんだんと探偵のように調査をしていき、遂に真相らしきものへと辿り着くというストーリーラインは面白い!
…が、オチが弱い😔
史実の上でもはっきりとしていない事柄を扱っている以上、真犯人はおまえだっ!的な決着をつけられなかったというのはわかるんだけど、やっぱり映画的にスッキリするような結末が欲しかったところ。
同じ人物でも、観察する者によって受ける印象は異なる。ある者は礼儀正しい紳士だと言い、ある者は異常な背教者だと言う。
これは人間関係における真理であると同時に、その価値を信じる人にとっては宝だが、理解し得ない人にとってはガラクタだという、芸術というものに対するメタファーのようだ。
探偵のように振る舞うアルマン。ゴッホの死後に彼の身に起きた悲劇を追及する彼に対し、渡し船の主人が生前彼に対して良き友人であったのかと問い詰める。
これはゴッホが生きている間には評価せず、死後になってようやく彼を持ち上げた評論家たちに対するカウンターとも受け止められる。
夏目漱石の小説「草枕」の主人公も画家だが、彼は仕切りに探偵について悪態をつく。
探偵に「屁の勘定」をされては堪らない。とこう言う。
ここにおいて、探偵とは当然評論家のことを比喩しているのであろうが、この映画の制作者も「草枕」からインスパイアされたのかな?とちょっと思ったりしました。
オチが弱いのがちと欠点だけど、ゴッホの絵画のようなヴィジュアルがもたらす不穏な雰囲気は、終盤まで物語の緊張感を持続させてくれるので、アーティスティックな作品ながら退屈さは一切ない。
どうなるのか気になって、常に前のめりになりながら鑑賞していた。
こんなヤバい映画は観たことがなかったし、今後こういう映画が生み出されるとは思えない。
狂気すら感じられるゴッホへの執着から目が離せない。
人によって合う合わないはあるだろうが、絶対に観て損はしないアニメーション界のマスターピース!
2020年7月14日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
二本立て二本目。油絵アニメが斬新。ゴッホの最期、その真相は?
ミステリー要素が強く、友人と鑑賞後に議論なんて楽しいと思います。私の印象は自殺6割、自殺幇助2割、バカ者ふたり説2割って感じかな。
今日の二本を見て、偉いのはゴッホの弟だと思う。人格者です、もっと褒めてあげて欲しい(笑)
吹替版鑑賞
2019年12月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
125名の画家がゴッホタッチで描いた62450枚にも及ぶ油絵を基に作られたアニメーション。ゴッホが弟テオに書いた手紙で「我々は自分たちの絵にしか語らせることはできないのだ」という言葉があったため、彼の絵に語らせるべきではないか?といった経緯で、前人未踏の大胆な手法でその人生を描いた映画なのです。
ストーリーは、アルマンという青年が郵便配達人である父親からゴッホが弟テオに宛てた手紙を託され、自殺したとされるゴッホの死の真相を探るというもの。この際、ストーリーはどうでもよくなるくらい画面に釘付けとなってしまう。何しろ油絵が動き出すんですよ!回想部分はモノクロの水彩画になり、これもまた素敵なのです。
ゴッホの人生については映画『炎の人ゴッホ』でしか知らなかったのですが、耳切りの部分はあっさり描き、自殺したとされる腹部の銃痕だとか、かなり検証されている感じのストーリー。有名な絵をもとに人物像も作り上げ、それぞれの証言が食い違ってるところもミステリーとして面白かった。
生前には1枚の絵しか売れなかったというゴッホ。記憶に新しいのはバブル期に価格が高騰して、ゴッホというのは財テクのための画家だったのかと、誤った認識を持たされたことでしょうか。波乱に満ちた晩年や彼の内面については他の映画で描かれているので、この作品はこれで良しでしょう。