三度目の殺人

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劇場公開日:2017年9月9日

三度目の殺人

解説・あらすじ

「そして父になる」の是枝裕和監督と福山雅治が再タッグを組み、是枝監督のオリジナル脚本で描いた法廷心理ドラマ。勝つことにこだわる弁護士・重盛は、殺人の前科がある男・三隅の弁護を仕方なく担当することに。解雇された工場の社長を殺害して死体に火をつけた容疑で起訴されている三隅は犯行を自供しており、このままだと死刑は免れない。しかし三隅の動機はいまいち釈然とせず、重盛は面会を重ねるたびに、本当に彼が殺したのか確信が持てなくなっていく。是枝監督作には初参加となる役所広司が殺人犯・三隅役で福山と初共演を果たし、「海街diary」の広瀬すずが物語の鍵を握る被害者の娘役を演じる。第41回日本アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本、助演男優、助演女優、編集の6部門で最優秀賞を受賞した。

2017年製作/124分/G/日本
配給:東宝、ギャガ
劇場公開日:2017年9月9日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第41回 日本アカデミー賞(2018年)

受賞

最優秀作品賞  
最優秀監督賞 是枝裕和
最優秀脚本賞 是枝裕和
最優秀助演男優賞 役所広司
最優秀助演女優賞 広瀬すず
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(C)2017フジテレビジョン アミューズ ギャガ

映画レビュー

4.0役所広司の表情を凝視するだけで無間地獄に……

2022年3月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会、映画館

是枝裕和監督がオリジナル脚本で構築した世界は、法廷心理ドラマ。
勝ちにこだわる弁護士と、殺人の前科を持ちながら再び殺人をおかし火をつけた容疑で起訴され、犯行を自供する男。この2人を福山雅治と役所広司が演じているのだが、観れば見るほど理論武装がまるで役に立たず、本当に目の前の男が人を殺したのか確信が持てなくなっていく弁護士・重盛の苦悶の表情が印象的だ。
撮影に際しては、1年間以上にわたり弁護士や検事への取材を敢行したという是枝監督。
「人殺しが出てくるような映画を撮ったことがなかった」是枝監督は、「神の目線、全てを知る人が登場しない法廷ものが果たして成立するのか」を検証するため、弁護士陣の協力を仰ぎ、作品の設定通りに弁護側、検察側、裁判官、犯人、証人に分かれた模擬裁判を実施。ここで出てきたリアルな反応や行動などを抽出し、脚本に落とし込んでいったという。
その丁寧な準備には頭が下がる思い。と同時に、自供していた犯行を簡単に否認し、周囲を大混乱に陥らせる男を嬉々とした面持ちで体現した役所には、最敬礼だ。

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大塚史貴

4.5「空っぽの器」という言葉が、役所広司主演作『CURE』を想起させる

2017年9月6日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

怖い

興奮

謎めいた事件の真相を追う者が、対峙する犯人の闇にいつしか取り込まれてしまうという筋は、映画にもたびたび登場する。接見室のガラス越しの対話シーンという点では、近年の傑作『凶悪』(白石和彌監督)と共通するが、役所広司が演じる三隅を指して語られる「空っぽの器」という言葉で、黒沢清監督作『CURE』を思い出した。そこでは刑事の役所と、催眠暗示の使い手の萩原聖人、それぞれの状態を示唆するように同様の表現が使われる。

『CURE』では役所が犯人を追う側、『三度目の殺人』では犯人という立場の違いはあるが、犯人のブラックホールのように空虚な闇に取り込まれてしまう構図や、一種の超能力のような特殊能力を犯人が備えることの示唆を合わせると、黒沢監督の『CURE』に対する是枝監督からのアンサーソングのようにも思える。そう考えると、三隅が残す「十字」は、『CURE』の「X字」の切り傷との符号のように見えてくる。

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高森 郁哉

5.0真実が入っていない空っぽの器

2025年7月2日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

三度目の殺人

2017年公開

タイトルは「三度目の殺人」
ならば、最初の殺人は、昭和61年1986年の北海道留萌での二人が殺害された強盗放火殺人事件のことです
犯人は死刑を免れている
判決を下したのは主人公の父
今では死刑判決を下さなかったことを後悔しています

二度目の殺人事件は、劇中の現在公判中の殺人事件のこと
川崎の食品加工会社社長強盗殺人遺体損壊事件
冒頭にその殺害シーンがあります
被告は最初の殺人事件と同じ三隅
劇中では、はっきりとは示されませんが、公判中の裁判で死刑を求刑されるようです
主人公の弁護士重盛は死刑判決から無期へ減刑を勝ち取ろうと、様々な法廷戦術を弄そうとしています

では、三度目の殺人とは?

もちろん、この裁判で、ラスト10分で下される死刑判決のことです

つまり、死刑とは社会による殺人だという本作の主張がタイトルで容易に読み取れるようにできています
すなわち本作は人が人を死を選別する死刑制度を批判する作品です
それ故に、人が人を裁き生命を奪うことが果たして正しいことなのか、理不尽なことではないのか、それを観客に考えさせるように、物語も、演出も考え抜かれて構成されています
だから、主人公の弁護士初め、この裁判に関わる法曹界の人物は皆、事務的に、人の生死に関わる重大性を少しも感じていないかのように描かれます
「罪と向かいあうとは、真実から目をそむけないことです」そう真面目そうな女性検事の発言に主人公の弁護士達は冷笑するのです
市川実日子にピッタリの役でした
いま、こういう役なら右にでる人はいません
被告人は言を左右して何が本当なのか分からなくします
役所広司の巧みな演技がそれを増幅させます

弁護士役の福山雅治はいつもの自信満々な姿ではなく、個人的な悩み事を抱えて、不安そうです

本作は、この被告人が本当に殺人事件の犯人なのか?動機は何なのか?
真相はなんなのか?
そんな事はどうでもよいのです

人は神ではないのだから、絶対に正しい事などわからないのです
しかし、それでも死刑制度は日本に存在していて、死刑判決を受けた受刑者はある日国家によって殺人されるのだ!と、それを大声で主張している映画です
その上で、この主張に賛同するのか、それでもまだ別の意見を持つのか、それは私達観客のそれぞれが本作を見た上でどう考えるのか、よく考えてみて欲しいということです

ラスト10分の面会で三隅と重盛とで交わされる会話から恐らく真実と思われることがようやくわかります

被害者の娘咲江の為に彼女の父に裁きを与えた
その真相が明らかになれば彼女が法廷で晒し者になる、それを回避しょうとして一転して殺害自体を否認したということでしょう
保険金殺人というのも、見て見ぬふりをした咲江の母親への裁きであったのでしょう

重盛が真実にほぼたどり着いた事を知り、三隅は突如として全面否認に転じます

ガラスの反射による三隅の顔が二重にみえる映像は、人間の心の多重性を表現力していたと思います

咲江が立ちよるパン屋のシーン
丸十ベーカリーの看板が目立っていました
丸は○、十はXです
監督からのヒントだったと思います

慌てふためく弁護士陣
真実の隠蔽をはかり、咲江の証言の口封じすら行うのです

つい先日
死刑執行のニュースを見ました
三度どころか数度目の殺人だったようです
本作では、判事も、検事も弁護士も、誰も真実を知ることがないまま、死刑判決がくだされました
まさに空っぽの器です

本当のことで、人の命を裁いたのは実は三隅だけだったのです

この死刑囚はどうであったのでしょうか?

真実に目を向けていない判決なら、罪と向かいあうこともまたできないまま死刑にするということではないでしょうか?

人の命を弄ぶのに理不尽なことです

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あき240

3.5タイトルにある三度目とは、、

2025年1月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

有罪率99.9という日本の司法
この是非では無く、「裁く」という現場の本質とはなんなんだろう

自白のみで具体的証拠もなく、前科者の再犯という事で本件の量刑は死刑
日本の裁判所の怖さを見せる
途中、裁判とは真実を白日に晒すと言う事もあるが、そもそも出来レースの場であるとあからさまに描き出す

色んな意味での怖さを感じる
三隅の誘導は最たるものだった

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零式五二型