実際に起きた事件をモチーフにした作品
事実は小説より奇なりというが、その「奇」の部分を「事実」の背後に託している。
結局、
描き切られていないことが、トモミとコウヘイの人間像に迫っていないことになり、わからないし共感できないことが起きてしまっている。
モチーフに使った事件は存在するが、背後の事実が制作者の想像だけのような気がする。
冒頭に、実際の事件とともにいまだ存在するマンションに触れているが、この意味も不明だ。マンションが何か悪いことをしたのでしょうか?
タイトルが言いたいのは、事件に光を当てその真実を絞り込むとでも言いたいのだろう。
作品は、
未だ捕まらない犯人だと思われているタクミが、トモミの妹エミを訪ねることと、彼の知る事実を彼女に伝えることが物語となっている。
簡単に言ってしまうと、トモミもコウヘイも親の虐待を受けて育った。
トモミは虚栄心の塊のような人間になり、コウヘイは彼女の傲慢な態度に暴力を振るったことが起因し、父と同じ振る舞いに溺れていく。
当初コウヘイにはお金がなかったが、妻の資格教育のおかげなのか、裕福な暮らしを手に入れた。
コウヘイはトモミを支配しお金を手に入れたが、殴られて笑うトモミのおぞましさに気が狂いそうになる。トモミへの暴力が自分の心を苦しめていく。
トモミは、
弁護士だとうそぶいて結婚までしたのにお金がないことが許せない。夫に再教育しながら自分は遊ぶ。
そしてとうとう夫がキレる。一度キレればそのタイミングはまたすぐに来てしまう。
しかしお金に困らないのが一番なのか? トモミは殴られても薄ら笑いを浮かべる。このことがDVをエスカレートさせてしまう。
冒頭と最後のシーンは、幼い時のトモミとエマだ。
父から隠れるようにクローゼットの中にいるが、見つかってしまう。
トモミがクローゼットの中にいるのはDVから逃げるためだ。
しかしその描写だけでは何もわからない。
トモミの人間性が描かれていない。
「いまさらどうしようもないけど、うれしかった。ありがとう」
これは幼い時に妹がトモミを庇ったことがあった思い出に対する言葉。
しかし、意味が解らない。サイコなのだろうか?
でもこれをサイコにすれば物語はタイトルから破綻してしまう。
彼女を救おうとしたタクミ同様、わからない。
その後のタクミの思考能力もわからないが、そもそも出頭する直前にエマに事実を伝えるが、「何でこんなことを私に話したの?」という彼女の質問に答えないことが最大の謎だ。
つまり、プロットが細部まで詰められていないのだ。
これは最後まで書けなかった小説と似ている。
タイトルと真逆
結局、何もわからない。
そして最後にタクシーに乗っているトモミ。
「お客さん、なんか、臭いんですが」
つまり彼女はコウヘイの頭部を持っているのだろう。
だから何? やっぱりサイコなの?
ということです。