花戦さのレビュー・感想・評価
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独裁者の暴走を止めるのは庶民の教養だ!!
己の野望のために人命を軽んじる戦国の武将、信長に、命あるものの尊さを以て対峙しようとした華道界のレジェンド、池坊専好の、文字通り命がけの戦いは、改めて華道の奥義というものを我々に教えてくれる。生け花独特の時に大仰にも感じる表現が、実は限りある植物のはかなさと、だからこそ生まれる力強さの証明だと気づかされるからだ。野村萬斎の個性が専好の飄々としてユーモラスな佇まいとマッチしている。狂言と華道の融合とでも言おうか。それにしても「花戦さ」とは美しくも生々しいタイトルだ。"独裁者の暴走を阻止できるのは、庶民の教養とユーモア以外の何ものでもない"という映画のメッセージは、恐らく作り手の思惑を大きく超えて、今を生きる日本人の心に深く突き刺さるだろうから。
喜劇の体をとりつつも、日本の美意識をしっかり映像化
狂言師の野村萬斎が主役というだけあって、上品なドタバタ喜劇の体裁でストーリーが進む。その一方で、花を生けるというソフトな表現手段で権力の横暴に対抗する、そんな「和の心」が後半の展開を牽引する。喜劇だからといってけっして終始騒々しいわけではなく、花を生けたり茶をたてたりするシーンではきちんと静謐な時間が流れる。
もちろん、華道家元の池坊が協力した生け花の数々を作中で楽しめるほか、利休庵で深い光沢を放つ漆の黒、素朴な味の陶器など、日本の美意識がわかりやすく映像化された印象だ。
往年のチャンバラ時代劇に馴染んだ世代には、花をもって天下人を制すというコンセプトは物足りないかもしれない。それでも、いわば「草食系ヒーロー」のコメディーとして、今の時代感覚に合う快作だと思う。
京・頂法寺の花僧・池坊専好の話
感想
私は華道や茶道を詳しくは知らない。しかし四季や世の中の移ろいを通じ関わり合う人の生き方の発現。その道は其々に深淵で極致としての終わりは無い。だからこそその道の世界は素晴らしいのだという。侘びと寂び。この感性を受け入れて自身で解釈しないとこの作品の感想は語れないと感じる。
茶人千利休との交流を通じるうちに専好は悟る。
茶の道は束の間。茶は飲み干したら後には何も残らない。飲み干すまでの束の間である。しかしその束の間こそが活(生)きるという事。活きると生きるを掛け合わせる事で人の生き方、人生の活かし方を知るー。
華道はまさしく花の道。自然の野に咲く木花を活けるとは束の間の花や人の活き(生き)方を考え感じる事。花一輪にて伝わるは多くより情(心)深し。束の間とは時の長さに拘ることの無い人の道と同じ。言うなれば人生の生き(活き)方にも通じるものがあるー。茶も花も人も道の考え方は同じである。人の生き方により、茶も花もその活かし方は変わるはず。
自分の生き方を生け(活け)るものにしようとした人とその人に関わり、心を活かそうとした人々の話。専好と利休が悩みと共感を分かち合った貴重な時間。利休亡き後その四十九日に六角堂に専好をはじめ多くの市井の人々が供養の為立花した話が感動し涙を誘う。無人斎道有の娘、蓮の話なども興味深く、さらに前田利家邸での秀吉との対面により納められた立花と無人斎筆と思しき墨絵を通じての因縁話として、(実際に長谷川等伯筆「枯木猿猴図(こぼくえんこうず)」という猿を描いた墨絵を利家の子、前田利長が所有していたという。等伯と無人斎との関係は不明。)秀吉が無人斎に自分の肖像画を依頼したが、共に洒落で描いていた猿猴図が秀吉の目には自身への侮辱と写り、以降無人斎を忌み嫌い最終的には抹殺。絵図も徹底的に排除された事が語られる。
洒落や掛け言葉の意味を知りその人柄だけでなく服装、身なり、使用する道具の一つ一つまでに自由で深い意味がある事を意識する侘び寂び本来の美意識と哲学。千利休が茶を通じて説いた人の道とは何ぞやということと、秀吉自らが自身の立場と生き様の中で利休をも殺めてしまった天下人らしからぬ狭義で傲慢な態を反省し初志を再認識する話が感動する。
脚本・演出◎
実話と相まった骨太な話の展開。素晴らしい脚本。
視線と凝視のアップ描写がその人物が想いを馳せている内容に観ている者の気持ちをも掻き立てられ想像させる演出手法となっていて素晴らしい。
配役
出演者の皆様の演技は素晴らしい。
特に生来独特の感受性の鋭が耀くその瞬間の感性の表現を大切にした専好役の野村萬斎氏の演技は秀逸だ。
⭐️4
2024.12.28再鑑賞追記。
生きるということ
池坊専好と千利休と猿の話
花を持って世に戦を仕掛けた1人の僧の話。
花道の池坊という名前は有名なので、私でも聞いたことがあります。
やはり、この時代の京の話となると秀吉と千利休が有名過ぎて全く知りませんでした。
どこまでが事実なのかはわかりませんが、本当に花で秀吉に立ち向かったのなら、あまり知られていないのが不思議なくらいです。
池坊専好がこんなはちゃめちゃで愉快な人なのかも少し不明ですが、野村萬斎さんだからこその池坊専好になっていました。
全体的に映画が明るく、京の町の華やかさがしっかり描かれている反面、秀吉の残虐な行為(これほどまでに秀吉が悪役で描かれているのは初めてでした)や、茶室内での侘び寂びを感じる空気感などのギャップある描写が当時の表裏ある世界観を上手く表現していました。
物語の前半は池坊専好のはちゃめちゃ感が少し退屈でしたが、後半は秀吉の悪態がどんどんと増し、意外にも沢山の知人が死んでいき、彼らの想いを継いで世に戦を仕掛けた池坊専好の姿には感動しました。
最後の笑いに思わず笑わされました。
個人的にはれん役の森川葵さんがとてもいい味を出していたのが印象的でした。
当時の芸術、文化と歴史を学ぶにはもってこいの作品です。
見続けるのが苦痛なレベルのつまらなさ。役者の無駄遣い
キャストが豪華なので期待して見始めたら、びっっっくりするくらいつまらなかった。つまらなさの衝撃。
60分、90分…と話が進んでも何の山場も来ない。つらい。キャストの豪華さがもったいない。特に会話シーンのつまらなさはひどいもので、発せられる台詞、交わされるやり取りのどれを取っても何の意味も見出せない。一応最後まで見たが、かなり苦痛だった。
【野村萬斎主演の映画に外れなしの法則は続く事を再認識した作品。京都に行った際に、この映画の大判ポスターが、六角堂に貼ってあったなあ・・。】
千利休にとても引き込まれました
レビュー
名前負け?
スローテンポで薄い映画!!
ベテラン俳優の演技や表情は良いですが、それぞれの人物像が一辺倒で生活感もなく薄っぺらく感じます。話自体もスローテンポで特に面白くはなかったです。信長と秀吉のキャラの違いがあまり分かりませんでした。「太閤立志伝」というゲームが出なくなって久しいですが、本作でも秀吉はただ暴君としか描かれていないので、特定の人のクレームに配慮した内容で日本人向けの内容ではないとように思います。秀吉は良くも悪くも多くの人を惹き付けたのだから、厳しくも魅力的な人物であったように思います。森川葵は綺麗に撮れていました。吉田栄作の石田三成は、もう疲れ切った感じでショボいです。
結局は人
花の中には仏さんがいてはる
冒頭専好が、河原で小石を積んで花を生け、死者に手を合わせる。
ここからもう、すーっと、心がつかまれました。
シンプルな中に、人間が大切にしなくてはいけない心がこもっている気がして。
前半は京都ならではのはんなりした言葉が飛びかい。また「人の加をを覚えるのが苦手」な茶目っ気たっぷりの専好が、くすっときて楽しい。織田の岐阜城で会っている利休の事すら覚えてない。
「私は物忘れが激しくて」と専好が言うと、「私は目立ちませんから」と返す利休。くすっ。
そして後半は利休と秀吉の対立がきっかけで、ガラッと様子が変わるところは、力が入りました。
「武人たるもの茶と花を、人の心を大事にせよ」by織田信長。
いつの間にかこの言葉を忘れて、暴君と化した秀吉(そんなイメージなかったけど)。幼馴染まで粛清された専好はもう黙っていられない。
「花をもって太閤殿下を、お咎めする」。
まさにタイトルそのもの。そう意味なのね。
萬斎さんの表情豊かなで穏やかな仕草の専好が、実にいいです。ぴったり。猿之助さんの秀吉の憎たらしい所も。
仏もお茶もお花も全くたしなまないのですが、十分楽しめました。
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