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宇宙の誕生から現代に至るまでを追体験させる、ドキュメンタリー調のアート映画。
製作に名を連ねるのは『セブン』『オーシャンズ』シリーズの、プロデューサーとしても俳優としてもオスカーを獲得している、皆さんご存知ブラッド・ピット。
ナレーションを担当するのは『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや『ベンジャミン・バトン 数奇な運命』の、オスカー女優ケイト・ブランシェット。
巨匠テレンス・マリックが40年以上に及ぶ構想の末に生み出したという珍作。
テレンス・マリック監督のことをググってみたことで判明、この人ハーバード大学の哲学科を首席で卒業している天才中の天才🤓✨
そんな人間が宇宙の創造だの生命の起源だのを描いているのだから、常識では捉えられないよくわからん映画が生み出されるのも当然ちゃ当然か。
本作は一応ドキュメンタリー映画に分類されるのだろうが、役者さんが演じる原始人がウホウホしたりするので、完全なドキュメンタリーとは言い難い。
また、ケイト・ブランシェットがボソボソとナレーションをしてくれるのだが、『地球ドラマチック』の渡辺徹みたいな「宇宙は137億年前に、ビッグバンにより誕生しました」という感じの丁寧な解説は皆無。
「魂…望み…夢…。私たちは何も知らない。盲目…。 生命よ。私の声を聞いて。」みたいに、全編に渡りポエミィなセリフが散りばめられている。
90分のドキュメンタリーのうち、ケイト・ブランシェットのナレーションが入っているのは多分5分くらい。
この仕事でどれだけのギャラが発生したのか、それが生命の起源よりも気になります。
どこで撮影したんだよ!というとんでもない映像の合間合間に挟まれるポエム。
Don't think!Fee〜l.なアート作品の為、楽しめる人はかなり限られるだろう。
人によっては最高の睡眠導入剤になるはず。
映画は貧困や老いに苦しむ人々の姿から始まる。
「母」という全知全能の存在に向かい、人々の苦しみに対しなぜ沈黙を続けるのかと問いかけ、それでもあなたを愛さずにはいられない、という結論に帰着する。
非常にキリスト教的な「神」と「愛」についての映画でありながら、生命は時を超えて繰り返されるという仏教的な「生々流転」が描き出されている点は面白い。それが人、クジラ、魚、イカ、恐竜などの瞳のクローズアップにより語られるという、セリフを廃した演出も見事。
冒頭の宇宙誕生シーン。
暗闇に描き出される赤い輝き、そして大地を流れる溶岩は、まるでヒエロニムス・ボスの描く地獄絵のようだ。
宇宙の誕生、地球の誕生は決して輝かしいものとしては描かれておらず、これにより地獄の苦しみが生まれたことが示唆されている。
その後、微生物、クラゲ、イカ、サカナ、虫、恐竜、動物、原始人と、生命のリレーが描かれていく。
ここで改めて思うのは、多種多様な生物の姿の面白さ。
イカとかめっちゃ不思議だし、ヤスデのグロテスクさも奇妙だ。コブダイの顔はオッさんみたいだし、マンボウからはやる気を感じられないし、キリンの首が長いのも変だ。
そして、生物の中で唯一直立二足歩行を行う人間。これはもう飛び抜けて変だ。
微生物から恐竜、サカナ、クラゲ、哺乳類、虫など、地球上に存在した生物を並列的に描くことで浮かび上がるのは、人間も大きな流れの中に生まれた一つのピースに過ぎないということ。
人間も、次代の生物にバトンを渡す一つの種でしかない、他と変わりのないヘンテコな動物なのだ。
生物の面白さを感じると同時に、生命を繫ぐことの残酷さや怖さもひしひしと感じる。
サカナの群れに突撃する海鳥たちの捕食風景は、まるでプロメテウスの内臓を啄んでいるようだし、クジラの巨大な口は地獄の門さながらだ。
人々の間に起こる争いやヒエラルキーは、生物の持つ本能に他ならず、生命が続いてゆく以上避けられないものなのだろう。
この呪いのような宿命を受け入れ、「母」の手を取り共に生きる。
宇宙からみれば一瞬の間に個としての生命は終わりを迎える。そんな我々に出来ることはその程度の事であるが、それこそが天国の門に繋がる唯一の道なのだろう。
本能に抗うことをやめ、ただあるがままを受け入れて前に進む。その時にこそ、ファンファーレは高らかに鳴り響くのだ。
…と、なんとなくわかったようなことを書いてみたが、これは個人の解釈。とにかく説明のない映画なので、各々が思ったことを読み取れば良いのだろう。
個人的に面白かったのは、やはり原始人のパート。
スッポンポンの男たちが生身でダチョウやクロヒョウと相対する場面の緊張感は凄まじい。そして面白い🤣
上手くオチンチンが映らないように撮影していて、見事!
とにかく映像が美しいので、意味分からないながらも結構楽しみながら観賞出来ました。
とはいえ、この手のアート映画は1回観れば十分ですわ…😅