バーニング・オーシャン : 映画評論・批評
2017年4月11日更新
2017年4月21日よりTOHOシネマズスカラ座ほかにてロードショー
実録にしてディザスター。「ローン・サバイバー」監督&主演が“激痛スペクタクル”再び
福島原発事故を経験した日本人に、この映画は他人事ではない切実さをもって迫ってくる。なぜか。石油掘削と原子力発電、種類は違えどいずれも強力なエネルギー源を扱う巨大施設で起きた未曾有の事故である点。そして、技術を過信して安全策よりも利益を優先させた結果、取り返しのつかない事態を生み一層深刻化させた点もまた共通しているからだ。
「バーニング・オーシャン」は、2010年4月にメキシコ湾沖の石油掘削施設「ディープウォーター・ホライゾン」で発生した事故の真実と、死に直面した作業員らの事故対応や脱出の様子を克明に描く実録もの。ピーター・バーグ監督と主演のマーク・ウォールバーグと言えば、ネイビーシールズの兵士たちがタリバン勢力に追いつめられ崖を転げ落ちるシーンの異様なリアルさが強烈だった「ローン・サバイバー」のコンビだ。今作でもまた、原油の噴出とガスの爆発で作業員らが次々に吹き飛ばされ、機械や壁に叩きつけられる姿に、観客はその衝撃と痛みを想像せずにはいられない。スマートなエリートより実直な肉体労働者が似合うウォールバーグは、泥と油と血にまみれながら一人でも多くの仲間を救おうと奮闘する主人公を熱演。切れのある演出で俳優の持ち味を活かすバーグ監督との相性がよほどいいのだろう、2013年のボストンマラソン爆弾テロ事件を地元刑事の視点から描く「パトリオット・デイ」(6月日本公開)で3度目のタッグを果たしている。
ドラマとスペクタクルに説得力を持たせるため、巨大なセットでディープウォーター・ホライゾンを忠実に再現した点も見逃せない。このセットで撮影された映像に、「スター・ウォーズ」シリーズなどで知られる視覚効果スタジオILMがほとんどCGには見えないリアリティーの炎や煙や海面を描画して重ねることで、大災害に居合わせる感覚、いわば体感型ディザスタームービーの基準を更新した功績も認められよう。
(高森郁哉)