囚われた女
1989年製作/145分/オーストラリア
原題または英題:Bangkok Hilton
1989年製作/145分/オーストラリア
原題または英題:Bangkok Hilton
【“七夕ロス”解消】熱意とこだわりが生み出した「七夕の国」10分以上のメイキング映像&写真19点披露
2024年8月16日「アンナ・カレーニナ」がドラマ化
2019年7月13日博多の街にひしめく殺し屋たちの暗躍を描く「博多豚骨ラーメンズ」TVアニメ化決定!
2017年7月24日「マッドマックス」最新作、ハイテンションなアクションが加速する予告編が完成
2015年4月10日無実の罪によりタイの刑務所に投獄されてしまった女性・カトリーナの地獄の日々と、彼女を救い出そうと奮闘する父・ハロルドの姿を描いたサスペンス・スリラー。
麻薬密売の罪でタイの刑務所”バンコク・ヒルトン”へと送られた女性カトリーナ・スタントンを演じるのは、後のレジェンド女優ニコール・キッドマン。当時はまだオーストラリア国内で活動する若手女優だった。
製作を務めるのは『マッドマックス』シリーズや『トワイライトゾーン/超次元の体験』の監督である、巨匠ジョージ・ミラー。
”スキャンダラスな罠に 堕ちていく私…。”
”ーニコール・キッドマン 禁断のヌードが鮮烈に蘇る エロティック・ロマン!ー”
という煽り文句と、アンニュイな表情を浮かべながら鎖で拘束されている若きニコール・キッドマンのパケ写から、「これは…エロいッッ!😏」と胸を躍らせながら鑑賞してみたのだが…。
……全然そんな映画じゃねぇじゃねぇかッッ😡💢騙されたわっ!!
「失踪した父親を探す娘が、旅先で出会った男に騙され、麻薬密売の罪でタイの刑務所にぶち込まれてしまう」というのが前半部のざっくりとしたあらすじなのだが、主人公が刑務所にぶち込まれるまでの過程はめちゃくちゃ雑なダイジェストで描かれている。この描写が雑すぎて何故主人公がタイに向かったのかがさっぱりわからない。いつの間に父親の居場所を掴んだの?
あれこれもしかして…。と思い調べてみると、やはり予感は的中。パッケージなどに一切表記していないのでわからなかったのですが、本作はドラマの総集編のようです。
原題は『Bangkok Hilton』。これは1989年にオーストラリアで製作されたテレビドラマであり、1話あたり90分、全3話のミニシリーズとして放送された。
視聴率は驚異の42%。日本でいう『半沢直樹』レベルの大ヒット作品ということになる。
日本で流通しているDVDはランタイムが145分となっており、オリジナル版の大体半分くらいの尺に再編集されている。これだけ短縮されていれば、訳のわからん物語になってしまうのも宜なるかな。
おそらくは主人公が逮捕されるまでと、脱獄後嵌めた男に倍返しするまでのエピソードをがっつりと削り、最もキャッチーな刑務所パートにたっぷりと時間を費やしたのだろう。この判断自体は概ね正しいと思う。…まぁわざわざ再編集した意味はよくわからんが。オリジナル版をそのままDVDにするんじゃダメだったのだろうか…?
「エロティック・ロマン」なんてパッケージングされているが、本作の内容はその言葉から想像するようなものでは全く無い。ニコール・キッドマンのヌードなんて1秒くらいしか映ってねーじゃねーかっ!😡
本作で描かれるのは父と娘の物語。無実の罪で投獄され、死刑宣告を受けた娘。そんな彼女を救い出すため、何とか真犯人を探し出そうとする父。この2人を軸にストーリーは展開してゆく。
戦時中、日本軍の捕虜として娘と同じ刑務所に収容されていた父。その時に犯した罪に、彼は40年経った今でも苦しめられている。
物理的に囚われている娘と、精神的に囚われている父。本作は2人の囚人が自由になるために争う闘争の物語であり、娘の脱獄の成功と父親のトラウマの払拭がイコールになっている点が面白い。ツッコミたいポイントがないではないが、基本的にはとても良く出来た脚本だと思う。
フリとオチも丁寧に仕込まれており、前半で張られていた伏線を後半で綺麗に回収してくれる。医務室の件とか、ベタっちゃベタなんだけどそれがまた良い!
劣悪な環境、残忍な看守、友人の処刑など、刑務所もののお約束もしっかりと踏襲。
また時間ギリギリでの脱走劇や、ゴミと泥を掻き分けての脱獄など、お馴染みの展開を恥ずかしげもなく堂々とやってのけている。間に合うのか!?間に合わないのか!?とか、隠れないと看守に見つかっちゃうよ〜!とか、こういう脱獄映画の王道というのはなんだかんだでやっぱり面白い。普通にハラハラしながら鑑賞してしまいました♪😆
娘の刑務所パートは文句無しに面白いが、親父の捜査パートはなんとも拍子抜けというか…。あんだけやっておいて結局失敗するのかよっ💦
オリジナルのドラマ版ではもっと上手く描けているのかもしれないが、少なくとも本作ではこのパートは丸々要らなかったんじゃないの?と言いたくなってしまう、親父のへっぽこさが目立つ展開になってしまっていた。
人種差別や理不尽な司法への問題提起、司法は絶対であると説いておきながら王様の恩赦による釈放が存在している矛盾、さらには反戦メッセージまで込められた、DVDのパッケージからは想像もつかない社会派な作品でかなり見応えがありました。
ドラマ版から100分以上もカットされているためところどころ意味不明になってしまっているのが難点だし、タイの人が観たら気を悪くするんじゃないかというほど悪意丸出しな刑務所描写は気になるところですが、それを差し引いても良く出来ている作品だと思います。
今年の5月には『マッドマックス』シリーズの最新作、『マッドマックス:フュリオサ』の公開が控えているジョージ・ミラー。『マッドマックス』によりマッチョなイメージが定着している彼だが、実は”支配や運命から逃れるために争う女性”の映画を撮り続けている。
プロデューサーとしてクレジットされている本作もやはりそれらと同系統。ジョージ・ミラーとはどこまでもブレない男なのだ!
麻薬犯罪に厳しいことで知られるタイ。そのことは外務省海外安全ホームページにも記載されており、麻薬の密輸/販売となると最悪の場合死刑もあり得る。
1993年にはサンドラ・グレゴリーという英国人女性が麻薬の密輸で逮捕。死刑を宣告されタイの刑務所に服役している(後に国王の恩赦により釈放)。このドラマと全く同じような境遇に陥った彼女の手記は『「バンコク・ヒルトン」という地獄:女囚サンドラの告白』(2004)というタイトルで出版されているようだ。そちらも是非読んでみたいものである。
日本でも観光地として人気のあるタイだが、旅行する場合は麻薬犯罪に巻き込まれるととんでもない事になってしまうということだけは頭に入れておいた方が良いだろう。