ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち : 映画評論・批評
2017年1月31日更新
2017年2月3日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
最適素材で「らしさ」炸裂!バートン・マジックの復活に心から拍手
原作はランサム・リグスが書いたティーン向けファンタジー小説(「ハヤブサが守る家」)なのだが、もしかしたら最初からティム・バートンの影響を受けているか、彼のために書かれたんじゃないか、と思えるほどだ。
実際にはリグスが愛好し、集めていた古い写真(奇妙だったり不思議だったりする人物を写したもの)に想像力をかき立てられ、生まれた物語だという。フロリダに住む主人公の少年ジェイクは、おじいちゃんのエイブがモンスターに殺されるのを目撃。死に際の言葉に従い、エイブがかつて過ごしたウェールズの島を訪れる。そこで出会ったのは、屋敷で1943年から同じ時間のループを生き続けている奇妙なこどもたちと、彼らを守っているメリー・ポピンズのような保護者、ミス・ペレグリン(エバ・グリーン、絶品!)だった。
この物語がティム・バートン的である理由の1つに、「奇妙である」がゆえの孤独と生きづらさ、そして素晴らしさの描出がある。屋敷のこどもたちはそれぞれ、空気より軽くて鉛の靴を履いていないと宙に浮かび上がってしまう、植物を魔法のように育てられる、生命のないものに生命を与えて動かせる、後頭部に第2の口がある、体が透明など、普通とは異なった姿や能力のため、モンスターに付け狙われて「安全な時間の繰り返し」という閉ざされた世界に生きるしかない。このこどもたちの「奇妙さ」を、バートンが心から愛おしく思っているのがよくわかるのだ。だから「X-MEN」よろしく(脚本は「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」のジェーン・ゴールドマン)、持てる能力を解放して闘うシーンの痛快さは格別だ。
最適な素材を得て「水を得た魚」となったバートンは、いたるところに嬉々としてバートン印(趣味とも言う)を炸裂させている。「シザーハンズ」や「ビートルジュース」、「ビッグ・フィッシュ」「フランケンウィニー」などなど、彼の過去作とリンクするイメージがてんこ盛りだ。そして「トイ・ストーリー」に出てきたような改造奇形人形のバトルや骸骨戦士の闘いには、レイ・ハリーハウゼンへのオマージュも発見できるだろう。詰め込みすぎて終盤が尻つぼみになっているのはご愛敬。このところ消えかかっていたバートン・マジックの復活に、心から拍手を送りたい。
(若林ゆり)